第1391話 42枚目:レイドボスの意地

 という訳でレイドボス本体戦だが、行動パターンが一緒だったので、豪雨までは割愛。豪雨が降って来たタイミングでもう一度エルルによる巨大な炎の剣が突き刺さるところまで同じだ。

 違うところといえば、あのスライムの雨の時に、時々バレーボールサイズの核を持った、一回り大きな個体が降って来た事ぐらいだろうか。他と比べると触れた物を溶かす力が強かったようだが、凍らされてから火属性の壁系魔法に放り込まれていたので、特に目立った被害は無かった。

 いやー、ギミックボスがギミックを解かれるとこうなるよねっていう例を見た気分だ。


「とはいえ、あの垂れ下がって来る動きが瀕死行動だとは思いませんでしたが!」


 そこまでを見て現在私がどこにいるかというと、街中央にある本神殿の屋根の上だ。ルイシャンは他の場所への攻撃に参加してもらっているので、現在は私1人である。

 あの雲から垂れ下がって来る動きは、ようやく見えた黒地に青い体力バーが1割を切ったところでしてくる行動だったらしい。火属性攻撃で縮むところまで一緒だが、前と違うのは、本神殿の真上に、本神殿そのものを丸ごと吞み込める太さの触手(?)が垂れ下がって来たって事だ。

 神の力で防ぐのが基本なのだが、街の方も守らなければならない以上「第一候補」が居てもかなり厳しいらしい。なので私が移動し、【調律領域】の低出力広範囲展開はそのまま、神殿が入らないように【王権領域】を展開して、ある種の盾になる事になった訳だな。切り離されたスライムと違って、本体に繋がる触手(?)なら領域スキルで防げるみたいだから。


「まぁタンクとしては何も間違っていないんですが。たぶんこの一番太いものの根元にあるあれが、本体の核でしょうし……!」


 真上を睨みつけるようにして見上げると、分厚い透明な触手(?)を通しているから多少は歪んで見えるものの、ビー玉サイズと同じ色味の結晶らしきものが見えていた。その向こうには満天の星空のようなものが見えているので、あそこにある空間の割れ目が最後の異常なんだろう。

 とはいえ、本体らしき結晶の形はウニのようにトゲトゲしている上、たわわに実った木の実のような形のものがついていた。それが時々外れてどこかへ漂っていくので、核の数が時間と共に回復しているのも間違いない。

 ちなみに私が防いでいる部分が一番本体に近いのは確かだが、例によって透明度が高いのか見え辛い部分もある。そして何かに触れると、そのまま穴を穿って行くんだそうだ。建物でも、本でも、地面でも関係なく。


「物を溶かすと相手の力が回復する以上、阻止するしかありませんからね……! 全く、最後の1割が本当に厄介な事で!」


 レイドボスをなめてかかるからだ、という謎の電波を感知した気もするが、圧倒的にそれよりもっと厄介な相手がいるんだったら、そっちを警戒するだろう、普通は。

 というかこっちとしても、レイドボスの癖にプレイヤーに好き放題利用されてるんじゃないと言いたい。出てくるタイミングが明らかに早い本体の行動とか自滅前提の儀式への参加とか。

 というかそもそも侵略者の癖に侵略先の存在の言葉を聞き入れてんじゃねーぞ。単なる力押しで世界征服は出来ませんってか? それで騙されて利用されてるんだったらザマないなぁ!


「……なんか、まとめて腹立ってきたな」


 つーかそもそも召喚者プレイヤーってこの世界の存在じゃないしな。中身が異世界の人間だし。いやまぁ、ゲームとして楽しむならそれも方法の1つだという事は、理解だけは出来るけどもだ。

 そもそもシャレにならないレベルで、ゲームという前提なら住民は別としても、少なくともプレイヤーには迷惑をかけているし。フラグのねじれを考えれば、運営にだって迷惑をかけている。

 それを、楽しんでいる。と、いうのは。


「悪役ロール、にしたって、限度があるだろ、っつー話だ……!」


 やっぱり人格破綻者か、性格がアウトって事だよな?

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