第1291話 42枚目:チャレンジ経過

 気のせいか、ジャリンジャリンジャリンとコインが積みあがるような音が聞こえる気がする。たぶん「ジャックポットボーナス」の数字がどんどん上がっていくからだろうけど。

 「幸運」を上げる使い捨てアクセサリ生産は材料の関係で一旦お休みとなり、今は待機という名のおやつ休憩だ。前線の様子を動画で見ながらとはいえ、だいぶのんびりしてるな。

 どうやら当たりはそこそこ出ているものの、交換用のコインはインベントリにしまえない。そして交換用のコインを持って円形の雛壇から離れようとするとモンスターが集中攻撃してくるので、結構大変なようだ。


「まぁ集中攻撃は分かるんですけどね。リソースを持って行かれてる訳ですし」

「ゲームセンターの運営者としては最低通り越して外道ですけどね」


 ちなみにソフィーナさんはその魔法火力で撤退者の支援に行っている。今は司令部の指示で、運搬用のチームを結成してゲームを攻略するチームとは別に運用しているようだ。

 もちろん回収したコインは誰の物だったかきちんと管理されている。「幸運」を上げるアクセサリ代や元手となるコインの支払いなどは別で交渉する事になっているから、とりあえずそのまま返される筈だ。

 モンスターの群れの方は特に変化なしのようで、防衛戦は既にパターン化してきたらしい。となると……そろそろ司令部は「ジャックポット」の条件を探し始めている頃だろうか。


「単純に考えれば、スロットやルーレットなどの「大当たり」に付随しているでしょうが……それだと不公平ですよね。他のゲームにも「大当たり」が混ざっているとして、どんな形かって話ですが」

「あぁ、それならクレーンゲームやスウィートランド系のゲームにそれらしいものが見つかったみたいですよ」

「そうなんですか?」


 スウィートランドって何、と思ったら、あのお菓子をスコップみたいなアームですくって落とすやつだった。積み上げられてるやつを崩すのはロマンがあるよね。ものすごく難しいけど。

 これですこれです、とソフィーネさんに言われてクレーンゲームの中継動画を見てみると、もうすでにかなり中身が減っているコインの袋の中に「ジャックポット!」と書かれた正方形のクッションのようなものが混ざっているのが見えた。なるほど。

 一方スウィートランドの方は、高く積み上げられたお菓子、ではなく、下を流れているお菓子の中に、お菓子と同じサイズで「ジャックポット!」と書かれた板が混ざって流れていた。へー。


「……クレーンゲームはともかく、お菓子の方はこれ、場所的にどうやってもアームが引っかからないのでは?」

「他のお菓子を動かす事で取れるように出来るらしいです」


 すごい人がいるもんだなぁ……。

 まぁともあれ、このパターンなら他の場所でも応用できそうだ。たぶん他の場所でもものすごくややこしいか難易度の高い場所にあるだろうけど。でないと「大当たり」の意味がないか、そうか。

 そこからしばらく通常ゲームの攻略模様を見てみたが、運しだいのゲームはともかく、技術でどうにか出来るゲームはすごかった。ゲームのプロとかいるんだろうか、ってレベルだ。


「いや、いますけどね。たまにゲームセンターで、ごっそり戦利品を抱えてる人とかさくっと目当てのものを手に入れる人」

「あ、ちぃ姫さんはそういう人を見たことがあるんですか?」

「家族にゲームセンター好きがいまして、よく出かけるんですよね」


 結果? お察し。まぁパチンコよりは健全かなって。上限金額も決まってるし。ちなみに一度、ちちおゲフンそのゲームセンター好きの家族があんまり酷く負けて泣き崩れてたところを助けてもらった事がある。まさにお見事だった。気軽にやってるように見えても全然アームから景品が落ちないんだもんな。

 その時の職人芸を思い出しつつクレーンゲームの中継動画に戻ると、「ジャックポット!」と書かれたクッションのようなものがほとんど露出していた。早いな。コインの袋に埋まってなかったっけ?

 人の手でつまんで運ぶように、ひょいひょい周囲のコイン入りの袋が無くなっていく。これはもうすぐ取れるのでは? と思いながら見ていると、


 ――――ドン!!!


 と、突然、闘技場全体に伝わるほどの揺れが、起こった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る