第1568話 50枚目:イベント進捗

 日曜日は北側の大陸で、午前中と夜の2回に分けて「敵を与える」奇跡を願いつつ歌って踊った。出てきた敵の質と量? お察しで。

 あの時推測した、私が歌って踊っている間に倒されたモンスターは感謝祭の捧げものになっている、という説は正解だったらしく、どちらかというと新人寄りの召喚者プレイヤーにボックス様からご褒美があったそうだ。信仰値が一定値を突破した時の。

 ボックス様こと“神秘にして福音”の神に対する信仰が高まるのはガンガン推奨している事なので、何も問題は無い。個人の神殿を建てるススメにも、相変わらずまず最初にボックス様の神殿を建てる事、と書かれてるしな!


「種族もメイン信仰も関係なく、祈り捧げた分だけは絶対に報いてくれるんです。最高ですね! 無理をしていないかだけが心配ですけど!」

「それにしても、いつも以上に飛ばしてるな、お嬢……」

「……聖地の島にボックス様の神殿を建てるにあたって、引っ越しにはそれなりの力が必要みたいなんですよ。神器が取り戻せたかどうかも分かっていませんし」

「あー……」


 という訳で、いつも以上にボックス様を押せ押せなのだ。聖地の島に神殿がある、っていう時点で神としての格が一段上がるらしいからな。早く居候状態を脱して欲しいっていうのもある。

 そういう事情はさておくとしても、主に「アイテムチケット」と素材回収の手間が無いって事で、戦闘自体は召喚者プレイヤーに好評だった。なのでこのまま、少なくとも平日の夜は大陸を交互に移動しつつ奇跡を願うスケジュールが組まれている。

 一応まだ招待状はどっさり届いているし、その内容はざっくり確認しているのだが、大体は右から左に流してスルーしている。招待状以外のお手紙が混ざってたらそちらに向かうが、今のところは無いようだ。


「あのペースで引きずり出せば、向こうが蓄積するより引き出す方が早くなるみたいですからね。少しでも削っておきたいところです。ボックス様に対する信仰を高める大チャンスでもありますし」

「戦い自体はかなり激しいけどな……」

「その分得るものはあるでしょう? 参加回数が増えれば、その分だけ召喚者プレイヤー全体の実力が底上げされますし。主に各種便利アクセサリが行き渡るという形で」

「……まぁ、自然回復が増えれば、その分だけ薬に頼らなくても良くなるし、継戦力も上がるのは間違いないんだが」


 なおこの激しい戦闘にはうちの子も参加しているし、そこで手に入れた「アイテムチケット」はそれぞれの好きにしていいと言ってあるので、皆張り切っている。

 私は歌って踊っているので直接見ていないのだが、アクセサリを重ねて性能を上げているのは間違いなく、少しずつとはいえうちの子の火力や機動力が上がっているらしい。


「何より。ここからは「第二候補」も参戦しますからね」

「げ」

「ははは、エルルでもそう思います?」

「いや、そりゃ……戦闘特化の不死族とか相手にしたくないぞ」

「ですよね。残念ながら参戦なんです。……むしろ、現時点でも「何故呼ばんのじゃ!」とふてくされているそうで」

「あー……」


 もちろん「第四候補」も続投だ。そういう意味では、大規模な戦いの一部として、戦略に組み込まれて動く、という事の経験を上手く積めているって事になるだろう。


『なぁ「第三候補」、平日の夜はじーさんも参加ってマジ?』

『マジですよ。やる気を漲らせて参加するらしいですので、私は別の捧げものを用意するべきかと割と本気で検討してます』

『まぁ戦闘力おかしいもんな!! いやーしかし来るのか。来るんだな。いやいいんだけど!』

『もういっそ戦場の真ん中に巨大な壁でも作り、その片方を丸投げしても良いのでは? とか思ったりします』

『あれか。氷の大地で雪像の群れ相手にやったみたいな!』

『あれです』


 どうやら「第四候補」にも話がいったらしく、そんなウィスパーが飛んできた。本当にな。その辺りの認識は共通で良かったよ。

 ……問題は、巨大な壁を作って物理的に戦場を分けたところで、その壁すら切り裂かれ、もとい、壊されかねない、って事なんだが。

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