第1528話 49枚目:レイドボス出現
イベントダンジョンだった構造物へ、外から攻撃するのは体力バーが半分になって、中に突入できるようになるまでだ。ただし中に突入する為にはあの真っ黒な触手もしくは鎖をどうにかする必要があり、今の所それに対する最適解は燃やす事なので、ある程度はダメージが入り続ける。
なので、ある程度の時間で体力バーは削り切られ、外側が剥がれてモンスターの群れに変わり、内部も探索しなおしになる。だから突入して奥にいる何かに痛打を与えようと思うと、効率が大事になる訳だ。
その効率を上げる為に、観測できる仕掛けから誘導したり、構造物の内部にこちらの神の力がたっぷり込められた水を流し込んだりしていた訳だが。
「まぁそれはそうですよね。私が脅威になるんだったら、エルルとサーニャも脅威になるでしょうし」
効率を上げるというのは、時間当たりのダメージ量を上げるという事だ。逃げている間はダメージを入れられないので、逃がさない方向に動いていた。だが、火力を上げる事でも効率は上げられる。
という事で、まずサーニャが別の構造物へと応援に行ったんだが……サーニャが中に踏み入れた瞬間、今までと同じ速度で移動していたレイドボスの一部が、急加速していなくなってしまったらしい。
で、そこからしばらくサーニャは転移ポイントを使って追いかけてみたが、どこへ行ってもその状態。これはもしかして、と、エルルにもお願いして、縦横3列に並んでいるうち、角の1つに閉じ込めるような場所に移動してもらうと。
「移動を一切しなくなって、攻撃し放題になりましたか。……まぁ、エルルかサーニャ、あるいは私が居る場所に来ようもんなら、その瞬間に削り切ってやりますけど」
まぁ私の場合、神様の奇跡頼りなんだが……これだけ奇跡による火と水があれば、まぁまず持たないと思う。しかも水は相殺して減るが、火は燃やすことで増えるからな。
という事で順調に、とりあえず今見えている部分にダメージを与えて行って、金曜日の夜に突入する頃には、便利に使い過ぎな「亜空間占有率」もほぼ100%になっていた。
ここで
「ここが主戦場になる可能性が高いですからね。力場的な意味でも耐えられる可能性が高いですし」
それなー。という声が聞こえたが、そういう事だ。エルルとサーニャはまだもうちょっと相手を削る為に場所を固定する役としてのお仕事があるから、まだ戻ってきていない。
もう変化まで秒読みになっているし、私は確実に相手を殴る為に力場的、あるいは物理的に味方を守るのが仕事なので、一歩先に外に出て、旗槍を立てて様子を見ていた。
もちろん既に領域スキルは最大展開している。それに水の供給は無くなったとしても、灯りの奇跡による炎はまだ消えていない。「亜空間占有率」が再び100%になった瞬間に構造物があの触手もしくは鎖の塊になったとしても、こっちに攻撃した瞬間に火だるまになるだけだ。
「まぁ主戦場になる可能性が高いですから、まず間違いなく耐えられる私が居る訳なんですけど」
「それはそう」
「そりゃそう」
「ちぃ姫、保護者まだー?」
「削り切るまで柵役です」
とか、様子を見ながら話をしたりしていると、開きっぱなしにしていたイベントページに表示されていた「亜空間占有率」が、一旦100%になった。
そしてそれがすっと0に戻ると同時に、バキリ、メギリ、と、何かが罅割れ、歪むような音が響いてくる。見ると、ドーム状だった構造物全体に罅が入り、隙間から真っ黒い何かが覗いていた。
もちろん内部で燃えていた灯りの奇跡による火も消えたらしく、入口の向こうが闇に沈む。そのタイミングで、システムメールの着信。
[件名:イベントメール
本文:イベント条件が満たされたため、レイドボスが出現しました!
このレイドボスは強力な特殊能力と特殊防御を持っています。
プレイヤー全員で力を合わせて退治しましょう!
※レイドボスがイベント期間内に倒されなかった場合、逃走し姿を消します
※レイドボスの特殊能力をイベント期間内に解除出来なかった場合、
特殊処理が発生します]
「よし、出ましたね。……で、他の場所はどうなってますか?」
「入口部分だけでなく、全体の罅割れ全てから黒い何かが溢れ出し、周囲に攻撃しているとの事です」
「入口以外からも」
「黒い何か……」
「……出てきてないな?」
一応司令部の人に確認すると、そんな返事があった。それを聞いて目の前の構造物に目を向けるが、何も出てきてないんだよな。むしろ引き籠っている。いや、罅割れの内側に黒い何かがあるのは見えてるんだけど。
「まぁ出てこないなら仕方ありません。こっちから近づいて燃やしましょう」
「流石ちぃ姫」
「容赦なし」
「まぁ俺らでもやるけど」
「ちぃ姫、火ぃ分けて」
「どうぞ」
恨むなら、難易度を上げすぎた運営を恨んでくれ、レイドボス。
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