第1458話 48枚目:イベント開始

 一応イベントが始まる前に南側の大陸にある竜都には移動しておいた。ここを誰が運営するのかは決まってないが、私でない事は確定しているので気が楽だ。

 召喚者プレイヤー達も、大部分は南北の大陸にある集落へと事前に移動していたらしい。大量のモンスターによる襲撃と、イベントが終わっても大量発生した野良ダンジョンが消えなかった事でちょっとゴタついたようだが、それはどうやら何とか片付いたらしい。

 もちろん消耗品の補充もしっかりしてある。もっとも、予想が正しければ今回もいくらあっても足りないパターンだが。


「……消耗品に余裕があったイベントなんて、そもそもありませんでしたね。そう言えば」


 ともかく、準備は可能な限りやった。念の為「第一候補」にも確認を取ったが、「神の力を含む干渉」を行えばいいらしく、実際イベントが始まったら全力で【王権領域】を展開しようと思う。あれも神の力関係だし。

 一応ハイデお姉様と打ち合わせ、イベント開始土曜日の前、金曜日の夜(フリアド内部は日中)に聖地の島への橋をかけておいた。これでイベント開始と同時に動く召喚者プレイヤーの人達も聖地の島へ向かえる筈だ。

 私はいつも通り、日付変更線前にログアウトしてそのまま就寝。土曜日なので午前中からログインできるが……さて、どうなってるかなと。


「そしてログインしてすぐ聞こえてくる派手な戦闘音。それも北側から。大体分かってましたけど」


 私は今南側の大陸の竜都、そこにあるお城の私用プレイベートエリアにいるので、北側=聖地の島の方向だ。だろうとは思ったけどさ。

 予想はしてたので、音を聞きながらクランメンバー専用掲示板を開いてここまでの事を確認する。えーと、イベント開始と共に、先月のイベント程ではないにしろぽつぽつ野良ダンジョンが出現。そこに紛れるようにしてモンスターの出現ポイントも湧き始めた。まぁそれぐらいはするか。

 そして出現ポイントから固定で出現する旗持ちを含めた特殊個体は、召喚者プレイヤーを無視して野良ダンジョンへ移動。スタンピートを早めた上で、モンスターを吐き出し終わった野良ダンジョンを劣化レイドボスに変えて周囲の集落を攻撃するという行動を取る、と。


「まぁ、それぐらいはすると思いました。というか、絶対にあのゲテモノピエロの入れ知恵ですよね、これも」


 そしてなお悪いのが、南北の大陸にはそれぞれ1ヵ所ずつしか渡鯨族の港町が無いし、人魚族の町もまだちゃんと本来の役目……内地における水脈などの管理……が出来るようになったとは言い難い。

 だからかそれらの町にある海神様の神殿もキャパシティが低く、海の中にもモンスターの出現ポイントだけではなく、野良ダンジョンまでもが出現しているんだそうだ。

 なので一部召喚者プレイヤーは海神様が集めた野良ダンジョンを集中攻略し、メイン討伐対象は劣化レイドボス、というのが今の状況らしい。つまり、聖地の島の境界線や、大陸東部を封鎖している見えない壁にちょっかいを出してる余裕があんまりないって事だな。


「あまりない、であって、全くない、という訳ではないみたいですけど」


 もちろん、司令部はちゃんとちょっかいを出している。主に神の力を込めたアイテムを投げつける、という形で。神の力による信仰値依存のアビリティは劣化レイドボス討伐に使われているようだ。

 ただその結果が、観測できない程に微々たるものだったらしい。どうやら、こちら側とモンスター側の干渉は互いに打ち消し合い、かつ南北の大陸全域(旗によって守られている場所を除く)にまだ「モンスターの『王』」の影響力が残っているから、少々神の力をぶつけたところで相殺されてしまう様だ。

 とはいえ、放っておいたらじわじわとモンスター側に傾いていくようなので、とりあえずそれを阻止する事が必要、と、行動は止めていないようだが。


「十分に厄介な事になっていますね。……とりあえず、エルルかサーニャと合流して、聖地の島の近くまで行きますか」


 大陸東部を封鎖している見えない壁は、こっち側から突破するとモンスターや「モンスターの『王』」の影響力が溢れ出してきそうなんだよな。

 それに聖地の島、及び御使族の町を開放すれば、大陸全域に及んでいる「モンスターの『王』」の影響力を一掃、あるいは中和できるかもしれないし。

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