第1146話 39枚目:情報確認

 という訳で、土曜日はそのまま夜までお菓子作りで終わった。いやまぁ、スキルレベル的には経験値が大変美味しかったし、制御訓練だと思えば大変実りのある時間だったけどね?

 お昼休憩や午後の隙間時間に覗いた外部掲示板では情報規制がかかっていなかったらしく、イベントダンジョンについての話し合いはこっちの方が活発だった。まぁ話し合いが出来るところで話し合うよね。

 どうやら私達がせっせとお菓子を供給した事で、他の有名どころクランも追随する動きがあったようだ。それで素早く3つの大陸にお菓子が行き渡り、何とかイベントダンジョンに捕まってしまった人達を一旦は救出する事に成功した、と言っていいらしい。


「簡単なお菓子の手順を暗記出来てしまう程作りまくったかいはあったかな」


 なお現実で同じように作れるかどうかは別の問題だ。何せ身体が違うし魔法も無いから。

 とはいえまだまだあのシーツお化けみたいな「何か」は巨大な塊から落下してくるし、どうやらお菓子をそのまま置いていても勝手に持って行くことはないらしい。「お菓子をあげる」という動作が必要なようだ。

 そして同類扱いになるのか、霊獣や属性精達から「お菓子をあげる」事は出来ないらしい、というのもほぼ確定でいいだろう、との事。……確かに一緒になってお菓子を食べてたな。


「警戒しなかったっていうのも本当だし、害意が無いだけじゃなくて、どっちかというと同類とか仲間に対する態度だよなぁ……」


 私は使い忘れていたが、どうやら【鑑定】系のスキルも通らないらしい。なんなんだろうな、あのシーツお化けみたいな「何か」。微妙に似たようなことがあった気がしないでもないんだけど。

 ともかく、今も住民の皆がお菓子を作って供給してくれている筈だから、一般住民の行方不明を防止する事は出来ている筈だ。その大元となる塊へのアプローチは……相手の総数が不明で、イベント期間限定の存在だから実質無限、とかいう可能性もあるっていうのが厄介ポイントだな。

 下手にその上空からお菓子を撒いたりして、あの巨大な塊の1割でも集中してこっちに来られたら対処できない。地上からお菓子を打ち上げるのも同様だ。もちろん対策していればイベント報酬の入れ食いになるんだろうが、対策であるお菓子作りにもそれなりに時間がかかる。


「というか、イベント報酬って私は宝石の原石しか確認してないけど、他には何があったんだ?」


 ここで改めて検索タイム。もとい、内部掲示板でも普通に話題に出せる事だからか、ざっくりと『アナンシの壺』によるまとめページに「何か」が満足すると置いていく箱の中身がまとめられていた。

 それによると、大体の場合は素材のようだ。加工が必要か不要かの確率は半々ぐらい。ただしお菓子を上げた人が持っているスキルによってその状態が変わる確率が高い、という文章が書き添えてあった。

 満足するまでに必要なお菓子の量が多い程良質な報酬が受け取れるようだが、周囲に霊獣や属性精がいるとお菓子の量よりも良質な報酬が受け取れるらしい。そうか、あの宝石の原石に期待が持てるな。


「しかし報酬の質と達成難易度にも関係するとか、やっぱり無関係じゃないよなぁ」


 ますますその正体が気になる訳だが、あのシーツみたいな部分をめくる訳にもいかないしな。既に失敗例が出てるから。シーツみたいな部分を掴んだ瞬間に「お菓子な空間」送りだってさ。しかもかなり難易度が高いやつ。つまり触るなって事だろう。

 で、大体の場合は素材って事は、素材じゃない場合もある訳だ。その場合は何かというと、なんかこう、宝の地図風な、ざっくりした地形の中に×印が書かれた羊皮紙(ただし羊とは限らない)だったらしい。

 見つけた召喚者プレイヤーは『アナンシの壺』が公開している大陸の地図とにらめっこしながらその場所を特定しようとしているようだが、どうやら今のところ特定できた召喚者プレイヤーはいないようだ。


「宝の地図、か。ちょっとそわっとしちゃうじゃないか」


 しかし、既にある大陸なら既に探索済みだと思うんだけどな。

 今回のミニイベントもそもそもの話をすれば空間の歪みが悪さしてるから、そっちかも知れないけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る