第1565話 50枚目:奇跡に捧ぐ

 一応カバーさんに、ボックス様の奇跡によって出現する「敵」の種類はそのままでいいか確認を取った所、問題ないという答えが返ってきた。やっぱり司令部も、私と御使族の人達で奇跡の結果が違う事を、召喚者プレイヤーの好みで選べる違いとして生かす方向のようだ。

 ……そして、本当に、召喚者プレイヤーの平均的な建築技能というか、ノウハウというか、そういうものも練度が上がってきているらしい。


「……簡易陣地って聞いてたんですけどね。野戦用の」

「十分に本格的な砦に見えるけどな」


 おかしいな、こんなもの無かった筈なんだけど。しかし私が午前中に使った儀式場はちゃんとあったし、場所も変わってないから、ここだよなぁ……。

 転移ポイントまでしっかり設置された、ガチの砦だ。いや。うん。その。旗持ち個体ぐらいは出てくるだろうし、劣化レイドボスが出てくる可能性も十分あるから、戦いが楽になるなら問題は無いんだけどね?

 私の到着に合わせて壁系魔法の設置も始められてるし、たぶんその先の、一件何もないような場所には、たぶん罠が仕掛けられている。


「防衛戦と定義しての準備が本格的ですねぇ……」


 すごいな。確かにここに至るまで、散々、それはもう嫌になる程防衛戦をやらされて来てるけど。すっかり皆戦略ゲームに慣れて……。

 …………ちょっと待て。


「あなたもこちらに参加ですか、「第四候補」」

「そりゃーそう! 突入探索だと使い魔が動かなくなったり乗っ取られる可能性があるからな! それを防げる奴もあるけど、やっぱ単価が高くなるし!」

「……まぁ、単価は仕方ないですね」

「だからここで稼がせてもらうつもり! よろしくな、「第三候補」!」


 ガチ過ぎると思ったんだよ。司令部の人が支部を置いてるにしても堅牢で本気だなと思ったら、「第四候補」が指揮側に混ざってたのか。それなら納得だ。

 まぁでもそれなら、ある意味、丁度良かった。


「それなら遠慮はいりませんね。こちらこそよろしくお願いします、「第四候補」」

「任せろ! ……あれ? 「第三候補」? 遠慮ってなに」

「準備はしてきたんですが、様子を見て投入しようと思っていたんです。これなら最初から使って大丈夫ですね」

「待って待って待って。なんか怖い。ちょっと待って怖い。何用意してきたの「第三候補」。それほんとに俺らで処理できる規模の奇跡になる!?」

「だから言ったでしょう。よろしくお願いします、と」

「これヤバいやつだ! そうだった「第三候補」あの神様の事になったら箍と自重が吹っ飛ぶんだった! 戦略規模最大まで引き上げ! 初っ端から総力戦の用意!!」


 にっこり、と満面の笑みで答えると、「第四候補」は即行で身を翻して砦の内外を走り回りだした。それに応じて、砦の周囲での動きが慌ただしくなる。

 え、何を用意したかって? いやまぁ、今着ている衣装はコトニワでの感謝祭の衣装じゃないか。神に感謝するお祭り。どちらかというと収穫祭とかに近いお祭りだから、当然ながら神様に捧げるものっていうのがある訳だ。

 で、コトニワの感謝祭において、神に捧げるものが何だったか、というと。


「皇女教育で入っていましたからね。【舞踏】スキルが」

「それか。着替えて何を熱心に練習してるのかと思ったら」

「祈りの歌もありますから、【歌唱魔法】も働きますよ」

「……ちょっと待て。俺もあいつらに指示出ししてくるから」


 お祭りと言えば定番の、歌と踊りだ。本来は何人かでやるものだが、1人で歌って踊っても問題ない。必要スキルは揃ってるしな。

 一応「第一候補」に確認を取った所、感謝の踊りと歌を奇跡の最中に捧げるのは何も問題なく、奇跡の出力上昇に繋がるだけ、との事だった。

 あとこの踊りは無手の場合と、片手に何かを持ってやる場合と、両手に何かを持ってやる場合があるのだが、それに旗槍を使っても「掲げる」状態は維持できるのだそうだ。


「……運動音痴だから、諦めていたんですよね。自分でこの衣装を纏って踊るのは」


 練習では上手く踊れたし、踊りながら歌うのも出来たから、とってもわくわくしてるんだよなー。本来のものとはタイミングが違うとはいえ、感謝祭の再現が自分でできるとかさー。

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