第1227話 41枚目:進捗確認
困惑と怯えが混ざっておどおどと挙動不審が止まらない子だったが、案の定外に出るとなると顔面蒼白になって「ごめんなさい」の連呼に戻ってしまったので、そのまま地下でご飯を食べてもらっている。
明かりとしては宿光石のランタンをシャッター全開にして檻の上に置いているだけだが、とりあえず今のところ問題はない。こっそり【調律領域】を展開してみたが、何も起こらなかったし。
……まぁ、煮崩れオートミールを食べ始めたら泣いてしまったのはともかく、食べ終わってからまた私がブラッシングを始めたら寝てしまったんだけど。私のブラッシングってそんなにリラックス効果あるの?
「普段もそうだけどぉ、疲れてる時にやってもらうと、本当に効くからねぇ……」
……しみじみとルディルが頷いているので、どうやら相当なリラックス効果があるようだ。いや、いい事なんだけどね。緊張を解くという一点では間違いなく効果があっていい事なんだけどね?
とりあえずこちらが動けなくなってしまったので、クランメンバー専用掲示板と、この空間異常攻略用の掲示板を確認していく。何かあればどっちかに書き込みがある筈だから。
「他の場所ではそれなりに進捗があったようですね。主に隠し扉や隠し棚が見つかった、という意味で」
「今になっていきなり見つかったのか?」
「あの鍵を探した時に、一緒に別の鍵が出てきたみたいですよ。そこから隠されていたものが見つかって、隠されていたものと一緒に別の隠し場所の鍵が見つかり、と、芋づる式に色々出てきたようです」
「あとはぁ、想定してない状態で探すのとぉ、ある筈だと思って探すんじゃあ、見つかるものは違うよねぇ」
「あぁ、それはそうだな。鍵を持っていないと見つからない、とかいうのもありそうだし」
で、それら隠されていたものから判明したのだが、どうやらこの地下に入る隠し扉の条件から推測されていた通り、この集落に暮らしていたのは闇属性に近い属性を持った少数種族だったようだ。
日の光に対する著しい脆弱性を抱えていたらしい彼らは、太陽が昇っている間は行動できない。だから他の種族との交流もほとんどなく、この森に点在するいくつかの集落に分かれた同族とだけ細々とやりとりをしていたらしい。
何でこの森かって言うのも出てきたらしく、あの煤に汚れたような木は丈夫で加工しやすいのに、火がついてもじわじわと長い時間燃えて、繊維を取り出せば紙にもロープにもなるという、大変優秀な不思議素材、もとい木材だったようだ。
「何でそれが知られてないんだ?」
「その丈夫さが厄介ポイントでもあるようで、それこそ竜族ぐらいのステータスが無いと伐れなかったみたいですね。ただし月の光が特定の角度で差し込む間だけは普通の木と同じぐらいになるようです」
「それは大変だねぇ……。普通にレンガや魔法を使う方が絶対楽だと思うんだけどぉ」
「だから広まってないんだな」
そういう事だ。ちなみに伐った後は普通に扱えるらしく、この集落がお金に困った時に売りに行く貴重な財源的な記述が見つかったようだ。だから空間異常の外で竜族の人達に頼んで、森の端にある木を伐ってみてもらっているとの事。
そんな特性というか生活をしていたから、行われていたと思われる儀式は周辺の村から人が集まって交流する、一種のお祭りに近い感じのものだったらしい。確かにお祭りも儀式の一種か。
ただ問題は、そうやって多くの人が集まっていた痕跡が見つからないって事なんだよな。生活の痕跡は見つかっている。人がいたという形跡そのものはある。……だが、見つかっているのはあくまで、「普通に生活していた痕跡」だけだ。
「お祭りなら、いつもと違う痕跡がある筈です。元々住んでいた人がいつも通りの暮らしをしているだけならともかく、ここには宿屋のような建物はない。……なら、元々暮らしていた人に、親類などの縁を頼ってお世話になっている筈です」
「それが無い、と。なるほど、それはおかしいな」
「実際にぃ、その資料が見つかるまで、人がたくさんいたっていう事は分からなかったからねぇ」
「違和感すら覚えられないって怖いですね」
「…………そうだな」
ちなみにこの情報の確認は、床にピクニックシートを広げた上でクッションを積み、その上に座って寝落ちてしまった女の子を膝枕しつつ頭をなでるという姿勢で行っている。
あまりに平和な為、周囲との差がすごい事になっている。だから違和感からはあえて目を逸らす形になっているが、別にいいじゃないか。頭をなでている効果か、泣き顔からの苦しそうな寝顔がちょっと安らいでるんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます