第1448話 47枚目:イベント終盤

 サーニャの進化に備えたいが、イベントも手を抜く訳にはいかない。という事で私は内心頭を抱えていた訳だが、そこは流石カバーさんと言うべきか。イベント最終日と極夜(夜とついているが、昼の事で合っている)が重なっているのに、上手くスケジュール調節と表向きの理由言い訳の用意をしてくれていた。

 サーニャが進化する為に必要な「黒い昼」は、南側の大陸南端から、小船で島伝いにしか行けない小さな島だ。どうやらかなり昔に大規模な噴火があったらしく、この辺りの島は基本的に全部火山岩らしい。

 この時点で既に特別な訳だが、目的地となる島はなんと、噴火から相当な時間が経っているにもかかわらず、苔の一つもない状態らしい。話を聞いてもその理由が分からなかったんだが。


「……なるほど。これは特別な筈です。まさか……島1つが丸ごと・・・・・・・黒曜石・・・だとは」


 イベントそのものはひたすら野良ダンジョンを攻略しつつ時々防衛戦の援護に行っていただけなので割愛。とりあえず落とされた集落や神殿はないみたいなのでよし。

 一応最初の大陸にある、邪神関係の封印もしっかり防衛されていたみたいだ。……その周辺だけ、スタンピートの発生率が他より高かったから、何か細工はしてたんだろうなって思うけど。

 でー、細工をしてるって事は、細工をする余力があるって事で。


「まぁ、何かしらちょっかいは掛けてくるでしょうね。エルルの時の事を考えても、下手すれば神経由で情報を得ている可能性もありますし」

「邪神とはいえ、神様が干渉してくるっすかねぇ?」

「相手が相手ですからね。竜族で十数世代に1人いるかどうかの希少種ですし」

「……そう言えばそうだったっす」


 まぁ、分かるけど。普段がおちょゲフンフレンドリーだからな、サーニャ。進化条件が神に聞かないと分からないぐらいのレア種族だ。

 という事は、進化したらめっちゃ強くなるのは火を見るより明らかってやつな訳で。それがおおよそ、秩序側に行くのが間違いない、というのが分かっていれば……。


「私だって事前に阻止しようとします。邪神かその眷属ではないにしろ、限りなく近い性質を持った相手が出現しようとするなら、その出を潰しに行きますよ」

「あー……逆の立場だと、確かに阻止するっすね。出来るかどうかは別として、割とガチで」


 なお南と言ってもここまでくれば十分に寒い。しかし絶対に来るのが分かっているので、私はドレス鎧(予定)とヴェールのセットに旗槍を持った、儀式的な方向を含むフル装備状態だ。

 黒曜石の塊である島は、水晶のクラスターのような形をしている。島自体に特に神殿のようなものは無かったが、その真ん中にぽっかりと開けた部分があるので、ここが恐らく「黒い昼」を見ることが出来る場所なんだろう。

 サーニャはその手前で着替え、私達は島の縁で待機だ。もちろん、何もなく無事に進化が終わるというのが一番いい。


「それに、周りは海ですからね。他の島との距離もありますし、竜族部隊の人達もいますから、空からくるのもかなり難しい筈、なんですけど」

「流石に島ごととかってのは無いっすかね」

「聖地とまではいかずとも、十分特別な場所ですからね。噴火でできた黒曜石の島とか、しかも「黒い昼」が見える座標にあるとか、完全に始祖によるものでしょうし」

「まぁ儀式場ではあるっすよねぇ……」


 それでも警戒はするんだけどな。繰り返すが、来ない方がいいんだ。出来れば図書街での弱体化をまだ引きずっているもしくは立て直せてなくて、手を出したくても出せないとかが一番いい。

 ……相手が弱っている可能性が高い事と、警戒しない事は、別の話だ。それが、今まで散々に斜め上の方向でしてやられてきた相手なら、なおさら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る