第1145話 39枚目:対応開始

 けどまぁ、相手があのゲテモノピエロなら話は別だ。


「とりあえず動きを変えましょう。まずエルルとニーアさんは部隊を再集合させて、2つに分けて下さい。片方は空間異常の探索及び行方不明者の捜索と救助、もう片方は野良試練の攻略です。その攻略する組の「お菓子籠」をこちらに集めておいて下さい。捜索組はお菓子が湧かなくなったら個人単位でもいいので交換に来るように指示をお願いします」

「分かった」

「了解しました!」

「ルフィルとルフェルはカバーさんに「何か」が満足するお菓子の平均個数を聞いて、その倍の量が入る籠を量産してください。材料は軽くて丈夫であれば問いません」

「いいけど何に使うメェ?」

「お菓子は詰めなくていいメェ?」

「お菓子を詰めるのは霊獣と属性精達に頼みます。途中でいくらかお菓子をつまみ食いしてもいいと言えば全員来るでしょう。ショーナさんは研究施設に戻っている人達に連絡し、特別ボーナスと引き換えに島の強化の依頼をお願いします」

「分かりました!」

「で、カバーさん。双子が作って霊獣達がお菓子を詰めた籠を手間賃限界の値段で流通に乗せて下さい。一般住民の自衛用だという注釈をつけた上で召喚者プレイヤーへの購入制限もお願いします」

「了解しました、取り掛かります」

「後の全員はこのままお菓子の作成を継続、ルウ達現在の外回り組は戻って来次第材料調達係に変更です」


 当然、総力戦である。いやぁ私も指示を出すことに慣れたもんだ。慣れて良かったのかどうかは内心ちょっと複雑だが。

 材料の調達先はボックス様の神殿でもいいし、外回りついでに「お菓子な空間」で集めてきてもいい。ルウにしろルージュにしろ、壁を殴れば十分な量の材料が手に入るだけの攻撃力があるし、筋力が高いからインベントリに重量物を入れても大丈夫だからな。

 と、ざっくり指示を出したところでウィスパーの着信。おや、今ログインか。


『よう「第三候補」ー! なんかすげーことになってんな!?』

『そうですね「第四候補」。とりあえずそちらもお菓子の作成をお願いします。量産は得意でしょう?』

『まーかせろー! あっそうだ、そっち今ホットケーキミックス作ってんだって? そこ俺で担当しようか! お菓子本体よりかは難易度も下がるし!』

『それは助かりますね。とにかく手が足りないので』

『ついでに外貨の荒稼ぎだー! ところで誰発案?』

『ソフィーナさんです』


 よーし、ホットケーキミックスを任せていいんだったらお菓子の量産が捗るな。ホットケーキミックス自体は既に誰かが思いついて作っていてもおかしくないけど、今回の発案者はソフィーナさんだ。

 私へのウィスパーが切れた直後にソフィーナさんがウィスパーを受け取っていたようだから、たぶんなんか一言断りを入れたんだろう。主にホットケーキミックスを販売して利益を得る事の。

 しかし「第四候補」の万年金欠も変わらないな。そろそろなんか安定した金策の1つ2つはあっていいと思うんだけど。


「若干の予定変更です。「第四候補」がホットケーキミックス作りを担当してくれるそうなので、私とルディルもお菓子を作る方に参加します」

「アタシはこのままでもいいよぉ?」

「非常事態ですから、作業特化のゴーレムに対抗意識を燃やさないでくださいねルディル」

「…………そんな事はないよぉ?」


 じゃあなんだその妙な間は。

 ルディルはちゃんとスキルを制御できてるから、手作りするだけで毒が問答無用で付与されるとかじゃないんだし、そもそも質で圧勝してるから何も問題ないだろうに。


「数を揃えて勝たれるのはなんか悔しいとかそんな事はないからねぇ?」

「全部口に出てますよ」

「負けず嫌い」

「ルシルも人のことを言えませんからね」

「それ、先輩にもブーメランじゃないっすか?」


 そうかな。

 ……そういえばステータスを上げる動機の半分ぐらいはそんな感じだったかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る