第1463話 48枚目:攻略終盤

 数日たってクランメンバー専用掲示板に、「第一候補」からの書き込みがあった。やはりあの方法で内部と連絡を取る事は出来なくなっているようだ。まぁそんな気はした。

 ただ神の力というか、奇跡による住民用ウィスパーのようなものはちょっと手ごたえがあったらしい。変質した防御の枚数が減れば、そちらでなら連絡が取れるかもしれない、と続いていた。

 まぁその次に書き込んであったのは、あの聖地の島を覆っている境界線が、少なくとも5枚はあるって事だったんだけど。何故上げてから落とすのか。


「少なくとも、という事は、まぁ、倍はあってもおかしくない感じでしょうか……」


 結構ギリギリだな。カウントダウンがリアル1日かかって、イベント期間そのものは2週間だから。出来ない訳ではないけど、って感じだ。

 もちろん大陸東部を封鎖している見えない壁の方も攻略しながらだから、いつものように厳しいのは確かなんだが……カウントダウン中はやる事が無い、って意味だと、特級戦力的には楽でもある。

 司令部の戦力配分や、それに協力してくれる召喚者プレイヤーの人達ありきなんだけど。武器スキルを筆頭とした各スキルをレベリングするのに良い環境なのも確かとはいえ。


「ま、やれるだけをやるしかありませんね」


 という訳で、時々劣化レイドボスとスタンピートが重なった場所に応援に行ったりしつつ、見えない壁や聖地の島の境界線を、エルルとサーニャと一緒に回り続けた結果。


「……相手の抵抗が強いだけではなく、ここだけ見えない壁の規模が大きいですね?」

「たぶんここが一番重要なんじゃない?」

「まぁ、大体大陸の、南北方向の中央ではあるからな……」


 金曜日夜、イベント終了を目前にしたこのタイミングで、大陸東部の封鎖、その最後の1つとなった見えない壁を前に、正面戦闘もとい局地戦争をやっていた。

 もちろん私だけではなく、有名どころの召喚者プレイヤーが大勢参加している。何せモンスターがここに一点集中してるからな。少なくとも南側の大陸に居た分は。

 たぶん北側の大陸でも同じような事になってるだろうし、あっちは「第一候補」が領域スキルを展開しているんだろう。やっぱり大陸を2つ同時に攻略するって大変だな。期間が倍になっているとはいえ。


「しかし、それにしても……ここまでやっても聖地が解放できないとは思いませんでしたけど」

「あれも妨害に入るのかな?」

「入るんじゃないか。他に言いようがないだろ」


 ちなみに聖地の島に関してはこの会話を参照。張られていた防御は合計で12枚だったのだが、その最後の1枚を突破したところで、あの向こうが見えそうで見えない、陽炎のようなものに変化したのだ。ちょっと待てや。

 例によって掲示板は内外問わず「運営!!!」の叫びがすごい事になっていたが、同意しかない。まぁこれでこの1年の最終目標、つまり来月のイベントで解放されるのがあの聖地の島および御使族の町である事が確定したけど。

 フリアド世界において御使族が重要なのは分かる。竜族だって結局1年かかったからな。だからといって、もうちょっと無かったか? と思うのが本音だ。あと、不死族の扱い。実際探す側に回ってたから納得せざるを得ないけど。


「ねー姫さん。ボクらが前に出たら終わらない?」

「終わるからダメなんですよ。まぁ見る限りじわじわと余剰は減っていますし、どうしようもなく間に合いそうになかったら声がかかるでしょう。それまでは待機です」

「大丈夫かなぁ。何か大きい気配がするんだよね。エルルリージェはどう思う?」

「巣穴を代償にして召喚されるモンスターか? それならちょっと離れたところで複数体出現しそうだな」

「……複数体同時に出現すると、それら同士が合体とかしそうですね」

「そうそう、そんな感じ」


 一応。一応カウントダウンは、このまま阻止されなければギリギリイベント期間内に完了する。それが分かってるからこの近辺だけ戦争状態になってるんだけど。

 ただ完了できるかどうかは割と不安だな。盛り上がりとしてはいいんだろうけどさ。……とりあえず今の会話をカバーさんが聞いてくれてたみたいだし、対処は出来ると思っておこう。

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