第1214話 41枚目:攻略の合間

 どうやらフリアド世界において、ガラスというのは「結晶」の中に入るらしい。が、基本はやはり宝石の事を指すらしく、必要な品質と透明度がかなり高かった。

 まぁ鍛冶スキルとその設備で作れるから、ルージュに手伝ってもらってせっせと特殊なガラスの作成をする。材料はほとんど砂なので、この砂漠のど真ん中ならいくらでも簡単に手に入って助かった。

 一番難しかった材料? うん。まぁ。薄々分かってたけど、共鳴石が必要だったから、それがなかなか難易度が高かったかな。作るガラスの大きさに比例したサイズが必要なんだけど、失敗すると光の粒になって消えちゃうから。


「ガラスなんですから再利用させてくれてもいいのに……!」

「(´・ω・;)(一緒に使う素材がだいぶ特殊ですからね……)」


 そんなやりとりも間に挟みつつ何とか望む性能を持ったガラスが出来た頃には、午前中のログイン時間を使い切りかけていた。マジか。コトニワ時代から鍛冶をしてきたルージュとステータスの暴力である私が一緒に作業してこれとか、難易度が高いぞ。施設のレベルにもよるのかも知れないけど。

 出来上がったガラスの更なる加工はルージュにお任せして、私は一旦ログアウトだ。一回出来上がってしまえばそこからの加工は普通のガラスと変わらない。難易度含めて。


「……あれ? それはそれとして、性能のいい炉で粉にした宝石と素材を混ぜて再成形しても行けた気がしてきた」


 お昼ご飯を食べながらふとそんな事を思いついたが……まぁ、うん。それはまた後で検証しよう。実際に作れる事の確認と、クランハウスの私の島を平和にするのが最優先だったんだし。

 しばらく外部掲示板を覗き見ながら連絡を待ってみたが、特に何も無かったのでいつも通りにログインする事にした。何か発見があったとしても内部掲示板の方が早いし、そもそも今一番の話題はあの「共鳴結晶」だろう。

 それに空間異常に突入できるようになったところで、午後に突入している現在、無理な強硬は出来ない筈だ。タイミングを見ないと、通常空間で挑戦している以上、ログイン時間の制限があるから。


「ガラスを作るのに集中してたから、他の生産作業が何もできてないし。厄介な場所が、次の高難易度一ヵ所じゃないのも分かってるんだから、お香の生産もしておかないといけないし」


 それはそれとして「共鳴結晶」が引き起こす騒ぎも怖いけどなー……。とも思うが、まぁ仕方ない。厄介度は上がっていくんだ。ここまでは何とかなったが、これからも何とかなるかは分からない。

 儀式的な手順がどうしても必要、ってなった時に動けるのが「第一候補」1人っていうのはかなり厳しかったしな。『巡礼者の集い』の人達もかなり神官としての実力はあるが、こういうのは重ねた月日が物を言う場合があるから。

 で、ログインしていつものようにまずクランメンバー専用掲示板を確認してみた訳だ。


「――――は?」


 そして、そこに。

 小康状態を保っていた筈の最初の大陸。竜族も復活して抑止力として活動していた事に加え、複数の国に渡る宗教組織も召喚者プレイヤーに友好的だという事で、ある意味本当に平和を、一番の平和を享受していた筈の場所で。



 誰も無視できない規模の戦争が勃発した、という情報が、書いてあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る