第1267話 42枚目:情報交換

 景品についてはエルルに手伝ってもらって、貴重だが無難なものを選んで手に入れた。途中で「家具」カテゴリにどうも神様用の神器っぽいものを見つけたり、投げるダーツに自分で飛ぶモンスターが混ざってたり(倒したら普通のダーツが補充された)したので、それは情報共有しておいたが。

 カジノスペースに戻って案内人さん及びサーニャと合流する。なんかカジノゲームを色々説明されていたようだ。もっとも勧められるゲームを、サーニャは「コインは基本全部姫さんのだから」=自分のではない、と断っていたらしい。

 とりあえず景品について整理したいのもあって、一旦カジノをお暇する。他の召喚者プレイヤー、というか、カバーさんやルチルとも合流して情報を共有しておきたいので、あんまり高級過ぎないホテルへと移動した。


「高級なものに慣れていないとは言いませんが、何をしていても知らない人の気配がすぐ近くにあるっていうのは落ち着かないんですよねぇ……」

「ま、護衛からしても知らない奴が仕事を理由に近づいてくるのは厄介だけどな」

「後は希少なものだって言って知らないものを出してきて、そこに何か仕込まれてるとかね」


 なお案内人さんに希望を伝えると、慣れた様子で大体の部分を自分でやる必要のある、しかし警備や治安はしっかりしているホテルをいくつか紹介してくれたので、あの人は貴人の扱いに正しく慣れているのだろう。……貴人ではなく竜族と言うべきかもしれないが。

 ホテルの場所と名前はカバーさんにメールで送っているので、恐らくルチルにも伝わる筈だ。という事で、主に強化素材として使える景品を確認。途中で見つけたあれこれのスクリーンショットはもうカバーさんに送っている。

 そして、さほどなくカバーさんが来てくれた。フライリーさんも一緒だ。そして完全に部屋に入ったところで、そのポケットの1つからひょこっと【人化】を解いたルチルが顔を出す。かわいいな。


「まだ時間に余裕はありますけど、一旦情報を整理しておきましょうか」

「そうですね。こちらも色々分かった事がありますし」


 神様用の神器が景品になってた事は速報として伝えたけど、それ以外の部分はまだだったからね。という事で、まずは私から何があったかを説明。カジノ内部の構造とか、カジノゲームの種類や倍率とかだな。

 カバーさんとフライリーさんは一緒に行動していたようで、フライリーさんがカバーさん無双だったと言っていた。まぁ……そうなるよな……。なおこれは痛くない程度の負けも含めてだ。そのタイミングを完全にコントロールしてたって事だし。

 そしてルチルだが、こちらは勝ち負けより周りの空気やカジノのシステムを観察する事に重点を置いていたらしい。……それでも負けてないというか、総合すると結構勝っているのがすごいんだが。


『システムとしてはとてもうまく出来ていると思いますー。借金も出来ませんしー、持っている物を売る事は出来ますけど、それもあまりに重要なものだと買取拒否という形で止めるらしいですよー』

「それに、この街の状態ですから、仕事には困りません。なので質屋は職業斡旋所を兼ねていて、あまりにのめり込んでいる場合は働かせることで強制的に賭け事から引き離すようですね」

「ちなみに1回でしたけど、負けが込んで暴れ出した人が連れていかれるのも見たっすよ。その時周りの人に聞いたら、そういう人は強制労働させられて体力と魔力を無理矢理健康的に消耗させられるみたいっす」

「無理矢理健康的に消耗するってすごい言葉ですね……」


 そんな感じだったようだ。ちゃんとセーフティーネットが存在していて機能している、という事で、システムとしては大変良心的だな。

 ただ、と、【人化】を解いたままのルチルが、軽く首を傾げてこう続けた。


『僕が見ていた範囲ですがー、気のせいとはちょっと思いにくいくらいに、召喚者の方がよく負けている印象でしたねー。もちろんカバーさんのように勝っている方もいたにはいたんですがー、サイコロやルーレットの出目が悪いと言いますかー』

「そうですね。その傾向はあったように思います。自分で振る事が出来るサイコロも、意図せず振った場合は明らかに出る目が偏っていましたし」


 なんかさらっと今、意図すればサイコロで好きな目を出せる的な発言があったが、ともかく。つまり、賭け事において召喚者プレイヤーの運が悪いって事だろうか。

 ……“偶然にして運命”の神のお膝元で、特定条件に当てはまる場合だけ運が悪くなる、ねぇ。

 そういう事をしてるから嫌われるんじゃないだろうか。今回は「モンスターの『王』」の影響かも知れないが。

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