第1305話 42枚目:調査戦闘

 見えない壁にぶつかった召喚者プレイヤーは、先頭を切って進んでいた為に結構な勢いだった。まして階段を登った先での不意打ちだ。あれは避けれないし分からないだろ。

 しかし流石最前線を張る召喚者プレイヤー達というべきか、ひっくり返りかけたその召喚者プレイヤーを左右の2人が支え、後ろに続いて補佐していた召喚者プレイヤーが素早く前に出て隙を埋める事で即座に元の態勢に戻っていた。

 そこからしばらく彼らは、推定見えない壁があるだろう場所に向かって攻撃をしてみたり体当たりをしてみたりして、一旦階段を下りて防衛ラインに戻っていった。うーん、行動が的確。


「魔法や弓矢による遠距離攻撃はもちろん、剣を振っても手が入らない限りは攻撃できてましたね。ただしそれが体の一部であれば、【格闘】系のスキルでも止められる……」


 さて問題は、突然現れた、あるいは今の今まで全く確認できなかった見えない壁だ。あれをどうにかしない限りレイドボスにまともなダメージが入らないのは確定だろう。流石ギミックボスだな。本当に面倒な。

 私は自前の視力でその検証というか確認の様子を見ていたが、司令部もすぐ報告によって同じ情報を得ただろう。実際そこから、観客席に登ろうとする動きはいったん止まり、見えない壁に対する色んなアプローチが試されていたからな。

 遠距離攻撃は先ほどの確認通り、モンスターを掴んで投げ飛ばすのは、その勢いが一定以上だったり、時限式の爆発する魔法が掛けられていたりすると透過するらしい。しかしそれ以外だと、見えない壁にぶつかって止まるのが見えた。んん?


「……もしかしなくても、「攻撃」という判定になっていない場合はモンスターでも通れないって事でしょうか。という事は、もしかしなくても、最初からずっとそこにあった可能性が、ある?」


 確かに、エルルとフライリーさんと一緒に観客席に突入した時は、観客席から降りてから登りなおしたりはしてなかったけども。見えない壁というか、一方通行の壁か? 攻撃通ってるんだったら意味がない気もするが。

 もしくは、前衛に任せっきりにしてないで、遠距離攻撃を主とする後衛も働けって事かな。闘技場の広さの分だけ観客席も広いが、それでもちゃんと近づいてから撃てば届くだろう。


「どこかに解除のギミックがある可能性もありますし……外に出ている召喚者プレイヤーを内部に呼び戻すものである可能性もありますね。もうちょっとシンプルに出来なかったんでしょうか」


 ついでに言えば、現在は主に魔法火力と射程において活躍している特級戦力わたしを釣り出す、もとい参戦させるという可能性もあるんだよな。あるいはその全部かも知れないっていうのが更にややこしい。

 とりあえず司令部は可能な範囲でモンスターを叩き返したり、攻撃魔法を撃ち込んだりと、今の防衛状態のまま可能な範囲で観客席へ攻撃するようにという指示を出したらしい。魔法が観客席へと飛んで行っている。

 まぁ周りからくるモンスターの圧が緩めば、中央から湧いているモンスターに対処できるからな。そこにギミックがあるって可能性もあるから。


「本当にややこしいですね。もうちょっと攻略手順ないし順序の正解を分かりやすくしてほしいものなんですけど」


 具体的にはヒントが足りない。いつもの情報の出し方下手過ぎ案件だな。流石にこの状況で調査不足って事は無いだろうし。というか、どこに調べられる場所があるんだよって話だし。


「上空を覆うようにして沈黙している檻と鎖の群れに注意しつつ、動ける範囲で動いてみるしかないんですが……」


 やっぱりあの闘技場の中央、モンスターが湧いてきてる辺りぐらいは大規模魔法で薙ぎ払っちゃダメかな。どうせすぐ湧きなおしたモンスターで埋まるんだろうし、曇った窓を拭くノリで一瞬だけ綺麗にするのはダメか?

 ……万が一反射能力を持ってたり、もしくは魔法を吸収してモンスター召喚のエネルギーに変えられたら最悪詰む。そうだね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る