第1355話 42枚目:予想外

 とりあえずサーニャが出してくれた推測はカバーさんにメールで伝えておいて、領域スキルの展開と維持をしつつ降って来るスライムの空中迎撃を継続だ。まぁ。他のパターンとの合わせ技って可能性もあるしね。メインの核とサブの核があるとか。

 そこから街を回ってスライムを倒して回るチームが2度ほど戻ってきたところで私もタイムアップである。入り口周辺と外との連絡に不安が無いとは言わないが、ログイン制限はどうにもならない。

 という事で全員揃って街中央の本神殿へと移動。流石にまだあそこに残ってる人はいない……筈だ。たぶん。


「まぁ、土曜日はログイン時間を全部使える訳だけど……」


 そのログインのタイミングも司令部と(カバーさんが)相談の上だし、私がログアウトしていて寝ていてもうちの子は皆動けるからな。それに本神殿に「第一候補」が儀式場を作ってくれていて、そこに「響鳴する皇竜の旗槍」を立ててきたから、力場的な安全は間違いなく確保されている。

 ログアウトまでに聞いた話と言うか分かった情報では、とりあえずあのスライムによって本が被害を受けるという事は無かったらしい。ただ本や本棚、建物にスライムが攻撃するとやはり神の力が減ってしまうらしく、やっぱりスライムを倒して回る必要はあったようだ。

 とはいえ、あまり雲を減らし過ぎて次の段階に進んでしまうのはあまり良くない。何せ私も「第一候補」もログアウト中で、「第二候補」もそれなりにログアウト時間が迫っていたからね。


「だから、雲に直接攻撃をする訳にもいかず、しばらくはスライムをちまちまと倒し続けるしかない、と」


 ログイン時間の合計が1日9時間まで、連続してログイン出来るのは3時間まで、というのは変わらないからなー。仕方ない。私も寝不足だとちゃんと動ける自信が無いし。

 という事でログアウトして就寝。朝はいつも通りに起きて、朝のルーチンと言う日常を過ごしてから指定の時間にログインだ。

 無事本神殿にある客室の一つを借りられたので、個人のスペースは確保されている。神官の人達は部屋の狭さに恐縮していたけど、大丈夫だ問題ない。非常時な上、中身が庶民だからね。


「さて、特に動きは無いと思いますが……」


 窓が無いので外は見れないが、気配的にはそんなに慌ててる感じはしないな。まぁ召喚者プレイヤーの人数も少ないし特級戦力もいない状態なんだから、物事をあまり動かさず現状維持に努めている筈だし。

 ログインしてすぐ、いつも通りに司令部更新のスレッドとクランメンバー専用掲示板をチェック。むしろ動きがあったら逆にダメな筈だから、特段目立つ情報は……無いな。


「無事現状維持は出来たようですね。何か仕掛けてくるかとも思いましたが、あちらも中身は人間の筈ですし」


 召喚者プレイヤーである以上ログイン制限は変わらないし、住民の仲間がいるとしても人数はこちらが圧倒的に上だ。確かに不利な状態ではあるが、あっちだって万全ではない。それがどう転ぶかと思ったが、ここで賭けには出なかったらしいな。

 予定表によれば、私のログインより少し早めに「第一候補」はログインしている筈だ。空間異常の残り時間も半分を切った訳だし、そろそろ動くとも聞いている。具体的に何をするかは分からないけど。


「あ、姫さん起きた?」

「はい。おはようございますサーニャ」


 何も無かったという確認を終えて自分の格好をチェックし、一応魔法でざっくり綺麗にしたところでノックの音。応答すると、サーニャが顔を覗かせた。

 そしていつもならここでニーアさんも一緒で、私の髪を梳かしてくれるのだが。


「ちょっと今緊急事態でね。警備を見直してるんだ」

「何があったんです?」


 あれ? と思ったのが顔に出たのか、あるいは同族補正で読み取られたか、サーニャが困った顔でそう伝えてきた。緊急事態? 掲示板にはそんなこと書いてなかったけどな。

 いずれにせよ、このタイミングでニーアさんも警備側に回らないといけない事態が発生した、っていうのは良くない。……にしては、サーニャの困り方が深刻にはちょっと遠いな。何があったの。

 うーん、と、ちょっと口ごもったサーニャだったが、恐らく私は呼ばれていたのだろう。割とあっさり伝えてくれた。


「……神を目覚めさせる儀式をしたら、あの御使族の人が、2人になったんだよね。どっちも本物だって主張してる上に、【鑑定】スキルでも区別がつかないらしくって、割と混乱してる」


 …………どういう事?

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