第1460話 48枚目:推定ルート

 そこから素早く司令部により、この場に残ってバーの状態を維持する召喚者プレイヤーと、大陸東部を封鎖している見えない壁に向かう召喚者プレイヤーとに分かれる事になった。もちろん私は大陸東部に向かう側だ。エルルとサーニャがセットだからね。

 また、カウントダウンが始まったのと同時に、南北の大陸を繋ぐ橋で行われている、海に対しての防衛戦も激しくなってきたらしい。まぁそりゃそうだな。カウントダウンを阻止しようとするだろう。

 これで、一度カウントダウンが止められたらまた最初から、とかだと心が折れかねないな。フリアドの運営ならやりかねないっていうのがあれだが。


「とりあえず、私達は南の端から削っていきましょう」

「南からか?」

「竜都に近い方からじゃなくて?」

「まずは島を開放するのが目標ですからね。対処の為の手を割かせるには、出来るだけ遠くの方が効果が高い筈です。……それに、一応は「壁」ですからね。それが無くなれば、また影響力も強まる可能性がありますし」


 そういう事なので、神域ポータルと修復した大神殿を経由してショートカットし、南側の大陸、その南の端っこに移動だ。もちろん他の召喚者プレイヤーも、他の場所でそれぞれ見えない壁に対して攻撃をしているだろう。

 ……攻撃はしつつ、野良ダンジョンの攻略と、モンスターの出現ポイントへの対処、スタンピート及び旗持ちに対する防衛戦、劣化レイドボスの撃破を同時並行でやらなきゃいけないからな。まだ7月だよな?

 今でこれなら来月のイベントはどうなるのか、と、内心頭を抱えつつ、それでも表面上はいつも通りだ。


「それに、相手の動きが早いところだと、もしあのカウントダウンが止められたら最初からやり直し、だった場合、ロスが大きいですし」

「防衛戦するならそれなりに長い時間だったな」

「それにこちらは見えない壁がいくつも連続で並んでいる形になるようですから、端から削っていけば少しはこう、相手からの影響も軽減できるかな、と」

「あぁ、確かに。左右が詰まってると相手に有利な効果がありそうだね。隊列を組んでいるようなものだろうし」


 まぁ実際のところ、聖地の島に近い位置の見えない壁と、大陸の真ん中あたりの見えない壁だと、理論上は同じだけの攻撃力になるように攻撃を叩き込んでも、その削れ方と元通りになるまでの速さが違うって言う結果は出てるんだけどな。

 もちろん聖地の島に近い位置、並んでいる見えない壁の端っこに位置する場所の方が、削れ方が大きく元通りになるまでの速さが遅かったとの事。だから、端から削っていくのが推定正規ルートだ。

 という訳で。


イベントページ大神の加護特典で分かる範囲を超えてもこちらの神々の力を蓄積する事は出来るようですから、思いっきり過剰火力を叩き込んでいきましょう」

「いいのかそれで……」

「加減しなくていいなら、そっちの方が楽と言えば楽だけど」


 どうやら掌握率というか、力の充填率と言った方がいいのかもしれないが……イベントページのバーが100%になっても、それ以上に叩き込んだ分は無駄になっていないらしい。というのも分かったし。

 祝福と加護をたっぷり受けた皇女に『勇者』が2人もついてるんだ。特級戦力らしく、思いっきりやっていこう。


「それに、神々の力を蓄積しておけばおくほど、恐らくは後が楽になるでしょうし……」

「……。あぁ、そうか。空間が元に戻っても、侵略者側に奪われにくくなる可能性があるんだな」

「流石に範囲が広いですからね。押さえられるときに押さえられる部分は押さえておくべきしょう」

「それはそうだね。元に戻したはいいものの、すぐ相手に取られました、じゃ、あんまり意味がないし」


 そういう理由もあるので、私達は確実に見えない壁を削るのがお仕事だ。それこそ、「モンスターの『王』」が全力で綱引きしようとしても、無視して引きずり切ってしまうぐらいに。

 むしろそうやって「モンスターの『王』」がこっちに注目してくれれば、他の場所もやりやすくなるからな。その方が都合が良かったりする。その為にも、全力で殴りに行くぞー。

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