第1547話 49枚目:形態性能

 残り体力が1割となったレイドボス「縛り連ねる外法の綱核」だが、ようやく亜空間としてのリソースがほぼ尽きて通常空間に出てきたと言っても、直接殴るのはかなり難易度が高かった。

 まず柱もしくは足場のように突き立てられた太い綱部分だが、これは突き刺さった根元の部分をモンスターの出現ポイントへと変えて、大量のモンスターを召喚する能力があったようだ。跳ね橋でも奇跡によってモンスターは侵入できない海でも構わないらしい。

 そして、その湧いたモンスターは基本的には召喚者プレイヤーに襲い掛かって来るのだが、たまに賢い奴が出現すると、レイドボスの方に向かわせる指示を出すようになった。今の所、真っ黒い綱を登る途中で全て叩き落されているが、もし根元まで辿り着いたら回復されるのだろう。


「そして何よりその綱自体が膨大な体力を持っている上、召喚者プレイヤーが触れると問答無用で真っ黒いスライムに変えられますからね……」


 なので現在の戦い方としては、突き立てられている太い綱ごとにパーティやチームで分かれて、モンスターの群れ諸共綱にダメージを与えている。もっとも、その綱の体力バーは赤地に緑色だから、お代わりが来るのは目に見えているんだが。

 なお、召喚されるモンスターに気を取られていると、レイドボス本体からの攻撃が飛んでくる。1つは通常のロープぐらいの、鞭のように扱われる真っ黒い綱。そしてもう1つは、元留め金の、巨大な刃が先端についている綱だ。

 どちらも直撃すれば実質即死なのは変わらない。通常サイズの方は現在顕現している奇跡の都合上、大幅な補正が入る水属性の壁系魔法や防御魔法で防げるが、巨大な刃の方は頑張って避けるしかない。


ゴガギィィン!!


 ……何せ、5つの内2つが私を狙って交互に振り下ろされるのを、エルルが迎撃する音が、これだからな。

 もちろん受け流す方が負担は少ないのだが、跳ね橋に傷がつくと、そこがモンスターの出現ポイントになるんだ。もちろん綱が突き立っている部分と違って、攻撃を叩き込めば元通りになるんだが、それでもちょっと無視はできない。

 だからエルルは一発目を横に弾いて以降、上向きに弾いて迎撃している。その一発目で発生した出現ポイントは他の召喚者プレイヤーが片付けてくれたが、巨大な刃がついた綱はあと3本あるし。


「反対側からも攻撃しているでしょうし、実際そちらにも振るわれているようですが、攻撃のたびにモンスターが大量発生しますからね……」


 そういう事なので、私だけが入るサイズに縮めていた【王権領域】を、半径10mまで拡大している。もちろんその分私の負担は増えるが、エルルぐらいになればステータスの割合増加があるとなしとではだいぶ違うだろう。

 当然、空からも攻撃は行われているのだが、ぶんぶんと振り回される無数の綱と巨大な刃を掻い潜り続けるのは相当に難易度が高い。しかも攻撃したところで綱で防がれるし、綱に傷がつくとそこからモンスターが湧いてくる仕様は健在だ。

 さらにその上、順調に削られていた筈のモノリス群からも真っ黒い綱が出現、周囲への攻撃を開始したらしい。なので、モノリス群を相手にしていた召喚者プレイヤーはその場に釘づけにされている。


「まぁそれでも流石に本体程の体力もステータスもないようですから、元々『勇者』が参戦していたところは既に撃破の目が見えているようですが」


 具体的にはサーニャが参加してたところ。相当な数の綱が出現して襲い掛かったらしいのだが、全く問題にする事なく、むしろ片手間に切り払いつつ順調にダメージを蓄積しているらしい。

 改めて出現した赤地に緑色の体力バーは相応の量があったようなのだが、まぁ、サーニャだしな。むしろお代わりが出て手を取られる方が困るかも知れない。

 ……根元に攻撃するのに邪魔だからって、片っ端から生えてるモノリスを砕き壊してるって掲示板への書き込みがあるんだけど、たしかあれ、破壊不可能オブジェクトなんじゃないのかってぐらい耐久度があった筈なんだけどな。

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