第1216話 41枚目:騒動遷移

 必要となる素材自体はルイル(が持っているルールの分体)に聞けば分かったので、私の領域スキルとバフも解禁してガンガン周回する。置物になってた分を暴れているとかじゃないよ。

 途中でカバーさんが司令部の人と一緒に来て素材を持って行ってくれたので、とりあえずこの動きとしては問題ないようだ。その時に確認を取ったけど、そのまま続けて下さいって言われたし。

 書き込みのペース自体は間が空いているものの、クランメンバー専用掲示板で分かる最前線は、やっぱり襲撃が多発しているらしい。どっからそんな人数が来たんだ、という数が突入できる状態の空間異常を狙って襲い掛かってきたようだ。


「最悪、空間異常に突入したところで自害、あるいは自爆して、そのまま邪神の力が広がる、とかいう事も考えられますからね……」


 本当に、本当に効率だけはいいんだ。効率だけは。他が全部地に落ちるどころか穴を掘って埋まる勢いで最低なだけで。それを躊躇いなくやるから本当に最低で最悪なんだけど。

 一応今のところ、防衛はエルルが素早く応援を呼んだ事もあってなんとかなっているらしい。いやー、良かったな。司令部の人達から『バッドエンド』というクランを自称する集団についての説明が入ってて。これ、説明が入ってないかエルルが応援として呼ばなかったら、最初の大陸に応援に行ってた可能性が高い。

 そして案の定、まとまった量の素材を引き渡すのが3回目ぐらいになった辺りで、戦争をしている国の代表を引きずり出す事に成功したものの、お互いに証拠を出せと罵り合いになっているようだ。だろうと思ったよ。


「だってそれが一番やられると困りますからね。少なくとも私ならそうします」

「ごしゅじんが善人で良かったですー」

「本当にねぇ」

「大丈夫です。発想は出来てもそれを実行に移す動機はこれっぽっちも理解できませんから」


 むしろ効率的な部分だけとはいえ思考が理解できるのも嫌だ。ある程度は理解できないと先読みして対策が取れないから、読めないよりは読めた方がいいんだけど。こう、ぞわっとする。

 さて、どうやら突貫工事とはいえ、司令部は瞬間的に集められるだけの生産系召喚者プレイヤーを集め、私がうちの子と集めた素材で可能な限り魔道具を作っていたらしい。国の代表を何とかその場にとどめつつ、今は戦争を終わらせるための情報を集めているようだ。

 最前線への襲撃はまだ続いているようだが、そちらの魔道具は現状維持だ。……何ヵ所かは引き上げるふりをして、罠にかけようとしてるかもしれないけど。司令部ならそれぐらいはやるだろう。


「それで尻尾を出してくれればいいんですが、ちょっとでも違和感があったら出てこない感じもしますからね……」

「慎重」

「敵に回したくない相手だなぁ。敵だけど」


 ルドルの言葉には同意しかない。それなー。何でわざわざフリアドこの世界でやるんだろうなー。どっか別の、同じ趣味の人間しかいないか誰の迷惑にもならない場所でやれ。言ったところで聞かないだろうけど。

 相手が言う事を聞かず、一切退く様子を見せないのであれば、それに対応するしか道は無いんだ。あのゲテモノピエロのやりたいことは、少なくとも私にとってはどんな手段を使ってでも避けたいことだからな。

 だからこれはこれで戦争なんだよなぁ……と思いながらボックス様の試練から戻ったところで、神殿の入り口の向こうにカバーさんの姿を確認する。素材の受け取りか。


「しかし、戦争という札を切った以上は何か仕掛けてくると思ったんですが……」


 いやまぁ、最前線への大規模な襲撃はあるんだけど。エルルに厳戒態勢になってもらうようにお願いしてて本当に良かったって思う程度には厳しいっぽい襲撃は、今も現在進行形で発生してるんだけど。

 イベントページとにらめっこしている司令部は本当にお疲れ様なんだよな。私も時々見てるけど、見える範囲でも残り時間が動きだしている空間異常がちょいちょい増えてるから、これ空間異常に突入した召喚者プレイヤーがいるって事なんだよな。

 だから、被害が出てるか出てないかって意味だと十分出てるんだよなぁ。と思いながらボックス様の神殿の入り口に向かい、


「……こう来るとは予想外ですよっっ!!!」


 残り数歩の所で、リソースを自ら叩き込んでの全力で領域スキルを発動。カバーさん・・・・・姿を・・している・・・・何か・・を、その出力で弾き飛ばした。

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