第1549話 49枚目:参戦結果

 絶好調の「第二候補」を止める手段は無い。何故なら「第二候補」が絶好調、という状況はそのまま激しい戦闘が行われているという事だし、絶賛楽しく戦っている「第二候補」は周りへの気遣いや手加減が大幅に目減りしている。

 もちろん問答無用で戦っている相手ごと叩き潰せば流石に止まるだろうが、「第二候補」が楽しく戦える相手、という時点で相当な強敵だ。「第二候補」1人でもいい加減手が付けられないのに、大体は格上である相手ごとどうにかする、というのは、まぁ無理だ。

 だから、「第二候補」が絶好調に戦っている時は、戦闘が終わるのを自己防衛するか離れたところまで逃げて待つしかない。


「のは、とっくに分かっていて矯正する気も無ければ矯正できる可能性も無いのは知っています」

「うーむ、儂の扱いよ」

「なのでテンションが上がって戦いが激しくなるのはもう今更何を言う事もありませんが……だからと言って。世界規模の奇跡を支えていた私の領域スキルと、ウーゼル島の一部にうっかり斬撃を入れてお咎めなし、という訳には、流石に行かないんですよ。分かってます?」

「最後の一撃が思ったより通ってしまったんじゃ。故意は無いと剣に誓っても良い。あれは事故だったんじゃ」

「故意が無くともシャレにならない被害が出るところだったんですからまず何をさておいてもごめんなさいでしょうがこの戦闘狂」

「それもそうじゃの。すまぬ」


 レイドボス? 絶好調の「第二候補」が削り切ったよ。それでも私に攻撃して倒そうとしていたのは根性があるなと思ったが、戦いに集中して欲しい戦闘狂「第二候補」によって巨大な刃部分が細切れにされてたのは哀れだった。

 ただその最後がいただけなかった。亜空間の核だからか、レイドボス「縛り連ねる外法の綱核」は海面や跳ね橋に突き立てていた太い綱が全部斬り飛ばされても聖地の島上空に浮いていたんだが、そのトドメとして「第二候補」は、上空から切り下す形の攻撃をした訳だ。

 私がいる側から飛び上がって、そのままレイドボスを狙ったのだが、その斬撃は聖地の島を中心に展開されていた私の領域スキルと、反対側の跳ね橋及び聖地の島の入口部分に当たって効果を発揮した。


「しかしまさか、あれしきの事で「第三候補」が血を吐くとは思わんじゃろう」

「私も思いませんでしたが、元々の負荷が大きかったので意外ではないです。島についても、本来島を守っていた結界は亜空間へと変えられていましたし、何よりあれだけの規模の奇跡を願う儀式をしていたんです。防御が薄くなっているという想定は出来ました」

「うむ。ぐぅの音も出んわい」


 そして現在、うっかりでやらかしてしまった「第二候補」の首筋を引っ掴み、そのまま跳ね橋最後の休憩所である建物に引きずっていき、部屋の1つで正座させている。大して効いているようには見えないが。

 領域スキルに直接ダメージが入ったせいで、元々割とギリギリだったところにごっそりとリソース消費が発生し、一気に体力(HP)が危険域に入って血を吐いてしまったのだ。何とか領域スキルの自動解除だけは防いだけど。

 レイドボスが倒されたシステムメールは既に届いているし、それを確認したらしく儀式も終了となり、奇跡の顕現は終わった。もちろん私も領域スキルを解除して今は回復しているし、血のあとも綺麗にしている。


「この後「第一候補」も合流する予定ですから、そこでもちゃんと包み隠さずやらかした事を説明して、改めて謝罪と今後の対応を相談して下さい」

「なんじゃ、「第三候補」は別件か」

「エルルの目の前かつサーニャがいないところで血を吐いてしまったので、そのフォローが必要なんですよ」

「あー、護衛対象に致命傷が入ってしまったからのう」

「えぇ。あなたのせいで」

「……うむ。すまんかった」


 戦闘狂なのはもう諦めたから、せめて最低限、味方を含めた周辺被害を減らす方向の気遣いは捨てないようにしてくれ。マジで。

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