第1169話 41枚目:情報収集序盤
空間異常の中だが、強化のかいあって普通に
この町の名前はシガロンドといい、メインで暮らしているのはスナネコ系獣人種族の人達だ。大きな洞窟を中心として作られた町で、その洞窟の中に神殿があるらしい。その洞窟はいざというときのシェルターでもあったようで、世界規模スタンピートの時はそこに籠っていたようだ。
信仰としてはそこにいる神――事前に分かった情報によれば“岩洞にして底道”という地下に通じる洞窟全般を司る神(の恐らく分体か眷属)と、地下水脈にいる精霊に対する信仰の二柱がメインとなるらしい。そしてこの町の住民達の感覚では、世界規模スタンピートが始まって数日後、一旦終息したから外に出てきた、という感じになるようだ。
『にもかかわらず精霊が姿を見せなくなり、それと同時期に水を飲んで異常をきたす人が増えてきた、と。分かってはいましたが、間違いなく「モンスターの『王』」の影響ですね』
『それでも生きていくのには水が必要だから飲まざるを得ないって、完全に悪循環に入ってる感がすごいっす』
『水を飲んだら異常が出る、っていうのも厄介だわ。この信仰形態だと、水に異常があったら精霊のせいにされるじゃない』
『その精霊が姿を消している、というのも誤解をとけない原因の1つですわね。もちろん、分かってやっているのでしょうけれど』
『と言っても、その洞窟に近づけないので調べようがありませんねー。洞窟があるから、他に井戸とかも無いみたいですし』
『産出される水量自体は、現在も十分な量があるようですからね。空間異常のせいかあるいは「モンスターの『王』」の影響かは分かりませんが、何らかの形で地下水脈には接続しているものの、精霊は進入できないようになっているのでしょう』
ちなみに精霊は信仰されると集まりやすくなるようだ。あれか。【○○精霊魔法】に補正の入る場所になってる感じなのか。
なお具合の悪そうな人を見かけては治療を試みているのだが、以前「第一候補」から聞いた「部位欠損を治療する奇跡で治った」という話を参考に、傷の治療というより部位の再生を目的とした高レベルの魔法を使っている。そのおかげか、今のところは上手く治せているようだ。
そのついでに話を聞いてみると、どうやら町にいる神官の人達の奇跡や薬屋のポーションでは治る様子が見られず、少しずつだが彼らへの信用が薄れていっていたらしい。
『……この状況でそういう人たちへの信用が薄れるってヤバくないっすか?』
『ヤバいわね。と言っても治さない訳にもいかないし、かといってそんな奇跡の行使やポーションの作成がほいほいと出来る訳ではないのだし……』
『急いで原因を何とかしないといけない、って事ですね。このままちぃ姫さんが信用を稼いだら、洞窟には入れるようにならないでしょうか』
『むしろ信用を奪った事で、神官から目の敵にされませんこと?』
『その辺りも含めてちゃんと説明する為にも、早く接触したいんですが……何のアクションもない、というのが嫌な感じです』
『そうですね。町の入り口に対応するお香をセットしてきましたが、受け取って頂けるかは分かりませんし。何よりこの状況で信仰心が揺らぐのはとても危険です』
一応治療のたびに「神様のお陰です」的な事を言ってはいるんだが、どれだけ効果があるかは分からないからなー。なお、何の神様かは明言していないので、受け手の想像しだいだ。
まぁ制限時間が72時間、時間加速の間一杯かかる場所だから、そう簡単に行くとは思ってなかったけどさ。こっそり忍び込んでも悪い意味で騒ぎになっちゃうだろうし、どうしたものかな、これは。
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