第1308話 42枚目:状況進行

 一度上から檻が降って来て作業が中断させられたようだが、問題なくモンスター出現の魔法陣は解除された。これが正規ルートなのかは分からないが、一番手近にどうにかできるところではある。

 解除作業の最後に降ってきた檻は無事回避できたし、最低限の防衛戦をしながらも攻撃の手を止めて様子見だ。詠唱してると、次の詠唱までには若干タイムラグが出るから。

 ……本来魔法使いの戦い方にそんな即応性はいらない筈なんだが、フリアドだからなぁ。実際出来るし、出来る以上は必要になる場面があるという……。


「おかげでステータス補正ありきとはいえ、高速戦闘の出来る魔法使いが増えましたよね」


 高速戦闘は必須技能になりがち、とはいえなぁ……。と、そんな高速戦闘をステータス補正のゴリ押しでなんとかついて行っている私が言っても何の説得力も無いのだが。

 さて魔法陣を解除した召喚者プレイヤー達が防衛陣地へ戻り、檻もその場に残っていたモンスターを回収して上へと戻っていった。イベントページにまたモンスターが追加されているだろうが、とりあえずスルーだ。

 ギィィ、と軋むような音が聞こえる。魔法陣の解除をしようとすると落ちてきた檻の前兆より音自体は小さいが、その音の長さが長いし何より複数聞こえる。まぁ私がいる場所からは見えないんだけ


「っ!?」


 闘技場の中に、人間1人がちょうどすっぽり収まるサイズの鳥籠がいくつも突き立って行く。その光景にワンテンポ遅れて、「外側に」同じような鳥籠が結構な勢いで飛んできた。

 私は見てから回避したし、防壁に予備戦力として残っていた召喚者プレイヤーの大半も避けただろう。それでも若干名は捕まってしまったようだ。なんだこれ、外まで射程内とか聞いてないんだが!?

 こちらも天辺部分に繋がっている鎖を辿ってみると、闘技場の壁の上部をちょっと削っている。上から来たのか。そうか、この闘技場天井が無いタイプだったな。


「――っの、」


 とか思っている間に、闘技場内部の鳥籠が回収され始めた。とはいえ捕まった全員を助け出すには時間が足りない、檻は攻撃すればダメージが入ると言っても助けられて精々1人か2人。直接攻撃では間に合わない。

 じゃあどうする。同じく詠唱している暇はないし下手に規模の大きな魔法を使えば捕まった人にもダメージが通る。だから魔法と直接攻撃以外、できればこの場から動かなくてもあの鎖の巻き上げだけでも阻止出来そうな方法。火力もあればなお良し。

 さて今この場に手が届く範囲でそんな都合のいい方法があるかというと。



 あるじゃないか。

 都合よく鎖の付いた鳥籠型の檻重量物が。



「ギミックと不意打ちは!」


 横に渡す形になっている金属棒部分を蹴り上げると、ステータスのお陰かあっさりと檻は床から離れる。その床部分は3分の1ほど、縦になっている金属棒の先からにじみ出るように構成されつつあるところだった。

 浮いた檻を掴み直して闘技場の外側へと思い切り振ると、思ったよりも勢いよく鎖がこちらへと出てきた。目算で大体必要な長さが出てきたところで片手を檻から放し、鎖の一部を掴む。

 そして鳥籠を掴んだ方の手で、思いきり、召喚者プレイヤーが捕まっている檻の上へと投げ飛ばした。


「別ものだって言うんですよ!!」


 飛んでいった空の檻が人を捕まえている檻の上を通過したところで、掴んだままの鎖を振る。当然空の檻に繋がる鎖は人を捕まえている檻に繋がる鎖へ引っかかり、ぎゃりぎゃりと酷くこすれる音を立てた。

 それはすぐに、バギィン!! という砕ける音に変わる。まぁ同じ硬さの物をぶつければ順当に砕けるよな。なおここまで1秒弱だ。ステータスの暴力ばんざいだな。

 とりあえず次は反対側で捕まったのが見えた人だ。周りの人も呆気に取られているが、まぁその内立ち直った司令部辺りから必要な場所の通知が来るか、筋力が高い召喚者プレイヤーが真似するだろう。たぶん。

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