第1530話 49枚目:攻略相談

 一旦外に出て司令部に内部の状況を報告。その間にエルルとサーニャも戻って来たので、無事に合流できた。どうやら『勇者』だから、2人共最初の突入に参加していたらしい。


「お嬢は大丈夫だった……みたいだな」

「確かに。こっちはすごかったよ」

「アレクサーニャの方もか」

「あー。あの真っ黒いのがみっしりの上に間からモンスターが飛び出してくるとかですか?」

「そんな感じだ。あとは召喚者が不調になるのが早かったな」

「まさかまだ入口が見えてるところで鎧が歪み始めるとは思わなかったよ」


 たぶんこっちが本来の仕様なんだろう。やっぱり私の所が特殊だったか。大体分かってたけど。

 ちなみに2人の感想というか報告及び司令部の発表によれば、構造物を入口とする空間は構造物ごとに独立している事が確定。エンドコンテンツ疑惑の底なしダンジョンと、こちらの神々の神殿からイベントダンジョンへは突入できなくなっているようだ。

 灯りの奇跡による火も持ち込まれたが、私のように少しでも触れようものなら数秒で塵も残さず燃え尽きる、という程の火力は流石にない。領域スキルと組み合わせて周囲の視界と退路を確保する事に用いた上で、真っ黒い何かそのものと、そこから飛び出してくる真っ黒いモンスターと戦いつつ探索する必要があったんだそうだ。


「あれ、エルルとサーニャの方も黒い壁しかなかったんですか?」

「も、って事はお嬢のとこもか?」

「はい。だから戻って来たんですよね。その黒い壁自体は燃えてたんですけど」

「こっちは灯りを近づけても燃えなかったよ。……いや燃える方がおかしいんだけどね? 今更だけど壁が燃えるって何?」

「本当に今更だな」

「大別するとあの構造物とその中身は全部モンスターですからね。モンスターは燃えてもおかしくないです」

「そうかなぁ!?」


 ただ、迷路の一番奥に大きな部屋があって、その奥の壁が真っ黒なのは共通だったようだ。他の場所も苦戦しつつだが奥に進めたらしく、たぶんこれは全てのルートで共通だろうと司令部から発表がある。

 となるとどうやってダメージを通せばいいかだが……ルート分けしてあるって事は、そういう事じゃないかなぁ。


「たぶん、複数個所で、同じ場所に、同時に攻撃するとかいう感じの気がするんですよね」

「うん???」

「……あぁ、あの黒い壁は全部一緒だからか」

「…………。あ! そうか!」

「まぁその逆で、複数個所で分担して全体を攻撃しないと通らない、って可能性もあるんですけど」

「どっちもどっちだな……」

「守る仕組みとしてだけなら優秀なのは分かるんだけど」


 どっちにしろ、調べる為には一番奥まで行ってあの黒い壁に攻撃してみなきゃいけない訳だ。だから多分、ここで一旦は合流してもまたエルルとサーニャとは別行動だろう。

 ……と、思ったのだが。


「ちぃ姫さんはエルルさんとサーニャさんと共に行動して下さい」

「え、いいんですか?」

「はい、大丈夫です。ただ大人数ではなく、3名で行動してもらう事になるかと思われます」

「それは問題ないんですが」


 検証の方に参加していたのか、それとも情報をまとめる方を手伝っていたのか、司令部に参加する方向で動いていたカバーさんがやってきて言うには、私はどうも単独行動が推奨されているようだ。推奨というかお願いというか。

 まぁレイドボスの様子を見る限り、私がいる事で本来の挙動をしなくなるのはまず間違いないだろう。だからそれを避ける為に、どこかで別行動なんだろうか。

 でもそれなら、それこそ私は後方で生産活動をして、エルルとサーニャは戦力として動かすよな、司令部なら。それが、私とセットで実質単独行動ってどういう事だ?


「最奥で発見された黒い壁ですが、どうやら空間の分岐はその大元が3つであり、大陸ごとに空間が分岐しているらしいという事が判明しました。そして恐らく、その大元の分岐ごとに最低一ヵ所ずつ同じ場所に攻撃する事で、黒い壁の部分的な破壊が確認されました」

「なるほど。同時攻撃の方でしたか」

「そうですね」


 たぶんこれが前提条件だな。同時に攻撃しないとダメなパターンだったか。となると、私が単独行動なのは、一ヵ所は確実にダメージを与え続ける為か? でもそれならエルルとサーニャで分かれた方が効率的だよな。


「なのでちぃ姫さんには、この場所を除く8ヵ所を順番に回って頂き、内部をしっかりと照らして頂けないかと。合わせて内部に火が舞う温水も満たしてもらえれば、少なくともその場所には痛打が入り続けている事になります」

「…………なるほど。まぁ司令部の方針なら問題はありません」

「正式決定された方針なので大丈夫です」


 なるほどな。理解した。それで残った一ヵ所っていうかこの場所に召喚者プレイヤーを集めて、あの黒い壁を壊してそのままレイドボスを殴る訳か。

 万が一レイドボスが、前の段階で見せたように逃げたところで、その先にあるのは奇跡による火と水、下手すれば竜族の皇女が全力で支援する『勇者』が2人だ。むしろ逃げてもらった方がダメージは加速するまである。


「ねぇ姫さん。ほんとにいいのそれで。ねぇ?」

「召喚者は時々本当に容赦ないな……」

「取り逃がしたら絶対碌な事にならない、こちらを学習する相手ですし……」

「そうなんだけど!」

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