第1248話 42枚目:状況進行

 竜族には、竜都同士でやり取りする為の、超遠距離連絡手段がある。それが何かは私にも開示されていないのだが、今機能している3つの竜都は素早く情報を共有出来るって事だ。

 そして召喚者プレイヤーには言わずもがな、大神の加護特典という形で、ウィスパーや掲示板と言った連絡手段がある。だから竜族と召喚者プレイヤーなら、その双方で連携さえ取れれば、それぞれの大陸でそれぞれに連携を取って動けるって事だな。

 どうやら司令部と召喚者プレイヤーの一部は、割と早期にのろいという手段を警戒していたらしく、対抗する手段をそれなりに用意していたようだ。それが知られていなかったのは、情報漏洩対策だろう。


「で、実際にその場に行って解除すると、次のカウントダウンが緩やかになった、と」


 まぁ予想通りだな。問題はのろいをかけている場所が多いって事と、解除が進むと何か仕掛けが作動する可能性がある事だが、司令部はその辺ちゃんと警戒しているだろうし。

 とりあえず今のところ、解除した場所ののろいが他の場所に移ったり、他の場所が強化されたりって事はないらしい。……正しくは、そういう仕掛けもあったが、まじないを扱う住民の人達の腕前でそれも解除されている、との事だが。

 きっちり仕掛けてはあったが、どうやらまじないを扱う人達にとっては「良くある事」らしく、さくさくと解除していったようだ。頼りになるなぁ。


「カウントダウンが緩やかになれば、野良ダンジョンを攻略する事も出来ますからね。スタンピート前に攻略できるんならその方がいいですし」


 労力的にも、報酬的にも、だな。

 しかし本当に慌ただしい年越しだな。必死に防衛戦しながら戦略ゲームしてる間に年が変わってるんだけど。半分はゲテモノピエロ達こと『バッドエンド』のせいだとは言え、ちょっとこれはないんじゃないの運営。




 のろい解除チームの奮闘により、どうにか5回目に追加された野良ダンジョンのカウントダウンは、1秒に1.2秒ぐらいの速度で進む程度となっていた。召喚者プレイヤーと住民の仲間がこぞって野良ダンジョンに突入し、片っ端から攻略して行っている。

 恐らく残りゲージの量と時間制限から言って、追加はあと1回だろう。どうにか巻き返し、もとい、状況を元に戻せたと言っていいんじゃないだろうか。本当にギリギリの感じがするが。


「全く、本当に、一番状況が最悪になるように手札を切るのがお上手で……」


 その状況を、掲示板を通して確認している私は何をしているかというと、まだ「皇竜の御旗」を掲げて全力で領域スキルを展開していた。流石にリソースの投入は自然回復力と釣り合う程度に下げたものの、それでも十分に強力な力場は展開したままだ。

 何故かと言えば、ほら、どたばたしたままさらっと流れてしまったが、フリアド内部においては4年に一度の特別な年越しだった訳だ。どうやらそれに合わせて、神に感謝を捧げて今後の祝福と加護を願う儀式をやってたみたいでね。

 私がいるのは最初の大陸の竜都であり、竜族の首都は竜都の大陸にある竜都だ。だから本来はあっちでやるべきなのだが、どうやら神域ポータルでの移動を便利だと竜皇様が認識しちゃったみたいでさぁ……。


「まさか、ニーアさんを道案内役に、こっちに来るとは思わないのですが」


 領域スキルの2重展開。それも皇族に連なる、神からの加護と祝福も十分な姫が展開したそれだ。だから儀式もこっちでやった方がいいだろう。という竜皇様の一言で、こっちでやる事になったみたいなんだよね。理屈は分かるがいいのかそれで。……私が言うな? ソウダネ。

 という訳で、補正が跳ね上がった状態で儀式は行われたらしいんだが……ほら、私はお城の屋上というか、ドラゴンポートになってるうちの一番高いところにいるから……どうやら、その、降臨案件が発生した、みたいでな?

 もちろん流石にティフォン様やエキドナ様本神ではないが、割と直属の眷属さんの誰かが「来ちゃった☆」したらしく……その降臨状態を維持するには、強力な力場が必要って事で、私はそのまま続投って事になったんだ。


「いえ。まぁ。いいんですけど。回復力と耐性が鍛えられますし、スタミナを消費しているのでステータスが伸びますし。それに一区切りつきそうってところで仕掛けてくる可能性が高いですから、全部きっちり終わるまで厳戒態勢もとい絶対に安全な状態が維持できるんなら、その方がいいんですけど」


 しかし、なんかこう、話が思ってなかった方向に大きくなってる気が、するな?

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