第1529話 49枚目:内部確認

 流石に近づくと黒いものが出てきたが、燃やせたので問題は無い。流石にちょっと密度的なものが高かったのか、燃え尽きるまでに数秒かかったけど。

 数秒あれば少しくらいは届くかと思ったのだが、現在の私はフル装備で領域スキルを全力展開している。そしてあれは完全にレイドボスの一部であり、かつ力場的な力も持っていたらしく、領域スキルの境目で逆に弾かれていた。

 まぁ問題は無かったので、灯りの奇跡による火の玉を浮かべて中に一歩踏み込む、と。


「まぁこうなりますよね」

「知ってた」

「覚悟済み」

「あの足場、何気に普段でも便利なんだよな」


 当然ながら引火して、内部は炎に満たされた。うーん、勢いが一段と強い。その分相手が全力って事なんだろうけど。

 流石に水を流し込む前に一回は探索しておかないといけないので、協力して空気の足場を設置しながら移動だ。あんまり敵襲を気にしなくてもいいから出来る事だな。やっぱりこれも強度と維持できる時間っていうのがあるから、特に複数人数で協力するとなると、うっかり部分的に消えたりするし。

 内部は相変わらず迷路になっていたが、焼けば探索済み扱いになって「白紙の地図」に道が描かれていくのは変わらない。そして領域スキルも探索済みの範囲になら展開できるので、押し返される感覚があればすぐに分かる。


「かつてなく捗りましたね」

「それはそう」

「暑いだけの散歩」

「迷路が息してない」


 暑さが問題と言えば問題だが、そこはちゃんと各自で対策すればいい話だ。

 さてそうして辿り着いた、一応恐らく最深部に当たる大きな部屋ではレイドボスが待ち受けている……筈だったんだが。


「なんか壁があるんですが……」

「燃えてるけどな」

「流石にレイドボス本体じゃないよな、あの壁」

「ちぃ姫、地図は?」

「ここで止まってます」


 迷路は基本的に灰色の石で出来ている。少なくとも見た目は。だが、少なくとも行ける範囲での一番奥には、ごうごうと燃えているというか燃やされている、恐らくは真っ黒な壁があるだけだった。

 燃えてるし場所が場所だから、モンスター関係の何かなのは間違いない。とはいえ、流石にここまでノーヒントだとは思わなかった。いや、ヒントがあってもうっかり焼いちゃったっていうのはありそうだけど。

 しかし、先に進めそうな感じは無い。ここに来て「白紙の地図」が誤魔化されてるって事は無いだろうし、その地図への書き込みを見る限り、ここ以外に行けそうな場所は無い。


「……。とりあえず一旦戻って、司令部に報告を上げましょうか」

「せやな」

「他の場所と比べてからだ」

「ここがおかしいのは有り得る」

「むしろここがおかしいのは前提」

「まぁこんだけ燃えてるし、突入前も襲ってこなかったからなぁ……」


 イベントダンジョン内部では相変わらず召喚者特典大神の加護による連絡は一切できないので、情報の共有と確認をする為には外に出なければならない。まぁそもそも、この場所は本命ではあるけど、同時に例外の可能性も高かったからな。

 とりあえず、様子を見る事を確認する為に何人か残ってもらい、一応枝道を確認する人達と途中で分かれ、一旦脱出だ。ちなみに外に出る時も何も無かった。振り返って構造物の方を見たら、罅割れから黒いものは見えたけど、出てこようとはしなかった。


「むしろ早くどっか行けと念じられている気がします」

「たぶん間違ってない」

「大体合ってる」

「そりゃ俺らは味方だからいいけど、敵に回ったらなぁ……」

「何も間違っては無いしある意味当たり前の反応」


 まぁ確かに、敵からすればそうなんだろうけどさ。侵略してきてるのはそっちだろうがっていう話なんだよな。炎かモンスターの群れかの違いはあるけど、お前らが散々やってきた事だぞ、これ。

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