第1527話 49枚目:ギミック検証

 案の定、構造物の体力バーが半分を切っても、外で待っている分には何の動きも無かったので、灯りの奇跡を維持した状態で中に突入する事にした。


「よく燃えるのは良いんですが、床も燃えていると移動し辛いですね」

「いや、分かってたことだろうが」

「外側まで燃えなくて、それは良かったんですが」


 なのだが、中はそんな感じでほとんど進めなかった。空気の足場を設置してそれを辿っていけばいいし、そもそもこの炎は私達を燃やさない。引火するギリギリで勝手に避けてくれるのだ。……が、流石に暑すぎる。燃やされないのが分かってても怖いし。

 なので、灯りの奇跡を願って維持している間に、湧き水の奇跡を願って水を流し込むことにした。これだけ暑ければお湯になるだろうし、火と水で相性が悪いと言っても始祖をやっている夫婦神なのだから大丈夫だろう、と。

 その結果どうなったかって?


「炎が水の中をふわふわ漂うようになりましたかー……」

「どうなってるんだろうな、あれ」

「神の御業ってすごいね」


 こう……ざばばーっと流れていく水の中を、あれ、えーと、雪っぽい、そうスノードーム。引っ繰り返した直後のスノードームみたいに炎が漂うようになった。何が起こっているかは分からないが、たぶん奇跡の相乗効果でこうなっているんだろう。

 水の中の炎も普通に床を燃やしているし、水面の下に沈んだ壁も燃えているので、不思議な光景だ。その燃えてる部分から、ある程度の火の塊が離れて水の中を漂っている。実態を考えなければ神秘的な光景でもあるな。スクショとっとこ。

 ちなみに私が何をやっているかは、後方待機している観測班の人達にも伝えているし隠していないので、司令部にも伝わっている。


「…………。思った以上に効果があるみたいですね、これ。流石ティフォン様とエキドナ様です」

「ん?」

「どういう事、姫さん」

「えーと、今攻撃出来る部位が表示される仕掛けがあって、攻撃によって場所を制限してより集中した攻撃をしているじゃないですか」


 あの立方体×9と、その内部を移動する黒い球体。この場所を示す立方体には何故か最初から近寄りすらしなかったし追い立てても絶対に入ろうとしなかったようだが、こうやって燃やして水を流し込むと、表示が変わったらしい。

 その変化を確認した人によれば、この場所を示す立方体が、下の方から消えていったらしい。そして、残っている部分に攻撃しても、ダメージを示す罅割れがあまり入らなくなった、との事だった。

 司令部の推測は、恐らくは耐久度の上昇と逃げ場の制限だろう、というもの。ちなみにこの場所を示す立方体は縦横3列に並んでいるうちの、真ん中だ。


「――という事で、タイミングを見てあと2つ同じ状態にすることが出来れば、一ヵ所に釘付けにする事も出来るかもしれない、という事でした」

「なるほど。そこに戦力を集めたら効率が上がるな」

「そうだね。逃げないんなら監視と誘導する分の人手も浮くだろうし」


 そういう事だ。ただ、まだ立方体が全部消えたわけではないし、近寄らないのがこの場所だからか消えかけているからかは分からない。それに、もう一点。


「もし消失具合に関係なく移動するのだとしても、立方体が消えるのなら、観測している側からの攻撃が通る可能性もありますからね。少なくとも、召喚者大神の加護持ちではあれどただの個人が、普通に攻撃するだけで空間に干渉できているんですし」

「それは……ありなのか?」

「灯りの奇跡による灯りを近づければすぐ分かります」

「まぁそれはそうなんだけど。そうなんだけど、召喚者って時々ボクらでもちょっとひく程容赦ない時があるよね」

「それぐらいしないと勝てない相手でしょう」

「……それはそうなんだが」

「そうなんだけど!」


 たぶんこのまま殴ってても金曜日の夜には間に合うと思うんだけど、その仕掛けをレイドボス出現の後でも使わないとは限らないからな。一応確認はしておかないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る