第1354話 42枚目:対応中と推測

 そう時間が経たないうちに眷属さん達の避難は完了して、ぐるっと街を回ってスライムを掃討する召喚者プレイヤーのチームが結成された。予想外だったのは、私の待機が継続だったって事だ。

 司令部曰く、スライムが降って来て大変ではあるものの、力場的にどうこうされている訳ではない。だから領域スキルによる安全地帯は動かさない、という事のようだ。


「それでもエルルには出動がかかるんですね。まぁ確かに影響を受けない『勇者』ではありますが」

「それ以前にお嬢の護衛だとは言ってるんだがな」


 しかし戦力が必要なのも確かなので、ここで私の近くにいる役目はサーニャにバトンタッチだ。それプラス本神殿で待機している神官の人達の許可が出て、上空狙いかつオーバーキルなら、私も攻撃していい事になった。

 もちろん「第二候補」は既に街を回ってスライムを攻撃する方に参加しているが、その前に(眷属さん達が避難している間に)本神殿上空と、入り口前上空の雲は切り抜いて焼き払っているので、私も安全だ。


「まぁ上に空気の足場を設置して、火属性の壁系魔法を乗せておけばいいんですけど」

「対処できるって言っても、やっぱり脅威は少ない方がいいからね。こうやってスライムとして降って来るって事は、何ならこっちから手を出さなくても大きなスライムとして降って来るかも知れないって事だし」

「まぁそれはそうなんですけど」


 珍しいサーニャの推測だが、何一つ否定できない。流石に神の力なしで街中に巨大スライム出現はちょっとシャレにならないからな。全力で殴るのはもうちょっと対処の方法か、せめて場所を変える方法を見つけてからだ。

 その前に街に被害が出たり、建物と一体化している本棚及びそこに収められている本に被害が出てはいけない。だから街を回ってスライムを倒して回るチームが結成されたんだし。

 という事で炎の槍と矢を交互に連射して、雲から降って来るスライムを減らしていると、ふとサーニャが首を傾げた。


「それにしても、あの雲はスライムでほぼ確定なんだよね? 支えがどこにもないっていうのも気になるけど、あの大きさだと核も相応に大きい筈なんだけどな」

「まぁ、密度はかなり下がっているでしょうから、実際スライムの形に戻ったらもっと小さくなるでしょうけどね」

「だとしてもだよ。それに、流石に核まで浮いてる訳じゃないよね? 流石にあの大きなを支えられる核は無理があるよ。下手したらボクぐらいはあると思う」

「……サーニャぐらい、というと、本来の姿の?」

「もちろん」


 なお、サーニャも【人化】を解くとかなりでっかい。流石に進化したエルルとの差は出てきているが、それでも十分なサイズだ。

 それぐらいある核。……雲みたいに密度を下げているとしても、確かに相応の大きさがあるし、それぐらいにはなる、のか?


「流石に大きくありません?」

「そうかなぁ。だって雨が止んだ後、また雲が出てきたからさ。たぶん今見えてる範囲でも、まだ「一部」だと思うよ。今で半分を超えていたとしても相当な大きさだし、それぐらいはあると思うけどな」

「なるほど……」


 うーん。まぁレイドボスとしてみるのなら、それぐらいにはなるか。なるか? いや弱点もしくは当たり判定は大きい方が助かるけど。

 しかしこちらが助かるって事は相手は困るって事だ。仮にもレイドボス、それもあの檻と鎖のやつに対応する難易度で、そんな分かりやすくてやりやすい弱点があるかっていうと……ちょっと弱い、と思うのは、毒されてるんだろうなぁ。


「……仮にそれぐらいの大きさがあるとして。その場合、その核がどういう風になっていたらサーニャは一番嫌ですか?」

「スライムの核の形で一番嫌なやつ? んー、そうだなぁ」


 何か今日のサーニャはとても冴えてるっぽいので、一応話題を振ってみる。

 うーん、としばらく考えたサーニャは、何か思いついた、あるいは思い出すことが出来たようだ。


「あー、ボクはあれが一番嫌だな。いつだったか兄様達と一緒に、大規模発生したスライムの群れを駆除しに行ったんだけどさー。小さいスライムがたくさん集まって、核の大きさそのままなのにものすごく巨大になったやつ!」

「小さいスライムがたくさん、ですか?」

「そうそう。ボクはどういう理由かよく分からなかったんだけど、核がどれか1つでも残ってたら合体直後の大きさまで再生を続けてね。もちろん核の数を減らすと動きも雑になっていったから、途中からは作業だったよ。でもあれは嫌だな。大きさの割に核が小さいから、本体の中を核が逃げ回るし!」


 なるほど。そういう可能性もある訳だな。というかむしろ、今回はそれが正解では?

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