第1304話 42枚目:内部確認

 どうやら私から見れば闘技場の一番奥にある元コイン集積場所の防衛戦線にも、その背にしていた入り口から応援と補給が届いたようだ。全方向からの突入に一歩遅れる形で、攻撃へと転じたのが見えた。

 観客席から降って来るモンスターをかき分けるようにして突入した前衛の仕事は、まず入り口周辺の安全確保と防衛ラインの構築、そしてそれを維持しつつ、観客席への突入ルートを確保する事だ。

 本来なら観客席に行くには、観客席へ向かう専用の入り口を通る必要がある。だが今は観客席に向かう為の入り口は無くなっているし、観客席と闘技場のメインとなる広い中央とが行き来できるのは既に分かっている事だ。


「まぁこうなった以上、専用の入り口が残っていたら、そちらの防衛が大変だったでしょうけど。今でも防壁が準備出来ていたから初手の対応が出来たんですし」


 今開いている入り口の扉は闘技場全体の大きさに合わせたサイズなので、戦っている前衛の頭の上を通り越して魔法を始めとした遠距離攻撃が普通に通る。流石に真上は見えないが、観客席からモンスターの群れが滝みたいに落ちてくるのは見えるんだよな。

 それ以外に、そのまま普通に中央から湧いて出てもいるらしく、内部はびっしりモンスターで埋まっていると言えるだろう。うーん、大技で一掃したい。が、ギミックボス相手に力業をすると何が起こるか分からないから我慢だ。

 後は、その上にいるというギミックレイドボスの姿がどんなもんかだな。檻って聞いた時点で私は突入する気は無いが、どんな形かは普通に気になる。……ので、司令部のイベント用スレッドを確認してみた。


「あー、なるほど。……檻というか、鳥籠というか……むしろ鎖でできた蜘蛛の巣的な?」


 そこにはばっちり、何枚かのスクリーンショットに分けられたレイドボスの画像が貼り付けてあった。その全体的な印象としては、さっきの言葉通りだ。

 よく見る平面の方じゃなくて、ちょっと立体的な奴だな。その中に色んな檻が釣り下がっていたり絡まっていたりする。檻のサイズも大小様々だ。しいて言うなら中央に近い程大きい檻が多い感じか。

 そして端っこは、というと、観客席を派手に破壊して巨大な檻が半分突き刺さっていた。うわぁ。


「あぁ。それでこの、巨大な檻からモンスターが湧いてるんですね。湧き方を見る限り、この周囲にももう少し小さい檻が転がってる感じがしますし」


 その、柱もしくは足場みたいな巨大な檻は入り口の数と一緒らしい。入り口同士の間にあたる位置に設置というか、落下してきたんだそうだ。

 そして今の状況から、上の方にある檻もモンスターを召喚することが出来るのはまず間違いないだろう、とみられている。もちろん他にも効果はあるだろうが、とりあえずあの観客席に落ちて……埋まって? いる檻を調査してからだな。

 とか私がちょっとよそ見をしている間に、もともと防御態勢が整っていた防衛陣地から観客席へ乗り込む準備が出来たらしい。あー、もう土属性の壁系魔法を高さを調節して並べて、大きな階段にしたのか。


「まぁ当然ながらその階段はモンスターも利用する訳ですけど。……って、周りのモンスターも飛び降りずにわざわざ階段を使ってますね?」


 流石に飛び降りるのは怖かったんだろうか。かなり高さあるもんな。落下ダメージでいくらかは勝手に倒れてたりしたんだろうか。

 まぁ足場がしっかりしていればモンスターの群れをかき分けながらも進めるのが最前線の召喚者プレイヤーだ。今のところ、竜都の大陸に出てきた奴らみたいな厄介な特性は無いみたいだし、単純に戦うだけなら火力は十分だからな。

 なので矢印みたいな形で階段を登っていった召喚者プレイヤーの集団は、あっという間に観客席に到着し、


「えっ」


 ……見えない壁に、ぶつかった。

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