第1303話 42枚目:闘技場内部
どっ、と溢れてくるモンスター。それに対して、
「速度優先、魔法攻撃開始!」
推定司令部の人からの指示が響くなり、主に防壁の上で待機していた
そしてそんな威力が別物な魔法はきっちりその効果範囲が被らない位置に叩き込まれているので、間を別の魔法が埋める形になる。つまりは割と理想的な面攻撃になってるって訳だ。
まぁ近寄らせないのは基本だよね。中には爆発を起こして謎の土煙が上がる仕様の魔法も混ざっていたが、風属性の魔法も混ざっている為視界に問題はない。
「中と繋がったのはいいけど、あっちもすごい事になってるなぁ。あ、よく召喚者が喚び出されてた入り口を背にして防御陣形を組んでるみたいだね」
再度の詠唱中なので私は返事が出来ないのだが、サーニャが開いた扉の向こうを見て状況を確認してくれている。ふむ。まぁ防御陣形の場所は予想通りだったけど……それって本来、コインの集積場所だったんじゃないか?
何より私とサーニャがいるのは、その防御陣形のある場所とは反対側だ。そこからまっすぐ見えてるって事は、つまり中央にあったあの円形の雛壇が無くなってるって事だ。
まぁ何か変化があるとは思ってたけどね。と思ったところで司令部の人から第二射の指示。再び多数の魔法が叩き込まれる。ちょっととはいえ詠唱する時間があったから、威力と範囲が跳ね上がってるな。
「司令部から連絡、雛壇は巨大な檻を組み合わせた形のモンスターに変化して上空へ飛びあがったとの目撃報告があるそうです! 内部に突入する際は、上空及び観客席に十分注意をしてください!」
「うわー、面倒な事になってそう。まぁモンスターが観客席から溢れて落ちてきてるみたいな感じで集団になってるし、ここから見えないだけで、上に何かはあるだろうと思ったけど」
次の斉射と共に前衛は突入をお願いします! との指示についで、そんな情報が届けられた。サーニャが素直な感想を零しているが、私も同意見だよ。何でそう面倒な方向にいくのかなほんと。
しかし、巨大な檻を組み合わせた形のモンスター、ねぇ。それってもしかしなくてもあれだよな。
「食らうと強制的に捕まえられて「景品」にされる攻撃がありそうですね。サーニャ、重々注意してください」
「はーい。というか、それは姫さんもだよ?」
「私はたぶん、ここから援護射撃を続ける事になりそうですから」
「それなら安心だ」
ギミックボスである事はほぼ確定しているし、言っては何だが私の価値は値段に換算すると恐ろしい事になるだろう。正直、捕まるだけで詰む可能性が高い。だから流石に司令部も、そんな可能性は回避しようとするだろう。
なお価値だけで言えばエルルも相当なのは当然だが、エルルは逆に、エルルでどうにもならなければどうしようもない、という戦闘力的な意味での信頼がある。サーニャもどっちかというとそっちだから、突入組に数えられているんだろうし。
それにフリアドの場合、必中攻撃というのはほぼない。もちろん狭い場所での広範囲攻撃とかは必中みたいなものだが、相殺するなり術者を先に倒すなり、何とかすれば意外と回避できたりするのだ。『自由』がテーマなので。
「とはいえ、ギミックボス相手ですからね……」
第三射の号令と共に、短く会話してる間も【無音詠唱】で詠唱を進めて待機させておいた魔法を、出来るだけ奥の方へと飛ばす。周りと威力を合わせないといけない分だけ喋る余裕があったともいう。
とりあえずは殴ってみないとどうしようもないし、その為にはこのモンスターの群れを一時的にでもどうにかしないといけないからな。……また闘技場の内外が空間的に遮断される、とかも流石に無いだろうし。
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