第1392話 42枚目:レイドボス撃破

 ちなみに本体が見えているのに特大の一撃で焼き尽くさなかったのは、一定以上の規模の魔法に対するカウンター能力が生きていたからだ。街中央の本神殿を狙う触手(?)と本体「だけ」だったから周りを焼き払うのは問題ないとはいえ、上空にある空間の割れ目から姿を覗かせている本体まで届くとカウンターが発動する。

 もちろん、本の街である“採録にして承継”の神の本拠地ホームに大規模な炎が降って来たりしたら大惨事にしかならない。なのであんまり本神殿を狙う触手(?)へは攻撃が加えられなかったんだよな。

 だから私が領域スキルを展開して盾になる必要があったんだけど。なお周りに降りてくる触手(?)を攻撃しても大して体力は減らず、かといって上空に戦力を集中させると街に被害が出る上相手が回復するので、司令部はちょっと攻めあぐねていたらしい。


「だからって上空から全力でブレスを叩き込みますかね」

「反射されても街に入らなきゃいいんでしょ? じゃあ更に上から攻撃すればいいじゃないか」

「空間に罅が入るとそれはそれで危険だったんですが」


 ……という訳で、サーニャがやらかしゲフン反射覚悟で痛打を入れてくれたし、それを真似してルイシャンが外から雷を落としまくってくれたらしく、ギリギリ私が押し潰される前にレイドボスは討伐された。

 本体がゴリッと削れても触手(?)を垂らす動きを止めなかったのは、ここでひっこめると袋叩きになるだけだし、1本でも地上に届けばそこにあるものを溶かして回復するのが分かっていたからだろう。流石に垂れ下がっている根本が吹っ飛ばされると、本体から千切れて落ちてきたみたいだけど。

 ちなみにラストアタックは「第二候補」が持って行った。しかし超遠距離から核をぶった切るのはいいとして、その後本体と一番大きな触手(?)が消えずに降って来るとは思わなかったんだよな。


「万が一に備えて、自分に対するフルバフを掛けた上で魔法を待機させておいて良かったとか」

「お嬢、あれ確か、真上には撃てなかったよな?」

「えぇ。魔力操作で本体に対して刃を寝かせて受け止めて、待機状態の熱量で焼きましたからね」

「……あぁ、なるほど。途中で刃先の部分に相手が届いたから、発動扱いにしたのか」


 ちなみにこういう小技は、竜族部隊の人達に教えてもらっている。いつか鬼族の街に行った時、エルルが翼の風圧で矢の雨を叩き落した元ネタもこの人達らしい。私はサイズ的にちょっと無理だな、あれは。

 レイドボス報酬はカジノ街の時と一緒だったので割愛。うっかり自分の島で軸柱を出してしまった「第二候補」が大変な事になっていたらしいが、まぁ仕方ないな。情報はちゃんと集めようか、おじいちゃん(見た目&口調)。

 とはいえ、時間が時間なので私はすぐ島に戻ってログアウトだし、「第二候補」がわちゃわちゃしていたのは午前中にログインした時に聞いた。流石に午前5時とかには起きれないんだよなぁ。


「で、時間加速はどうなったんですかね、と」


 そのまま日曜日の午前中はお札やポーションの生産に費やし、イベント情報の更新を待ってみたが……実際に更新が入ったのは、お昼丁度だった。なんかフラグ調節でもしてたんだろうか。

 お昼ご飯を食べてからログイン前の情報収集で引っかかったので、そのまま読み進める。んーと、時間加速自体はそのままで、特殊ログイン時間である事も変わらないようだ。

 でも、空間異常が全て解消されている状態は変わらない。その加速中に何をするのかというと、どうやら神々が相談して、空間の歪みを消費する為の空間異常を作り、そこを攻略する事になるようだ。


「深度制限なし、制限時間は時間加速中いっぱい。巨大な木や石切り場がメインの場所になっていて、大型資源がたくさん手に入る……」


 大型資源っていうか、次のイベントで使う柱や軸柱が、だろ。まぁ分かってたことだけど。

 イベントを早めに走り切って何とか余裕を作れたからこそのボーナスタイムだろうが、それにしても、どういう防衛戦もしくは攻城戦になるんだろうな?

 地形的な順番で行けば、次に出てくるのは放棄された竜都の筈だし。……上空から見る限り、竜都自体は無事だったっぽいんだ。だから余計に分からないとも言うんだけど。


「ま、それは次のお知らせがくれば分かる話か」


 その資源回収は生産スキルを使ってもいいし、パンチングマシーン方式で手に入れる事も出来るらしい。そして今回はこっちの世界の神々が作ったって事で、突入制限は無しだ。

 もちろん全員で突入して、全力で資源を回収するとしよう。せっかくのボーナスタイムだし。

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