第1462話 48枚目:攻略進捗

 まぁその場には司令部の人達も居たので、とりあえずエルルとサーニャ、そして御使族の人達を含めたその場の全員で、次の一枚のカウントダウンを表示させるところまではやっておいた。

 その次にカウントダウンが終わったのは大陸の端、北側なら北の、南側なら南の、聖地の島からは一番遠い場所にある見えない壁だ。こちらはどうなったかと言うと、あのどうやっても触れられない陽炎のようなものへと変わった。

 どうやらこれは私達の侵入を拒むだけではなく、モンスターも通れないものらしい。見えない壁はモンスターなら出入り自由だったから、確実に出てこない場所が出来るのはいい事だな。


「とはいえ、その分だけ出てこれる場所に戦力を集中させられるって事でもあるんですけどね」

「それはそうだが、ここまで押し込まれてるとは思わなかったぞ」

「姫さんが寝てる間も、他の召喚者に言われて攻撃してたんだけどな」


 この会話の通り、土曜日の後半にカウントダウンを表示させた部分は、カウントダウン表示が消えてしまっていた部分もあったのだが。その近くには旗持ち個体がたくさん居たので、モンスター側が気合を入れていたらしい。

 もちろん旗持ち個体は全部倒して、再びカウントダウンを表示させてからしっかりと追撃を叩き込んでおいたけど。そうでなければイベントとして成立しないからか、他に何か理の通る理由があるのか、見えない壁の向こう側に旗持ち個体はいなかったし。

 しかし、こうやってモンスターが出てくる場所を制限できるんなら、あれだな。


「聖地の島に近い方から、疑似的に封鎖していった方がいいかも知れませんね……」

「相手の戦力も集中してくることを考えると、そうなるな」

「でも、それならそれで対処がしにくくならない?」

「防衛対象と撃破対象の距離はあればあるほどいいというのがセオリーですし」


 とはいえ、流石に大陸の端まで行くのは大変だ。だから、こっちから封鎖していくのも必要といえば必要だ。どうせ戦うのなら、もう少しやりやすい場所がいい。

 それにおそらく、大陸東部を全面封鎖出来たとして、8月に入ったら解かれる可能性は高い。大陸として残っている面積は大したことが無いが、相手は空間の歪みを上手く使えて、亜空間すら作れるようになっている。見た目の距離と面積は、正直あてにならないだろう。

 ……まぁ、8月に何とかするのは例の、阻止できない成長を続けている亜空間であって、封鎖の解除はまたその次かも知れないけど。あれが結局どこに出てくるか分からないからな。


「今はとりあえず表面上何もしてきていないようですけど、あちら側からの干渉もまずあると思っておいた方がいいでしょうし。そもそも、成長し続けている亜空間というのが爆弾過ぎますが」


 エルルとサーニャが揃って見えない壁に攻撃を打ち込み、周りから来るモンスターは観測班を含む『可愛いは正義』を中心とした召喚者プレイヤーが対処してくれている。私は変わらずその中心で領域スキルの展開だ。

 クランメンバー専用掲示板を見る限り、「第一候補」も聖地の島を覆っている防御が何枚かを調べてはいるようだ。可能ならあの力場を噛ませる方法で再び内部と連絡を取る事も検討しているらしい。

 ……ただ、連絡を取る方は、どうだろうなぁ……。少なくとも一番外側は、完全に押し切った状態を維持しているとはいえ、絶えずモンスター側の影響を受けている状態だし。


「1枚目と2枚目の防御が完全に別カウントだった事を考えると、内側からも神の力で干渉してくれると、必要な時間が半分で済むのは確かなんですが」

「お嬢?」

「いえ。とりあえず今は出来る事をやりましょう」


 本当にイベント期間中に攻略し切れる防御枚数なんだろうな? とちょっと思ったりしたが、たぶん大丈夫……だと、思いたいところだ。

 まぁ7月も後半に入れば夏休みだからな。7月中は宿題をやらないといけないが、ログインできる時間はぐっと増える。それにエルルとサーニャは私がログアウトして眠っていても動けるから、他の召喚者プレイヤーと協力して見えない壁を攻撃するのは出来るだろうし。

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