第1446話 47枚目:イベント開始

 これは余談だが、こっそり6月って日にちが決まってるイベントって無かった気がするけどどうするのかな、と思ったんだ。母の日をスルーした以上、父の日だけをするって事は無いだろうし。

 イベントのお知らせの最後にちょこっと、本当にオマケって感じで「6月中は全世界で天候が「雨」(地域によっては「雪」)になる確率が上昇します」って書いてあった。どうやら6月は梅雨らしい。


「雨とは」

「流石にこれだと飛ぶのも危ないな……」


 その結果、ちょいちょいバケツを引っ繰り返したような豪雨に遭遇する事になるのだが、それは別の話だ。

 で、野良ダンジョンの出現率が大幅アップして、その攻略を推奨されるイベントの状況は、というと。


「いやーあの年越しの時を思い出しますね。あの時私は防御に専念してましたけど」

「むしろ今も防御に専念してた方がいいんじゃないのか、これ」


 と、いう感じだ。いい加減にしろ運営。間に合うかこんなもん! というか野良ダンジョンの出現率が上がるのは最前線の大陸だけじゃないのか!? 全世界なら全世界って書いとけ!!

 ところで旗だが、どうやら集落や拠点に対応する模様かシンボルを描いた旗を立てると、魔力を蓄積することが出来るようになるようだ。そして、スタンピートが発生した時にあの不思議な防御が展開できるようになるらしい。もちろん途中で魔力を外からつぎ足す事も出来る。

 なのだが、バリアっぽい不思議な防御を展開すると、それなりに旗の耐久度が減っていくらしい。だから召喚者プレイヤー達は慌てて報酬としてもらった旗だけでなく、新規に上質な素材を使って旗を作っているところだ。


「そしてアラーネアさんがまた忙しくなると……」

「先輩、布系の生産スキル持ってなかったっすか?」

「私が作って市場に出せると思います?」

「無理っすね」


 だから私は生産側ではなく、戦闘側で参戦だ。時々スタンピートに横から突っ込み群れを食い破ったり、旗持ちモンスターを狙い撃ってモンスターの群れを混乱させたりだな。

 ちなみに旗持ちモンスターはモンスターの群れを指揮している事が多く、放置すると良い感じの場所に旗を立てて拠点を作り始めるので、最優先で撃破するべき対象となっている。


「まぁそれはあちらも同じようで、どこへ行っても集中攻撃されますね。私が」

「ありがたくない状況だな」


 旗持ちモンスターは領域スキルに相当する力場を展開しているらしく、それを出力の差で強引に押し込んでるっていうのもあるだろうけど。特に既に旗が設置されてる場合だな。エルル以外の住民組の皆が、踏み込むとかなり動くのがキツそうだから。

 たぶんこっちの神様の加護と祝福が封じられてるんだろうが、こんな気軽に展開出来ていいのか? ……と思ったら、しばらくしたら外から飛び道具や魔法で旗を狙い撃ちにしてた。うちの子が賢い。

 まぁ更にしばらくしたら模様の違う旗が立ってて、それはこっちの遠距離攻撃に大幅な減衰がかかる効果があったみたいだけど。その分だけ加護と祝福を封じる力は弱かったらしく、ルシルがさくっと首狩りしていた。


「まぁその内複数本の旗が立つでしょうし、近接攻撃を減衰させたりする効果の旗も出てくるんでしょうけど」

「そもそもあの旗の周りだと、モンスターが大幅強化されてるんだからな?」

「特に踏み込むと体が重くなる時は強く感じるよ」

「まぁ弱体化と強化は大体の場合セットですからね」


 私がログアウトしている寝ている間もメイン火力として動いてくれているエルルと、何度か踏み込んでみてダメなのを知っているサーニャはそう言うが、単に強いだけのモンスターならうちの子の敵じゃないしな……。

 キリというか上限が無いのは分かっているが、それでもちょっと急いで何とかしておきたいところだ。何故なら今月は6月。つまり。



 南の果てで、「真っ黒な昼」――極夜が見られるタイミングだ。

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