第1561話 50枚目:イベント進行

 加護と祝福が大幅に制限されるダンジョンへの突入……なのだが、以前の突入と比べると、随分状況が変わっている。具体的にはエルルとサーニャが『勇者』になって、「響鳴の大水晶」と「加護の水晶」を使った共鳴結晶、及びそれを使ったグラスファイバー(【結束】付き)の装備がうちの子に行き渡っている。

 「加護の水晶」はその名の通り、これを使った装備を着けていると、装備者に対する加護や祝福の効果が通りやすくなるんだそうだ。つまり【結束】や「加護の証」による強化が通りやすくなるって事でもある。流石対レイドボス最大ダメージ報酬だな。

 つまり何が言いたいかって言うと。


「それでは行きましょう。恐らく200層で目当ての相手は出てくると思われますが、目標、300層!」

「「「おー!」」」


 うちの子フルメンバーで、底なしダンジョンに突入できるって事だ。もちろんルウとミラちゃんも入っている。今回はルージュも参加だ。

 流石に装備が行き渡ったとはいえ島を空っぽにする訳にはいかないし、何よりダンジョン内部は狭い。だから竜族部隊の人達と、ショーナさんはお留守番である。


「大丈夫なのか?」

「屋内で地下ですから、環境的に誰より強い可能性があるんですよね」

「……そう言われればそうだったな」


 なおエルルが心配しているのはミラちゃん。まぁそうだね。うちの中で、少なくとも精神的には最年少、ルイシャンと良い勝負だ。……とはいえ、種族特性が強すぎるんだよな。ダンジョンの中だと、唯一致命的な日光も届かないし。

 もちろんダンジョン内部に屋外が再現された階層とかがあれば話は別かもしれないし、サーニャが全力でブレスを叩き込んだりすると余波が危ないかも知れないが、今の所そういう階層は確認されていないし、サーニャもこの狭い中で【人化】を解除したりはしないだろう。一応気を付けておくけど。


「まぁ道中は狭いので、戦闘の最前線は適宜交代しながら進みましょう。こちらの加護と祝福も強化しているとはいえ、負荷はかかるでしょうから」

「そうだな」


 一気に負荷が上がったとしても、今の所一番耐性が低いルウは「乗り物枠」に入るからな。ルシルやルチルは【人化】を解除して貰えば運べるし、大丈夫だろう。




 「加護の水晶」の効果か、それとも【結束】が重なって強化された扱いになるのか、途中で脱落者が出ることなく200層まで走り切る事が出来た。とはいえ、あれから訓練を重ねて強くなっていても十分厳しかったけど。

 前半の平日を使い切ったところで回収できた神器は3つだった。最初の大陸の竜都、その周りにある底なしダンジョンは5つ、前に神器を回収したのとは別の場所から、200層までいって1つずつだ。

 前に神器を回収した底なしダンジョンの200層にも潜ったのだが、そちらでは何も出なかった。201層以降への突入は出来たけど。


「とはいえ、流石にあの先は私とエルルとサーニャでしか行けそうにありませんが」

「あそこまで行くと、後付けの耐性だと無理があるんじゃないか?」

「むしろボクらと一緒に行ける姫さんがすごい気がするよ」


 まぁ、サブクエストとしてはこの3つで完了だったらしいので、たぶん問題は無いんだろう。

 戦闘に関するスキルの経験値をがっつり稼げたところで、再び書類の確認。えーと、パーティとかお茶会への招待状はとりあえず後回しにして、それ以外は何が来てる?


「いや、人脈は大事だよ姫さん」

「そういうのは「第五候補」にお任せしていますので」

「そうじゃなくて、姫さんの人脈っていうのが大事なんだってば」

「下手に権利関係に噛んで行けない場所が出来たら困ります」

「それはそうとしか言えないけど、もー!」


 サーニャは招待状を後回しにする=行く気が無いっていうのに文句があるようだが、実際その通りだろう。人脈が無ければ行けない場所もあるだろうが、それは「第五候補」や「第一候補」が何とかしてくれる筈だ。役割分担ってやつだよサーニャ。

 ん? 御使族から手紙? ……“夜天にして闇主”の神の神殿から。これはあれだな。ミラちゃん関係だな。成長するまで私預かりっていう結論で和解した筈なんだが、何で聖地の島にある方の神殿から声がかかるんだろうなー?

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