第1307話 42枚目:細かい制限
早速司令部はモンスターを購入してみたらしく、出てきたのは不思議な力で拘束されていたものの、元気に敵対してくる野良状態のモンスターだったようだ。……拘束しているだけマシと言うべきか。
ともかく、交換についてはスルーという事になり、檻の動きには厳重に注意するように、という通達が改めてなされた。司令部は魔法陣の解析を順調に進めているらしく、今は前衛に防御を任せて、遠距離攻撃で観客席の上の方にある巨大な檻を攻撃している。
観測班曰く、ダメージは通っている上に回復能力は無いらしいので、このまま攻撃し続ければ削り切る事自体は出来そう、との事だった。
「まぁいくらか減らしたところで、まだまだあるし……、という事のような気がしなくもないですけど」
それでもレイドボスへの攻撃ではある。削りダメージだったとしても、殴れるところから殴っておくべきだろう。檻が壊せたら、それはそれで何か動きがあるだろうし。無くてもモンスターの湧き速度が落ちるのなら普通に良い事だ。
流石にモンスターを倒せないと詰むって事も無いだろうし、1つ壊したぐらいで落ちる湧きスピードは知れている。インベントリに入るとは言っても、コインは重量物だからな。
だから入り口を背にする形で防衛陣地を構築してあるんだし、実は闘技場を囲んでいる防壁は、コインを内部に入れることが出来る形のまま建設されている。コイン集積所は兼ねられたままだ。
「それでも結構な勢いでコインが運び込まれているから、帳簿を付けるチームと運び込むチームが大忙しなんですよね」
今は適宜交代も出来るとはいえ、重量制限で動けなくなると大変だからな。本人の重量には影響しないと言ったって、誰かに運んでもらうとなるとやっぱり手が取られるから。
まぁ私のお仕事は単体攻撃をたくさん撃つ魔法を属性別で順番に撃ち続けて、魔法式のマシンガンになる事なんだけど。いやーおかげで結構なコインが手に入るんだ。インベントリが大容量で良かったよね。
無駄打ちをなくすために程よく集中が必要なのもあって、割とスキル経験値って意味の鍛練的にもおいしい。単体攻撃をたくさん撃っているだけで範囲攻撃ではないから、司令部の指示に従って、魔法陣を部分的に出すのがメインとなっている。
「ま、中央からくるモンスターの密度を下げるという意味もあるんでしょうけど」
私の魔法は射程が長いからな。ステータスの暴力に加えて影響度が高いから。
そんな感じで後方からの援護射撃に徹していると、司令部からの指示が変わった。ん? 今度は観客席の縁を狙えって? いや確かに、見えてる範囲は届く状態だから、見えない壁がある辺りなら狙えなくはないけど。
何故だ。と思ったら、どうやら魔法陣の解析が終わったらしい。遠距離からの単体攻撃を中央に集中させて、少数精鋭の
「まぁ流石に全員分は補えませんが、一部でも密度が下がればやりようはある、と」
素直に狙いを変更し、指定された角度の観客席の縁を狙っていく。……あっちを狙うんなら普通に広範囲攻撃をした方がいいんじゃないか、とも思ったのだが、どうやらそれはダメなようだ。
何故かというと、この闘技場はこの街を聖地とする“偶然にして運命”の神の力によって構築されたものであり、闘技場へのダメージはあの神の力を削る事になるんだそうだ。
せっかく捧げものやらここまでの行動やらで回復させた力を削るのはよろしくない上、元凶であるレイドボスががっつりと影響を及ぼせるだろう状態になっている。なので出来るだけ闘技場にダメージは与えない方向で攻略する、という事になっているらしい。
「だからエルルも大技を使ってない訳ですね」
きっと真上に撃ってもかなりのダメージが入るだろうからな。ギミックボスに力業は悪手、というのもあって、それで大技が実質封印されているような状態なんだろう。モンスターに直撃すれば周りへの影響が出ない、単体対象の魔法が推奨される訳だ。
「戻ったら、カジノというか賭け事の危険性を積極的に広めていきましょう。麻薬はこちらにもあるようですし」
まぁ、理解する事と納得する事と、ムカつくかムカつかないかは別の話なんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます