第1389話 42枚目:本体再捜索
そこからしばらくすると、何故か私の方に守りを固めるように指示が来た。すっごく嫌な予感がしたので全力で正面への防御を重ねて衝撃に備えた結果、何が起こったか、というと。
「……釣り餌であるなら少々雑にやっても問題ない筈、というのは分かりますが……」
あの巨大クラゲが、真ん中から左右に割れた。何がとか誰がとかは言うまでもない。「第二候補」が、大技を放って文字通りぶった切ったのだろう。あの雲を切り分けた時と一緒だな。
私の張った防御にも相当な切れ込みが入ったが、クラゲを切った後だからかギリギリ耐えることが出来た。あっぶないな。私が退避してからって訳にもいかなかったんだろうけど。領域スキル的な意味で。
さて真っ二つになった巨大クラゲだが、そのまますごい音を立てて左右に倒れた。そこから大量のスライムの群れになったので、それをきっちり殲滅しておく。体力バーはスライムに変わった時点で3割を切っていて、スライムを倒すとさらに減っていき、殲滅完了で真っ赤になった。
「で、終わればいいんですが」
「まぁ終わりませんよね!」
そして体力バーが空気中に溶けるように消えて、一旦空間の中は空っぽになる。……なるだけで、崩れ始めたりもしなければ、システムメールも届かない。まぁ赤地に緑の体力バーなら当然か。
そのまま様子を見ていると、ドーム状の洞窟風になっている空間自体が揺れ始めた。それと同時に、中央の床に水たまりのようなものが出現。ボコボコと湧くように体積を増やしていったそれは、見る間に噴水のように伸びあがっていく。
天井付近まで伸びた噴水風のゼリーは内部にビー玉サイズの核を無数に含んでいて、そのまま巨大なクラゲの形を取った。そう、この空間に突入した時と全く同じ形だ。そしてアビリティが通ったのか、緑一色の体力バーが出現する。
「――[火の粉たりとて命を焼き尽くす炎よ来たれ]――」
うにょん、と、その無数にあって巨大な触手が動き出す、その直前に、
「――[レプリカ・レーヴァテイン]!!」
「ピュィィイイイイイッッ!!」
私の発動した巨大な炎の剣と、がっつりルイシャンが溜め時間をかけて準備した特大の雷が、同時にその傘へと突き刺さった。ちなみにルウはこの空間から退避済みだ。
「うわっ!? うわ、これはちょっと、確かに、結構痛いですね! ダメージにはなっていませんが!」
「規模を上げると範囲が広がるという事は、やっぱり多少は通ってるんでしょうか」
洞窟を模しているからか、最初のヒット音が盛大に響いた後、よく熱した鉄鍋に水滴を落とした時みたいな音を立てて燃え盛っている巨大クラゲ。触手をじたばたさせているが、勢いよく体力バーは緑から赤に変わっていっている。
その様子を見ながらスピンさんが教えてくれたが、どうやら攻撃が当たった瞬間に結構強い痛みが来たらしい。痛みというか、ビリビリするおもちゃの出力が大きめなやつを食らった感じだったようだ。
そうこうしている間に、傘に単体攻撃の魔法が突き刺さったからか、触手の端まで炎に包まれた巨大クラゲはしおれるように小さくなっていった。その炎が収まって消えると同時に、浮かんでいる体力バーが真っ赤になる。
「こっちの方が面倒がなくていいですね」
「いくら倒しても直接攻撃する程のダメージにはならない、という前提が無ければ、ですけどね!」
で、その体力バーも消えて静寂が来る。が、やはり洞窟を模した空間そのものに変化はないし、システムメールも来ない。あの巨大クラゲを叩き続けるのが最適解、ではないって事だな。
となるとどこか、あの巨大クラゲ以外にダメージを通すことが出来る場所がある、って事になるのだが。
「と、今度はエルルですね」
「派手に行きましたね!」
とか思っている間に巨大クラゲは再出現し、私から見て横方向からの斬撃で再び真っ二つになっていた。「第二候補」の時と違うのは、その斬撃が燃えていた事と、その火力で倒れきる前に燃え尽きたって事だな。
ここまで最速で巨大クラゲは倒された訳だが、それでも空間に変化がある訳でもない。ついでに言えば、巨大クラゲが再出現するまでの時間にも変化は無かった。
「しかし、内部から攻撃は通らないんですよね?」
「そうですね! なので現在、図書街の方を空間的に再探索しているところです! もちろん大神官さんにもこの情報は伝えられていますので、あちらも何か調べられているかと!」
今度はエルルの反対側から、巨人が火炎放射器を使ったような炎が巨大クラゲへと浴びせられた。すごいな。フリアドのドラゴンブレスは着弾点で爆発するビーム型だけど、あれはあれでブレスっぽい。
巨大クラゲは触手を集めて盾にしようとしているようだが、片っ端から触手が焼かれているのであまり防げていないようだ。もちろん体力バーはみるみる赤くなっていく。
このペースなら巨大クラゲの相手自体は問題ないな。……一応インベントリを確認したら、相当量の特殊金属インゴットが入っていたから、一般
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