第1550話 49枚目:撃破後状況

 その後は凹むエルルとサーニャのフォロー及び各地で活躍していたうちの子の話を聞いて褒めて回るので、ログイン時間は終了した。イベント中の午後ログインは大体司令部の人達に合わせて何度も細かくログインする事が多かったから、時間が余ってるな。

 とはいえ、レイドボスが倒された以上特に急いでやる事は無い。強いて言うなら聖地の島が解放された事による、跳ね橋はそこに続く門の管理についての相談があるだろうが、それは「第一候補」とハイデお姉様が、御使族の筆頭様と話をしてからだ。

 なのでいつもよりのんびりと夜のルーチンもとい日常を送り、特に何も連絡が来なかったのでいつもの時間にログイン。


「さて、現状は、と」


 クランメンバー専用掲示板を確認してみると、そこには無事「第一候補」が筆頭様と話をすることが出来たらしい。その流れで進化の話も振って貰えたので、そのまま進化して【成体】になったそうだ。ようやく【人化】が解禁か。長かったなー。

 そして物質系種族の【人化】と言語スキルの習得は、ちょっと特殊な試練を受ける必要があり、その手続きが聖地の島でしかできないんだそうだ。なので、ルージュとルールを含めた『アウセラー・クローネ』の物質種族組は既に試練を受けに行ったとの事。

 それと、跳ね橋と門はそのままでいいそうだ。聖地の島に足を踏み入れるには、南北の大陸に居る神々から許可を得て、竜都に入れる程度の信用を得ている必要がある。だから物理的に封鎖しなくても、セキュリティはちゃんとしている、という事らしい。


「まぁ、門はともかく、跳ね橋の操作は大変でしたからね……」


 思わずちょっと遠い目になってしまう。あの時は大勢が見守る中でやったっていうのもあるけど、本当に大変だったからな。もうやりたくないと思っていたから助かった。

 後は、イベントか。レイドボスは倒したが、まだイベント期間は残っている。ここまでのパターンだとイベント空間がボーナスステージに変化するが、今回はレイドボスがイベント空間亜空間の核だった。

 それを撃破したという事は、イベント空間は残っていないという事だ。じゃあどうなるかというと、頭に「祝福の」または「加護の」とついた野良ダンジョンが出現するようになったようだ。


「難易度は総じて低い上に必ず捧げものの材料が入った宝箱があり、攻略した時の信仰値増加が大きくご褒美が豪華……なるほどボーナスステージですね。制御しきれていない以上、少しでも空間の歪みを消費したいでしょうし」


 イベントはまだ続いているので、全ての項目で100%を達成したイベントページに変化はない。リザルトはイベントが終わってからって事だろう。イベントのメインだったからか、レイドボスの撃破報酬もまだのようだ。

 流石に内部時間でもレイドボスの撃破から1日ちょっとしか経っていない為、まだ聖地の島は来る人を受け入れられる状態にないらしい。その辺は絶賛調節中なんだろう。

 ボーナスステージである特殊な野良ダンジョンを探してクリアする方に大半の召喚者プレイヤーの意識は向いているので、「まだ入れないのか?」という不満は今の所出ていないらしい。


「――で、この手紙は何ですか、エルル」

「御使族の筆頭殿から、お嬢に、招待状だな」

「個人の心情としては全力で断りたいですねぇ……」

「竜族と御使族が険悪になるから止めてほしいんだが?」

「そうなるのが分かってるから受けるしかないでしょう。問題は、心当たりに碌な物が無いって事です」

「心当たり自体はあるのか……」

「えぇ。……主に加護とか祝福とか領域スキルとか、「第二候補」のあの一撃とか。流石に【結晶生成】はバレていないと思うのですが」

「待て、あれを人前で使ったのかお嬢」

「閉じ込め空間内で奇跡を願う際に捧げものとして。とはいえ、インベントリから宝石を取り出したように見せましたし、その瞬間は出来るだけ見せないようにしました。宝石を常に大量に持ち歩いているのか、と問われても、竜族の皇女わたしなら別におかしい事ではないでしょう」

「……まぁお嬢の場合、ちょっとインベントリが特殊だからな……」


 インベントリがっていうか、神の祝福ギフト付の【格納】が特殊なんだよなぁ。

 カバーさん曰く、【格納】はそれなりに普及しているんだが……何がダメなのか、あるいは良かったのか、そこに神の祝福ギフトが付与される事例は、まだ私以外いないんだってさ。

 何でだろうな?

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