第1551話 49枚目:護衛選択

 一応先に筆頭様と会っている「第一候補」に聞いてみたが、それらしい話は出てこなかったという言葉が返ってきた。ニーアさんにハイデお姉様にも招待状が届いているか確認してもらったが、そちらは届いていないらしい。

 となると、完全に私だけを招待している、という事になる訳だが、招待状の中身を見ても内容としては「時間がある時に話をしたい」としか書いてないんだよなぁ。後は、来る場合の条件が並んでいた。

 エルルとニーアさんに確認してもらったが、本当にそれだけしか書いてなかった。条件はまぁ、相手が相手だからな。実際にどうかは分からないが、立場的には世界三大最強種族の頂点に立つという意味では竜皇様おとうさまと同じだ。それぐらいは当然だろう。


「全く心当たりが無いならまだしも、主に物騒な方で心当たりがある分だけ、どうしても身構えてしまいますね……。まぁ、私を害せるような手段はそうそう存在しませんし、御使族の筆頭ともあろう方がそんな事を企むとは思えませんが」

「主に物騒な方で心当たりがあるっていうのが既におかしいんだが」

「仕方ないでしょう。私自身も神に関するスキルや祝福、加護が山ほどありますし、そもそも種族が種族です。……あぁ、このヴェールや旗槍といった実質的な人造神器や、「月燐石のネックレス・幸」の方に用事があるという可能性もありますか」

「何で心当たりが増えてるんだ」


 用事があるとしか書かない筆頭様が悪い。わざわざ私という個人宛に招待状を出すぐらいに重要な話なら、他の誰かに見られる可能性のある招待状には書かないだろうけど。

 とりあえず、リアル明日の午前中、内部時間明後日に向かいます、という返事を、ニーアさん監修の元書き上げて出した。皇女の行動としては早すぎるにもほどがあるが、私は召喚者プレイヤーだからな。

 「第一候補」によれば、パストダウンさんを含める元『本の虫』組の人達により、召喚者という存在についての説明は行われている。今までと違って、御使族は神に直接確認するという手段が使えるからな。流石に大神に直接、というのは無理でも、神々に聞けばその真偽は簡単に分かる。


「しかし、同行者の指定も奇妙と言えば奇妙ですね。召喚者以外かつ同族以外の1人に限定するとは」

「そうですね! どう考えても一番自然なのは『勇者』であり、末姫様の直属部隊隊長であるエルルリージェさんですので! そもそも、同族が一番信頼できるのはどの種族も共通の筈ですし!」

「召喚者以外っていうのもおかしいと言えばおかしいが……そっちもある意味同族って事になるなら、同じ条件だな。何がしたいんだ?」


 フリアドにおける礼儀作法に詳しい2人をしてこの反応なのだから、やっぱり特殊なんだよな?

 さて問題はこの条件に合致する同行者(護衛)として誰を連れていくか、という事なのだが、まず同族がダメって事で、エルルもサーニャもニーアさんも、竜族部隊の人達は全員アウト。

 同じく召喚者がダメって事で、カバーさんやマリーもアウト。かといって、最低でも【人化】出来ないといけないので、ルイシャンや霊獣達もアウト。かつ、相手にそのつもりは無いと思うが、ムルデさんのように無意識で魅了を積み込んでくる可能性があるので、耐性関係が低いルシルやルウはダメ。


「となると、ルドルがベストですかねぇ……」

「胃が痛すぎるから出来れば止めてほしいんだが!!」

「わぁ。思った以上に全力の反応が」

「エルルさんの代役とか流石に無理だ!!」


 うちの子パーティにおけるメイン盾さんはそんな反応だったので、流石にこれは無理に連れて行ってもダメだな。緊張でいつもの動きなんてできないだろう。と、なると……。


「はい! はい、マイマスター! ここに! 各種族の礼儀作法や文化の全てを記憶し実践できる賢い梟が!」

「ルイルはちょっと目を離すと必ず迷子になるのでダメです」

「最近は迷子になってませんが!?」

「ダメです」

「念押しっ!?」


 迷子にならないルイルは1人じゃないからな。同行者の制限は1人だから。


「同族制限がなければエルル一択ですし、召喚者制限がなければカバーさんで決まりなんですが、どうしてこんな制限がついているのか。むしろそこまで制限するなら、向こうから指定すれば良いのに」

「お嬢、口調。……で、指定された結果狙い撃ちされたらどうするんだ」

「始めから狙って来るものと分かっていれば、それはそれで対策できますし」


 そう。問題はそこなんだよな。

 ……このタイミングで私個人に、ここまで制限して招待状。目的は何なんだ?

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