第1569話 50枚目:イベント状況

 元々このイベントは、神々の力を大回復させるチャンス、というものだった。

 だから私の方はボックス様1柱に限られるとはいえものすごい捧げものと信仰が集められていたのだが、どうやらもう片方、御使族の人達が「敵を与える」奇跡を願って野良ダンジョンを出現させた場合、その内部を探索して神々が空間を回収した分は、全ての神々で頭割り、という形になるようだ。

 もちろん他の大陸でもサブイベントは割と全力稼働しているし、イベント進捗としては非常に順調だった筈だ。


「どうやらあの招待状の山、召喚者プレイヤー相手には広く配られた上に若干ダメ元だったみたいですね」

「そうだったのか?」

「そうらしいですよ」


 という事が判明したりもしたが、まぁそれはいい。案の定「第二候補」がヒャッハーして何度か戦場を分ける巨大な壁を切り崩したりしたが、まぁそれもいい。予想できたことだし。

 司令部の調査によれば、あの陽炎のようなものに蓄えられた空間の歪みもかなり削る事が出来たそうだ。まー「第二候補」がいるからってかなり飛ばしたもんな。本人疲れるどころか超生き生きしてたけど。

 そして現在、イベント最後となる土曜日の午前中だ。ここで空間の歪みがかなり削れた、という連絡が来たという事は、恐らく、ボックス様の奇跡を願うのはここでストップなのだろう。


「で、代わりに何をするのかという事ですが……エルル」

「なんだ」

「確か、空き時間には野良ダンジョン試練モドキを潰してくれているんですよね? 部隊の人達で」

「そうだな。特に難易度が高い奴を優先的に回ってるが」

「ありがとうございます。それなのですが、ちょっとここから数日は動きを変えてほしいんです」

「?」


 クランメンバー専用掲示板に、元『本の虫』組の人達経由で司令部からの指示が届いていた。それによると、思った通り「敵を与える」奇跡を願っての大規模戦闘は一旦ストップするらしい。

 そしてその代わりに、野良ダンジョンの攻略をお願いされた訳だが。


「どうやら渡鯨族や人魚族が祀る海神様の神殿が、そろそろ溢れそう、との事です。なので、そちらの対処を優先して頂けますか?」

「……あー……。なるほど、分かった。どこが優先だ?」

「まずは神殿そのものが再建されて間もない南北の大陸、次いで同じ理由で竜都の大陸東部、同理由で北国の大陸東部ですね。最初の大陸にある渡鯨族の神殿も、召喚者プレイヤーの練度が低い為に危ないそうです」

「分かった。……で、お嬢は?」

「私は最初の大陸の人魚族のところですね。どうやら見慣れない文言の野良ダンジョン試練モドキが増えているそうで」


 海神様の神殿は、周囲の野良ダンジョンを集めてまとめている。相変わらず海の中にも野良ダンジョンが出現しようとしているらしく、こっちの容量が危なくなってるらしいんだ。

 水場を危険地帯にさせる訳にはいかないから、ちょっと急ぎだな。もちろん私も参加するよ。


「見慣れない文言?」

「……具体的には、「異界」とか「溶かす」とか「歪める」とかですね」

「…………あれの影響か」

「まぁ距離的には大陸1つ挟んでいるだけですから、他の場所より近いですし」


 という事なんだよな……。そろそろ世界一周が見えてきたから。もちろん、最後の大陸にはラスボスが待ってるんだけど。

 ただまぁ、迂闊に人魚族の人達が攻略に向かって、加護と祝福を全封印される場所だと犠牲者が大変な事になる。それが分かっているから私に話が来たんだろうしな。

 もちろん他の召喚者プレイヤーも動いているだろうが、あちらはあちらで世界に散らばって多種多様なサブクエストを攻略する必要があるし、何ならその波に乗って邪神の力を回復させようとする動きを阻止する必要もある。


「邪神の方も動いてるのか」

「動いているでしょうね。人々と交流して神の力を回復させる仕事の中には、その成果を捧げる先を明言しなくても良い場合もありますから」


 ……救出クエスト、とかも、サブクエストの中には、含まれているんだから。

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