第1215話 41枚目:騒動差し込み

「っ――エルル!」


 そこからざっと情報を確認し、開戦タイミングが本当についさっきである事を確認、戦争を起こしたのは元々火種が燻っていた国同士であるというところまで見て部屋を飛び出し、声を張った。

 何故なら今回の場合、開戦理由どうしてとか開戦方法どうやっては関係ない。だってこのタイミングで戦争が起きる理由なんて、そんなもんあのゲテモノピエロの細工以外には有り得ないからな!


「お嬢、どうした?」

「最初の大陸で戦争が始まりました。確実にこちらへも何か仕掛けてきます。まずはこの大陸全体の警備を厳戒化して下さい。理由は違いますが戦争なんかやってる暇はありません。私は一旦島に戻ります」

「あれか。分かった」


 戦争が始まった、のところで一瞬「は!?」みたいな顔をしたエルルだが、続いて、仕掛けてくる、と言ったところで察してくれたらしい。私が安全圏クランハウスに移動すると言ったのもあるだろうが、すぐに動いてくれた。

 もちろん私も言葉通り、個人の神殿を経由してクランハウスに戻る。何でかって? それはもちろん、「今されたら一番嫌な事」に対策する為だよ。


「とりあえず、全員、集合!」


 ルージュもルイルも、予定ではもう島に戻ってきている筈だ。そして他の皆はルージュが持って帰ってくる「共鳴結晶」のガラスを使ったアクセサリ目当てで島にいる筈。その争奪戦が起こっているかも知れないが、私が声をかければ気付いてくれるのは間違いない。

 ボックス様の神殿から出たところ(=ほぼ島の中心)で叫んだからか、すぐに全員が……エルル以下竜族組とルールはともかく何故かルウとショーナさんが居ないが、まぁ大体全員が集まってくれた。

 で、全員を集めて何をするかというとだな。


「ショーナさんがいないのでちょっと難易度は上がりますが、過去を撮影、記録する魔道具の数を増やします。その為に、何はともあれ材料を集めなければ始まりません」

「十分な数が配置されているんじゃないですかー?」

「因果関係を明らかにしたり現場検証をしたりするのに、最初の大陸で必要になる可能性が高いです。しかし今攻略中の大陸から引き揚げさせればあちらが付け入る隙になります。かといって、供給しなければ戦争はどんどん泥沼化するでしょう。よって、作ります」

「いやでも材料だけがあっても作れないんじゃ……」

「そこは司令部と連携しつつ、ですね。そもそも数が無いのは作成難易度もありますが、素材の調達難易度もそれなりに高い上に時間が無かったからですし」

「マスター、大陸の方は放っておいていいのかなぁ?」

「念の為エルル達に警備レベルを上げてくれるように頼んできましたし、戦争をしている以上司令部も攻略どころではありません。そしてさっさと止めるには問題の魔道具が必要となる……いえ、その魔道具が無ければ収まらないように持って行かれる、が恐らく正しいですね」

「邪神?」

「正確にはその信徒ですが、その通りです」


 ボックス様の試練を周回する事による、素材の荒稼ぎである。理由は今説明した通りだ。そう。今一番やられて嫌な事は、あの監視カメラみたいな魔道具がどこかへ持って行かれる事だからな。

 何故って? 私ならそうするし、あれが一番邪魔だからだ。実際ここまではあの魔道具に見つかっても構わない手駒による襲撃ばかりだった。とはいえ、信者がどこからか湧いて出てくる訳ではない。だったら減らそうとするだろう。

 監視カメラ魔道具自体はいくらあっても困らないし、何なら壊れたりする事を考えればどれだけあっても足りないぐらいだ。皆に説明しながらカバーさんに素材集めをする事と、エルル達に大陸の警備へ回ってもらった事はメールしたし。


「既に相手によって先手は打たれました。後手に回らされたという不利は免れませんが、だからこそこれ以上遅れを取る訳にはいきません。既にこの動きは司令部に申請済みですし、何か他に優先するべき事があれば連絡が来るでしょう。……という事で、ボックス様に感謝しつつ周回しますよ!」

「「「おー!」」」

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