第1293話 42枚目:ボーナス回収

 さて、【鑑定】系スキルによれば「ジャイアント・ボーナス・バルーンドール」というそのまんまな名前のモンスターだったが、どうやらあのコインが溢れ出るのは、実は特殊な挙動じゃなかったらしい、という事が分かった。

 何故かというと、遠距離から攻撃してコインの山にしよう、と主に上半身を狙って攻撃が飛んでいったのだが、命中した直後に攻撃した人たちがその場に崩れ落ちてしまったからだ。

 大量に溢れ出たコインと、それをトリガーとして出現したモンスターを前線が処理している間に崩れ落ちて動けなくなった召喚者プレイヤーを後ろに下げたのだが、その理由というのが、インベントリの重量超過だったんだよね。


「なるほど。まずインベントリに入って、重量超過してもなお入らなかった分がその場にばら撒かれる。確かこれは全ての戦闘で共通の仕様でしたね」

「数十枚ならともかく、何百枚とか何千枚になると、流石に兵器並みの重量になりますもんね、このコイン」


 という訳で、まず間違いなく桁外れの容量があるインベントリを持つ私が遠距離から攻撃してみた。何故って、ほら。インベントリは通常筋力と魔力で最大重量と枠の数が決定されるんだけど、私は【格納】についた神の祝福ギフトのお陰で参照先が「全ステータス」になってるから。

 種族特性として平均的に上がっていくステータスである以上、同じステータスだったとしても3倍の最大重量と枠がある事になる。これが能力的なステータスだけではなく、信仰値まで含むんなら更に倍率ドンだし。


「っと、うわ、私で結構ずっしり来るって相当ですね」

「ちぃ姫さんでそれなら他は誰も耐えられないんじゃ……あぁいえ、エルルさんとサーニャさんなら可能かも知れませんけど」


 まぁそんな私で、一撃で行動不能、とは言わないが、結構重量制限ギリギリになったから、相当なんだよな。インベントリに元々色々入ってるっていうのも無くは無いとはいえ。

 私がいるのはもちろん後方なので、インベントリに全てコインが入った事もあり、モンスターの追加は無い。なので更に後ろの司令部まで下がって、ボーナス人形に攻撃した分のコインを預けてきた。

 そこからしばらく司令部と攻撃位置の往復だ。どうやらあのボーナス人形、放っておくと円形の雛壇に近づいていこうとするみたいだから。


「近づいて何がしたいんでしょうね?」

「直接コインを降らせるとかでしょうか。一応ボーナスって書いてますし」

「普通に即死級の範囲攻撃では?」

「モンスターですからね」


 ちなみにそうこうしている間にサーニャが攻撃してみたらしいんだが、ギリギリ重量超過してしまったようだ。まぁギリギリだったので、新しくモンスターが湧いたり集中攻撃されたりはしなかったみたいだけど。

 インベントリの重量超過によるペナルティは本人の体重に反映されないので、召喚者プレイヤーによる担架で後方というか司令部のところに運ばれてきていた。


「行けるかと思ったんだよ! ボクだって毎日鍛えてるんだし!」

「ギリギリアウトでしたね」


 怪我もしてないのに! と本人は大変悔しそうだったが、その結果を見て他の前線にいる召喚者プレイヤーが手出しの気配を一切なくしたらしいので、ある意味ファインプレーだったようだ。……気配はあったのか。手出しの。

 どうやら「ボーナス!」という文字列にしか当たり判定はないらしいが、攻撃が一度当たった部分は傷のままらしい上に見た目通りしぼんでいるので、手足が完全にしぼんでしまえば移動はだいぶ難しくなるはずだ、という司令部の予想で、せっせと手足を狙って魔法を撃っていると、突然、壮麗なファンファーレが鳴り響いた。

 ついで、ジャラララララ!! という音がしているので視界の端に円形の雛壇全体を映している中継動画を表示する。すると案の定、あの「ジャックポットボーナス」の看板から、滝のようにコインが流れ出していた。


「……ゲームの筐体もだいぶ巻き込まれているように見えるんですけど、大丈夫じゃないですね?」

「看板が回るのは止まってませんから、まんべんなく巻き込まれてますね。ゲームを攻略していた人たちは素早く撤退したみたいなので、無事らしいですよ」


 派手と言うべきか、雑と言うべきか。ただまぁ筐体が巻き込まれてる、むしろ埋まってるって事は見えなくなってるって事だから、この間に商品であるコインの補充とかが行われてるんだろう。

 しかし誰が当てたのか分からないが、どう考えたって争いになる方式だな。もちろん周りにいるモンスターの圧もすごい事になってるし。というか、一部抜かれかけてないか?

 まぁ、交換用のコインにも反応して出現しているんなら妥当なんだけど。しかしこれは、回収するだけで一苦労だな。

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