第1485話 49枚目:行動結果

 何らかの制限か、それともエキドナ様の気遣いか、内部時間にして1時間程で湧き出る……というには勢いが桁外れだったが……水は止まった。一応「極小の水源核」を確認するが、何かが変わったようには見えない。

 その場で改めて奇跡に対しての感謝を捧げ、箱に戻してからインベントリへ。代わりにここに来てから書き込みが始まった「白紙の地図」を取り出した。

 入口と神殿を繋いでいた、あの水攻めと同じ効果が出ているなら、相応の範囲が書き込まれている筈だが……。


「流石エキドナ様です。ありがたい」


 今も足場の周りに水が溜まっているし、その高さは少しずつ低くなっている。という事はつまり、まだ水の流れは止まっていないって事だ。その証拠に、今いる部屋を中心として一気に書き込みが増えた地図は、書き込まれた範囲がまだ徐々に広がっていっている。

 さて問題は、そこに何か特徴的な地形か、もしくは端があるかどうかだが。


「……広がり続けていますね。ほぼ一定スピードで、全方向に」


 どっちもなさそうだな、これは。困ったぞ? ここまでやっても脱出のヒントすら無いとか、割と本気で手詰まりなんだが。

 もしかしたらこれは、本当に時間切れからの強制退出が正規ルートか? でも時間切れ前提なら、こう、何というか、ボーナスステージ的な場所じゃないのか。せめてこう、どかっと大量の塗料が置いてあるとか、それぐらいはあっても良くないか?

 ただただ広いだけの、何もない迷路。どれだけ動いても残り時間ターンが減っていくだけで何も見つからない。……虚無だな。無駄な時間を過ごした感が強い。


「水が流れて広がっていくのを眺めるだけなら時間は減らないようですし、湧き水の奇跡を願うのもそんなに時間がかからないようですから、何なら周囲一帯、本気で水に沈んでしまうまで願い続ける事も可能でしょうけども」


 足場をもうちょっとしっかり作って飾って儀式場としての体裁を整えて、【結晶生成】で自分を飾るのももうちょっといけるだろうし、二重バフもかけておけばもっと行けるな?

 と、ちょっと脱線しかけたところで、水が流れる音に違和感が紛れ込んだ。……改めて言う事でもないが、私のステータスは高い。つまりしっかりと調節は出来るが、本気で耳を澄ませばかなり遠くの音も聞こえる訳だ。

 そして現在位置は、水の流れていく音以外には何も聞こえないとても静かな迷宮だ。だから、まだ書き込まれた範囲が広がっていっている地図を見る限り、相当遠くであっても「何か違う音がした」事ぐらいは分かる。


「……、流れに逆らって、水をかき分けるような音ですね」


 まぁ道が入り組んでいるせいなのか、その音がどの方向から聞こえるのか、というのの判別はかなり難しいんだけど。音の聞こえた通路がどれかは分かるから、こちらから音源の方向へ向かう事は出来るだろう。音が鳴り続けていれば、だが。

 幸いというべきか、音は鳴り続けている。もし召喚者プレイヤーなら、私と同じく何もない場所でうろうろし続けてようやく見つけた変化を辿ってみた、という感じだろうか。モンスターなら普通に攻撃しに来てるんだろうし。

 さて問題は、ここで待つか、こちらから向かうかだが。


「今見えてる地図の端ではあるでしょうし、私が向かった方がたぶん早いですね」


 時間ターンの節約は必要だろう、って事で、【飛行】をメインに入れた状態で壁を蹴って、音を辿っていく事にした。どう考えても歩くよりこっちの方が早いし、実際時間ターンの消費も少ない。

 流石に旗槍を掲げていると空気抵抗がすごい事になるので、一旦旗の部分を柄に巻き付ける。領域スキルの(主に範囲的な)補助はぐっと減るが、移動だけなら問題ないだろう。

 領域スキルを縮小すると時間が短くなる可能性もあったが……まぁそれは、これだけ神の奇跡による水で満たされてたら大丈夫だろうと思ったし、実際大丈夫だった。問題は無いな。

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