第1459話 48枚目:攻略手順

 とりあえず聖地の島に近づいてみて、旗槍を持った状態で領域スキルを展開しよう、と、思ったのだが。


「……なんか、近づいただけでじわじわバーが動いてるんですけど……」

「…………。お嬢。確か、神の力がこもった攻撃でもいいんだったよな?」

「「第一候補」曰くは大丈夫な筈ですね」


 はて? と思っている間に、エルルが大太刀を一閃していた。聖地の島を包んでいる、島がぼんやりとしたシルエットにしか見えない境界線に向かって。早すぎて私でもちょっと見逃しかけたんだけど?

 だがそれ以上に驚いたのは、その一撃で、イベントページに表示される各地の境界線で行われている、こちらの神々と「モンスターの『王』」による力場的綱引きの状況を示すバーが、ドットいくつ分か、こちらの神々側に傾いたのが見えたことだ。

 ……ちょっと考えて、思い至る。なるほど。


「種族特性が神の力に入るという事は、『勇者』の場合は行動全てが神の力がこもっているという事になる訳ですね……」

「加護や祝福を前提としてはいるからな」


 まぁでも流石に、一撃でバーが目に見えて動くのは竜族の『勇者』という桁外れだったかららしい。司令部あるいは検証班が他の『勇者』に手伝ってもらったところ、バー自体は動いたが、そこまで急激ではなかったようだ。

 エルルとサーニャは色々特別だからなー。と思っている間に、カバーさん経由で司令部からの指示が来た。


「えーと。他の場所も気になりますし、何より御使族の人達を説得するのには時間がかかると思われます。試練品の装備も似たような効果があるのだそうですので、私の領域スキルを展開した状態でエルルとサーニャにも参加してもらい、一気に聖地の島をこちら側に取り戻す、との事です」

「そうか。試練品も加護や祝福の対象だからか」

「ただしやり過ぎるとまずいので、エルルとサーニャは通常攻撃だけでお願いします」

「了解姫さん。打ち込み練習みたいなものだね?」

「的じゃないぞ」


 ……動かなくていくら攻撃しても良くて壊れない、って意味だと間違ってないけども。私も実際、北国の大陸で氷を壊してた時はそういう考えをしてたし。サーニャ、進化して体は大人になったけど、精神はちょっと子供返りしてない?

 という会話はあったが、ステータスだけでなく、職業軍人としての戦闘に関する技量というのも高い2人だ。大技を撃つ召喚者プレイヤーが広い場所を使った方がいいって事で端っこに居たけど、ぐんぐんバーが動いていった。

 私は例によって旗を持った状態で置物だ。端っこに居ても、領域スキルの展開範囲を動かせば橋の上ぐらいなら余裕で覆えるし。そういう形にした方が、領域スキルに触れる面積は多くなるし。


「……まぁ、今回は必要だったか分かりませんけど」

「どしたの姫さん?」

「2人の貢献度がすごいなーという話です」


 という訳で、あっという間にバーはこちら側を示す色で満タンになった訳だが……その上で何か、カウントのようなものが表示された。何だこれ。

 そこからエルルに軽く一撃を入れてもらったが、時間が短くなるという事はなかった。今表示されたところだから、最大値は……96時間、内部時間4日、リアル丸1日か。そこからカウントダウンする形で、数字が減っていっている。

 バーを溜め終わったらそこで終わりかと思ったんだが、そういう訳でもないらしい。他の召喚者プレイヤーも同じことを思ったらしく、ざわざわと意見交換している声が聞こえてくる。


「全体連絡! 観測班より、全体連絡です!」


 どういう事だ、と思っている間に、橋の真ん中の方から、拡声された声が響いてきた。私は普通に聞こえるが、普通の召喚者プレイヤーはそうもいかないからな。

 今回のように全体に、そして素早く現場にこそ情報を伝える必要がある場合に使われる手段だ。つまり、かなり相当重要な情報が見つかり、急いで共有しないとマズい場合、って事なのだが。


「鑑定の結果、このカウントダウンは「境界線及びその空間異常の完全掌握」を達成する事で開始され、終了時点まで「掌握率を90%以上維持し続け」る事が出来れば、掌握した側の神あるいは『王』のリソースとして回収されるようです!」


 ……そう来るかー……。

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