第1269話 42枚目:攻略手探り

 観光地価格だったので普段ならそんな金額出す訳がないんだが、今回はこうやってお金を落とすのが私のやるべき事仕事だ。なので遠慮なく、あほらしい値段の料理を買いまくった。大半はエルルとサーニャのインベントリに収まってお預けされたけど。

 後は、カジノで取り扱うには子供向けというか「ゲーム」としての側面が強いというか、そういうミニゲーム的な屋台もあったのでそれを巡ってみた。結果? やけにカラフルなお菓子やよく分からない人形が手に入ったよ。

 まさか眷属の小悪魔モチーフなのか……? とか内心で思いながら、大半がカジノとなっている街のマップを埋めていった。まぁ地図はあるんだけどね。案内板も、召喚者プレイヤー有志から提供されたマップデータも。


「ただ、地図で見るのと実際に歩いてみるのとでは大違いですけど。地図があっても音や光で現在位置を見失いそうです」


 それに一応市街地だから、上空から俯瞰で見れないんだよな。竜族がそれをやったら威圧行為になっちゃうから。エルルがサーニャを捕まえておいてくれて良かったよ。絶対迷子になる奴だ、これ。

 結構大きい街なので、ぐるっと見て回った頃にはログイン制限が迫っていた。なので素直にホテルに戻ってログアウトだ。少なくとも私は道中、特に怪しい気配や嫌な視線を感じなかったので、追手とかはない……と思うんだけどな。

 いつもと時間が違うので妙な気分になりつつしばらくだらだらする。ログアウトしても目がちかちかしてる気がする。


「……まぁ、あんなある意味ネオンまみれの所に行ったのは初めてだし……」


 やっぱりちょっとは目が疲れるんだな。特に終わりの方だと内部時間で夜が近づいていたから、むしろ光の強さと色の種類は増すばかりだったし。どっちかというとそういう場所に対する気疲れのような気もするけど。

 ほどほどにだらだらしてからお昼ご飯を食べて、外部掲示板を覗いて回る。……んー、やっぱり召喚者プレイヤーの運だけが悪かったのは話題になってるな。主に運が重要になるカジノゲームで惨敗した人の感想って意味で。

 まだお昼は過ぎていないが、予定時間になったのでログイン。いつもと違うが、今日は時間加速があるから、それまでにログイン時間を使い切ってしまいたいという事情がある。


「とはいえ、夜に外出の許可が出るとは思えないんですが」


 ログインしてしばらく待ってみたが、特に誰も訪ねてこなかった。なので生産道具を広げて生産作業をしておくことにする。相変わらず、お香はいくらあっても足りないし。

 たぶんエルルとサーニャは近くにいるんだろうが、顔を見せないって事はこのまま大人しくしてろって事だろう。まぁそうだな。下手をすれば昼間より明るいと言ったって、やっぱり夜の方が治安的には危ないから。


「それにしても、運が偏る事に、自分が庇護した神々と住民の接触を妨害。一体どういう形で影響が出ているんでしょう」


 まずはお札を作りつつ疑問を口に出したが、答えが返ってくる訳でもない。掲示板を開いてイベントの情報を纏めているスレッドを見てみたが、こちらも特に有力な情報は増えていないようだ。

 いやまぁ、地道に捧げものをするのは続けるけど、どういう風に影響が出てるかっていうのは大事だ。とても大事だ。例によって外から分かった解決の条件は「神のありようを正す事」っていう、そうだね、としか言いようのないものだったし。

 そりゃ正すことになるだろうさ。問題は、どこを、どう正せばいいのかって話で。かつ、それが全くの手探りって事なんだよな。


「まぁ神殿への捧げものは素直に受け取って頂けているようですし、召喚者プレイヤーがごそっと参加して賭け事に熱くなっているようですから、“偶然にして運命”の神の力は順調に回復している筈なんですけど」


 やっぱりどうにかして引きずり出すしかないか。その場合は高確率で私が関わる事になるだろうけど。捧げる素材的な意味で。

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