第1386話 42枚目:舞台突入
時間がない上に大詰めで、
攻略状況が進んでいた西側と北側で調節でもしてくれたのか、それとも東側と南側の
「……空間の割れ目はそのまま、スライムが出てこなくなった、と、いう事は……」
「はい! 大神官さんから全体連絡が来ました! 防衛戦は終了、ここからは相手の領域に突入しての攻撃ターンだそうです!」
「まぁ、でしょうね」
「ちぃ姫さんは街の中から領域スキルを引き上げ、突入先での力場的安全を確保して欲しいとの事です! 街の内部はここの神様と大神官さんで支えられる模様なので!」
「分かりました。後は内部の構造次第ですが、まぁどうせ空間の不思議で、どの方向から突入しても内部で合流できるようになっているんでしょう」
分断されていたら……まぁその時はその時かな。どこの方向でも先遣隊ぐらいは用意するだろうし、空間異常本体と違って出入りは出来る筈だし。
ばさり、と一度旗を振って【調律領域】をOFFにする。その状態で防壁の上から飛び降り、大門前に着地。通路を通るよりこっちの方が早い。この高さぐらいなら怪我なんてしようがないし。私も随分度胸がついたもんだな。
「まぁそれでも一応、最低限の戦力は残しておくように、と司令部から指示は来てますが!」
「当然の話ですね。内部と外部が分断される可能性もありますし、応援という名の予備戦力は必要です。交代要員という側面もありますし」
「姫さん! 大丈夫だからっていきなり飛び降りないで!?」
「時間が押してますし」
あとサーニャの場合、抱えるイコールお姫様抱っこだからなー。文字通り小脇に抱えるエルルが悪い意味で慣れちゃってるんだろうけど。いや、エルルは誰に対してもあんな感じか?
まぁそのエルルは北側にある空間の割れ目から突入するんだろうけど。さて、
私もルイシャンに乗せてもらって旗を掲げ、【調律領域】をとりあえず今いる全員が入る大きさに展開して、準備完了だ。
「随分と邪神の信徒に邪魔されましたが、大詰めです! ここまで同様、一気に削り切ってしまいましょう!」
「「「おー!!!」」」
なんかこういう皇女ムーブをすると、明らかにその後の戦闘ペースが上がるんだよな。やる気で動きが最適化されてるのか、それとも気持ちが実際にステータスに影響してるのかは分からないけど。とにかく、士気って大事だ。
ばさり、ともう一度旗を翻してから、突撃を指示して空間の割れ目へと飛び込む。そして同時に、【調律領域】の展開範囲を最大まで拡大する。合わせて範囲こそ狭めだが【王権領域】も重ねて展開して、自分の身を守ると同時に安全圏を作った。
空間の割れ目は、いつかイベントの残り時間を消費するというふざけんなレベルの大技を繰り出してきた「膿み殖える模造の生命」の時と同じ、夜空に見える何か、という感じだった。だから内部は同じか、それとも見えないだけのどっちかは分からなかった訳だが。
ばちゅんっ!!
私が突入した途端に、そんな音がかなりの大きさで鳴り響いた。周りを見ると……おっと。
「ははは、効率的とはいえ、出待ちされるとは何とも熱烈ですね」
「同時に空間の割れ目が閉じかけたのも確認、事前情報なしではどうにもなりませんね! 司令部に報告します!」
びっしり、【王権領域】の外側に、びっしりとゼリー状の物体が詰め込まれているようだった。ビー玉サイズの核も相当数確認できるが、有効打になりそうな大きさの核は見えない。
その向こうを透かして見る限り、どうやら中央に名前通りクラゲ型の本体があって、そこから伸ばした触手何本かで入り口を塞いでいるようだ。レイドボスが出待ちとかせこい事してんじゃないよ。もっとどんと待ち構えてろ、どんと。
「まぁそれならそれで対処すればいいだけですが。ひとまず戦闘可能領域を確保します! 各自、ステータスの変化に注意して下さい!」
こちらを領域スキルごと押し潰そうとしているのか、領域スキルの維持コストが上がってきている。だがまぁ、その程度で潰れるような回復力はしてないんだ、こっちは。
それに内部の状況さえ分かってしまえば、たぶん外から攻撃を叩き込んで入り口周辺を吹っ飛ばしてから突入、とかも出来るだろうし。勘の良い「第二候補」なら、突入前に一当てぐらいはしてる可能性がある。
ただ、こうして触手越しとはいえ本体が見えたんだ。さっさと袋叩きの状態に持って行くためにも、全力で領域スキルを展開するとしよう。
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