第1390話 42枚目:ねじれ解消

 後から聞いた話なのだが、あの巨大クラゲを叩きまくるのには、一応意味があったらしい。というのも、今までのパターン的に、赤地に緑色の体力バーが出現する相手は、本体の体力を削って出現しているものだったからだ。

 だから本体の再生力を上回るペースで叩き続ければ、その内本体の体力が一定ラインを割り込み、何か変化がある可能性がある、という予測があったとの事。

 ……まぁ、そっちが正規ルートの可能性もあるっちゃあるからなー。今までのパターンで行くと、本体をどうにかしないと無限湧きか時間切れか、もしくは被害が拡大するだけだったけど。


「で、無事干渉ポイントは見つかったんですか?」

「はい! どうやらここでようやく街の上空に話が来る予定だったようですね!」

「あぁなるほど、ここでようやく」


 つまり、あの全てを溶かす豪雨やスライムの雨は、本体が出てきてからの行動だった訳だ。特級戦力を含む全ての召喚者プレイヤーが連携して動かないとどうにもならないと思ったら。本当にあのゲテモノピエロは。

 まぁある意味行動パターンはある程度割れている。ついでに言うと、このままこの空間に留まって巨大クラゲを叩き続けていると、空間に閉じ込められて溶かされる可能性が高いんだそうだ。腹の中、で合っていたらしい。干渉の準備も大方できたとの事だし、引き上げ時だな。

 ちなみに本来の予定であれば、地下はむしろ神の力でしっかり守られている安全圏だった筈、との事。まぁそりゃそうだ。上に敵がいるんだから、下が安全地帯になるだろう。普通は。


「どこかの邪神の信徒が、それはもう思う存分に引っ掻き回してくれましたが」

「全くですね! 流石に今回ばかりは人員や資材の点でかなりのダメージが入ったと思いたいところです!」


 という訳で、最後にもう一発ルイシャンと一緒に特大の一撃を叩き込んでから撤退だ。空間の割れ目から図書街のある空間に戻り、空を見上げてみると……うん、不自然に薄雲がかかってるな。

 残り時間を確認すると、4時間弱ってところだった。思ったより残ってるな。もっとも、ここからレイドボスの本体、カジノ街の方で言う瓦礫の蛾を削り切らないといけない、と考えると、かなり厳しいには変わりない。

 とはいえ、火力が足りないとだけは言わないけど。私と「第二候補」が揃っている上に、うちの子が全員揃ってるんだ。少々デカいだけのスライムもといクラゲぐらい、削り切ってやる。


「と、言っている間に空の雲が厚みを増してきましたね」

「空間の割れ目の閉鎖を確認、予定通りです! それではちぃ姫さん、お願いします!」

「分かりました。スピンさんもご武運を」


 ちなみに私の仕事は、領域スキルを展開した状態で街を駆け回り、「第二候補」が切り分けた雲(スライム)を受け止めて街に被害を出さない事だ。そんな予定を立ててるって事は、行動パターンは同じとみていいんだな。


「行動パターンが同じなら、あの時のあれこれもダメージになってませんかね……」

「あははは私も切実にそう思いますが、とりあえずはフラグのねじれを解消できたことを喜ぶしかないかと!」


 つまり期待できないって事だな。知ってた。

 まぁでも流石に、あの垂れ下がってくる動きは邪神の信徒と儀式場ありきの動きだろうし、豪雨に至っては残り体力1割を切ってからの行動っぽいから、何とかなるだろう。一度は何とかできたんだし。


「さー、正真正銘、あとひと踏ん張りです。「第四候補」が地下もきっちり立て直してくれていますし、このまま勝って元時空で邪神の信徒を追撃しましょう」

「そうですね! 出来ればもうちょっと叩いておきたいですし、最前線に来てくれている召喚者プレイヤーの皆様の多くは例の協定に参加して頂いておりますので!」


 既にレイドボスがおまけになっているが、仕方ない。比較対象が悪かったと思って諦めてほしい。

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