第1544話 49枚目:ラストブレーク
海面に弾き出されたモンスター達は、南北の大陸を繋ぐ橋やこの跳ね橋の上、あるいはそこから飛んできた
ビリビリと肌が痺れるようなこれは、今も顕現している世界規模の奇跡によるものだろう。領域スキルを展開しているからか、火の奇跡を維持しているからか、とりあえず見える範囲にいる私以外の
だが、恐らくは世界の根本にかかわる神の奇跡は、これで終わりではなかったらしく。
「……何か、軋むというか、無理矢理何かが引き剥がされるような音が聞こえるんですが……」
メキリ、ベギリ、と、鈍い音が聞こえてくるのは、聖地の島の方向だ。僅かに揺れも感じるが、何かが動いている感じはしないので、空間的なものだろう。
まさか、というより、他に無いよなぁ、と思っている間に、バギィッッ、と決定的な音が響いた。その音に一瞬遅れ、聖地の島に向かって左手側奥の海面が盛り上がる。
「――[ハーフ・スフィア・シールド]!!」
当然、その次に来るのは「何か」に跳ね上げられた大量の海水だ。私の後ろには相変わらずそれなりの量の魔力を持って行く灯りの奇跡の火と、その火を分けてもらいに来た人たちがいる。最前線は各自で何とかするものと信じて、自分を端に休憩所を含むようにして、半球型の防御を展開した。
バケツいっぱいの水を思いっきりぶっかけられたように、何も見えなくなる程大量の海水が叩きつけられる。それに混ざって防御も回避もし損ねた
問題は、海水を跳ね上げた「何か」が何だって話であり。
「……あー……。というか、海の下まで続いてたんですか、あれ」
思いきり、というより、もろに顕現した奇跡の影響を受けてジグザグに折れ曲がり、最後の音で跳ね上がる時にトドメが入ったのだろう。力任せに引き剥がした鉄板のように折れそうなほど急角度で曲がっている、真っ黒いものだった。
恐らく位置と場所的に、構造物の支えというか、基礎となる柱、もしくは留め具部分だったようだ。ただし今は神の奇跡によって引き剥がされて追い出され、原形を留めていないが。
そして恐らく、聖地の島を囲んでいるような形の通り、他にもあったのだろう。ギギリィ、と、軋むような音が続いている。
『「第三候補」、今どこにいるであるか?』
『聖地の島直前の休憩所付近です。大丈夫ですか「第一候補」』
『くはは、最大限に支援を受けた上で先達を頼り助けてもらっているとはいえ、流石にこの規模の奇跡を支えるのは厳しいであるな! だが、そこに居るのであれば幸いである』
そして、同じようなものがもう1つ、私から見て右手側手前の海面が跳ね上げられ、留め具が力業で外されたタイミングで、そんなウィスパーが届いた。まぁ、だろうな。むしろ楽だった方がびっくりだ。
で、何が幸いかと言うと、この規模の奇跡が発動すれば、いくら空間的に遮断されていると言っても、まだ聖地の島にいる御使族の人達が気付かないって事は無いんだそうだ。
既にざっくりと事情は説明しているし、今もこの奇跡と並行して不完全ながら連絡を取る事が出来たらしく、島の内部でもこの奇跡を支える為の準備が進められている筈、との事。
『――よって「第三候補」。恐らくもう少し元凶の力が弱まれば、例の力場を引っ張り込む動きがある筈である。その出力の高い領域スキルを通して奇跡の補助が行われる筈である故、動きがあったら逆らわずに動きをゆだねてもらいたい』
『まぁ大詰めですからね。ここが使いどころって事でしょうか。もっともこれだけの奇跡を維持するだけの力ですから、私自身がどこまで持つかは分かりませんよ』
『何、それは我らとて同じことだ。要は、残り3割を削り切る間だけ持てば良い』
『それもそうですね。持たせます』
そう返事をしたところで、再び大量の海水が叩きつけられる。それはまぁいいんだが、ここでちらっと後ろを振り返った。
『……ところで、灯りの奇跡の維持は難しいですかね?』
『くはははは! いくらそちらの始祖とはいえ、流石に厳しいであろうな!』
だよなー。
司令部の人に説明して、まだ並んでる人には戻ってもらおう。ちょっと私も、周りを気にしてる余裕は無くなるだろうし。
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