第1567話 50枚目:確認と準備

 私がボックス様の「敵を与える」奇跡を願い、維持して、コトニワの「感謝祭」の歌と踊りを捧げていたのは内部時間5時間程。召喚者プレイヤーのログイン時間としてはそれなりに余裕があるが、大勢の召喚者プレイヤーがタイミングを合わせようと思うとこれぐらいが限界だ。

 もちろん交代する事で延長も可能だが、今回は全力も全力で戦闘したから、各自の消耗が大きい。無限回復状態だったから各種リソースは満タンなままの筈だが、気疲れはどうにもできないし。

 モンスターの素材を回収する手間はないが、「アイテムチケット」を使ってみたいというのもあるだろう。ありがとうボックス様。ちなみに私も歌と踊りを捧げた分らしき「アイテムチケット」がインベントリに入っていた。最高か? 最高だった。


「そして、「アイテムチケット」の詳細が分かれば召喚者プレイヤーは殺到する、と。知ってました」

「まさかお嬢」

「流石にこのまま第二部とはいきませんよ。北側と南側の大陸で差異が出来るのは歓迎できませんし、エルル達も疲れてるでしょう?」

「確かに、ここまで戦うとは思ってなかったな……」

「殿下ー。次は殿下の精霊貸してくれよー」

「味方諸共吹き飛ばしてしまうのでダメです」


 どうやって調べているのかは分からないが、空間の歪みはかなり引きずり出すことが出来たようだ。もちろん、御使族の人達の方が引き出せてないって事じゃなくて、私の方がちょっと加速を掛け過ぎた感じだな。

 儀式場は共通なので、御使族の人達と私とで、場所を交代する事になった。まぁ南北の大陸で同時攻略しなきゃいけないんだから、その進捗は合わせておいた方がいいだろう。竜都の大陸の前例があるし。


「御使族の方々に長距離移動をお願いするのは心苦しいのですが、ちょっと無視できない進捗の差のようですからね……」

「お嬢がもうちょっと抑えてもいいと思うんだが」

「削れる時に削れるところから削るのは基本ですよ」


 とはいえ……御使族の人達が「敵を与える」奇跡を願って野良ダンジョンが出てきた。これはもしかすると、来月以降のイベントの仕様なのかもしれないんだよな。

 空間の歪みを集めているのは既に分かっている事だ。そしてそれを操って空間に干渉する事も出来るのは分かっている。その、いわゆる元手となる力が多ければ多い程、通常空間や神殿へと干渉する幅が大きくなることも。

 だから今こうやって削っている訳だが、あの陽炎のようなものの仕組みは分かっていない。けど何らかの力ではある訳だし、空間的な干渉をして試練モドキに作り替えるっていうのは今までにもやってきた事だし。


「とはいえ、相応の準備が必要となる以上はそうそう回数が出来る訳ではありませんし、少なくとも(内部時間で)数日の時間を置く必要があります」

「まぁそうだな」

「なので、今の私に出来るのは、消耗品の類を値崩れが起きかねないくらい大量に作っておくことです」

「……それはそれでどうかと思うが、召喚者の様子を見てるとそれぐらいは必要か……」


 つまりはいつもの生産作業って事だな。ちなみに実際に値崩れが起きる事はほぼ無い。だってそれぐらい消耗するのが目に見えているし、何ならあの陽炎のようなものから空間の歪みを引き出す戦いの参加経費として配ってもいい。

 間違いなくボックス様に対する信仰が爆上がりするチャンスだし、実際「アイテムチケット」の評判は上々だ。一部クレクレは知らんが、相応の実力がある召喚者プレイヤーなら参加はいくらでも歓迎である。

 それに、次からは戦略の練り方や召喚者プレイヤーの展開の仕方も調節するだろうし。ボックス様は最高だから、参加してる召喚者プレイヤーの実力というか、意思によって相応の強さのモンスターを出してくれるからな。


「ところでお嬢、人脈作りの方はいいのか」

「そんな暇な事やってる場合ではありませんので。というか、私がその辺の人脈作ってどこで活用するんです?」

「……いいのか。森人族の王族とかからも招待状が来てるみたいだが」

「本当に必要なら、改めて「第五候補」や「第一候補」から話が振られるでしょう。そもそも、ネレイちゃんやカトリナちゃんのように、繋がりが無い訳ではありませんし」

「それはそうかも知れないが……」

「というかその辺アキュアマーリさんおねえさまに確認しましたけど、皇女わたしを「呼びつける」って時点で無視していいと聞きました。こちらを訪問したいからいつなら大丈夫か、というお伺いならまだしも」

「……あー……」


 あの神器の追加回収の時に聞いておいたんだ。招待状が今このタイミングで山のように来てるんだけどどうすればいいですかって。

 いやー、流石世界三大最強種族の1角。呼びつける形でも無視するのはまずい相手というと、同格とされる不死族か御使族ぐらいなんだそうだ。強いなー。

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