第1245話 41枚目:特殊ログイン

 で。12月31日土曜日、午後11時。特殊ログイン時間開始。

 と、同時に。


「嫌な! 予感が! したんですよっっ!!!」


 最前線である、御使族のいる聖地を挟み、北と南にある大陸。それ以外・・・・大陸・・に、膨大な、あるいは、夥しい数の野良ダンジョンが出現した。

 そしてそれらの野良ダンジョン入り口には、例外なく何らかのカウントダウンとバーが浮かんでいた。確認されている限り、カウントダウンの最大値は8時間。バーの方は不明だ。

 ただし。そのカウントダウンは、1秒で1分という超高速で減っていっていた。これは絶対にヤバいやつだ、と、誰が言うともなく判断した召喚者プレイヤー達は、手近なところから野良ダンジョンに突入し、攻略を開始した……の、だが。


「追いつく訳がないんですよね!!」


 制限時間480秒=8分。そんな短い時間で、難易度は場所相応と言っても野良ダンジョンをクリアできる訳がない。

 そして召喚者プレイヤーの数が増えたと言っても、一度に発生した野良ダンジョンは、それ以上の数だった。当然、大半の野良ダンジョンが手つかずである。そして攻略中の物も含めて例外なく、同時にカウントダウンが0になった。

 結果として発生したのは……超大規模な、スタンピートだ。


「そりゃそうでしょうよ! そりゃそうでしょうとも! 神々が空間的に干渉するなら――そりゃあ大量発生しますよね! 空間の歪みがっ!!」


 悲鳴を上げる暇もない。私がログインしたのはクランハウスにおける自分の島だったが、カウントダウンつきの野良ダンジョンが大量発生した時点で即座にうちの子全員に声をかけている。

 それだけでなく「皇竜の御旗」を持ち出し、最初の大陸にある竜都へ移動。アキュアマーリさんに色々端折って会いに行ったところでカウントダウンが0になり、スタンピートが発生。

 緊急事態って事で竜都を中心に「皇竜の御旗」を使って大規模に領域スキルを展開していいかというお伺いを立て、こちらも緊急事態って事で即座に竜皇様から許可が下りて、現在、全力で領域スキルを展開中だ。


「デバフ能力付きのモンスターが湧く竜都の大陸も心配ですが、この大陸に少しでも多くの戦力をつぎ込まないと、被害がどこまでも跳ね上がりますし……!」


 一応。一応、こう、保険というか、セーフティーというか。神殿を中心とした一定範囲あるいは集落は、神の力っぽいバリアで守られ、即座に蹂躙される、という事はないらしい。

 ただしそれはどう見ても保険であり、初手で防壁のない小さな村が1つ残らず全滅する、という事を避ける為だけのものだ。何せそのバリアは、モンスターの攻撃を受けると罅が入っていくのだから。

 もちろん竜族も、私への許可が出た直後ぐらいに竜皇様から緊急出動の号令がかかり、超大規模スタンピートに対して全力で動いている。恐らく竜都の大陸も同様に号令が伝わっているだろう。


「北国の大陸にあった竜都跡も、竜都の大陸が攻略完了した辺りから移住が始まっていた筈ですし……そもそもあそこは、特に南側において神の力が強い筈ですから、対処自体は出来ている筈です」


 僅かに自然回復力を上回る程度のリソースを領域スキルに投入し、その分をポーションやご飯で適宜回復させつつ、強く意識して領域スキルを最大で展開し続ける。自然回復力も特殊な耐性スキルも刻々と上がっていってるから、少しずつでもその範囲は広くなっている筈だ。

 そのかいあってか、最初の大陸の竜都、その周辺にある、エンドコンテンツ疑惑のある特殊なダンジョン。そこから湧いてくるモンスターは抑えられているらしい。このまま完封してやる。今、尽きない相手と戦っている余裕はない。

 それに、ここまでの全力で私が領域スキルを展開すれば、その中で邪神の信徒が活動する事は実質不可能になる。テロに対して警戒している余裕もないのだから、そういう意味でも私はここにいるのが最適だろう。


「しかし、それはそれこれはこれ。――――ふっざけんな運営!!」


 まぁそれはそれとして、運営のやり方には怒りを表明させてもらうけどな!!

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