第1142話 39枚目:ミニイベ対処

 という事で、台所へ移動してざかざかとグミやクッキーといった手間の少ないお菓子を作って「お菓子籠」に追加し、その一部をボックス様の祭壇に捧げて神様製のお菓子と交換してもらって、鍛冶場にあった転移魔法陣に乗ってみた。


「なるほど、お菓子な空間という名前のまんまなんですね」


 一応今できるフル装備であるドレス+胸当てという装備で踏み込んだイベントダンジョンは、モザイク状のクッキーで出来ているだけで、シンプルな構造をしていた。何故か机や椅子といった家具類も転がっているようだが、そちらも飴やチョコレートで出来ているようだ。

 このまま噛り付いても美味しそう、とちょっと思ったが、とりあえず最近使っていなかった【捕集】がメインスキルに入っている事を確認してから、部屋の端に倒れている椅子を拾ってインベントリに入れてみる。


「普通に手に入りましたが、お菓子ではなく材料扱い、と」


 ちなみに再度取り出してみると、加工用でよくあるレンガ状の塊に変わっていた。飴もその調子だったのだが、これは適切な熱を加えれば形を変えられるんだろうか。

 ステータスによる攻撃力は意味を持たない、という法則を確かめるために壁を殴ってみたが、これはこれで小麦粉と大量の砂糖が手に入った。ただし壁は壊れていない。

 特に砂糖はお菓子作りで大量に使うので、もう一度壁を殴っておく。材料には困りそうにないな。となると問題は、お菓子を作る場所なのだが。


「残機の回復なんですから、普通に考えるとセーフゾーンですが……捕まった時限定の、救出を待つための場所でもあるんでしょうか。牢屋的な」


 まぁ探索して見ない事には分からない。突入前にカバーさんにも連絡してみたんだが、珍しく繋がらなかったからな。忙しいんだろう。たぶんこのイベントダンジョン絡みで。

 とりあえず転がっている、家具の形をしたお菓子の材料は全部回収してから廊下へ移動だ。もしかしなくてもこの分だと、出てくるモンスターもお菓子だろうし、倒せば材料が手に入るんだろう。

 ……鍛冶場にいつもいるのはルージュであり、最初の大陸の竜都を開放してからはアリカさんも大体常駐している。そのアリカさんにくっつく形でヘルマちゃんが入り浸っていた筈だ。そしてちょいちょいルフィルとルフェルが遊びに来る。


「ルフィルかルフェルがいればいいんですが、いない場合、お菓子を作れる人がいませんからね……」


 生産職だからって、他の系統の生産スキルを持っている訳じゃないんだよな、あの3人。特にルージュは物を食べる必要が無い、というか、【人化】スキルをそもそも持っていないので、食べられないのだ。

 物質系種族の【人化】は、「第一候補」ほどでなくとも何か条件があるらしく「白紙のスキル書」じゃ覚えてもらえなかったんだよな。ルールも同じく。ブライアンさんと、救出された物質系種族の人達の一部は【人化】出来ていたので、習得自体は可能な事は分かってるんだけど。


「……ルージュの場合、特殊な出自だからか、言語スキルもそのままだと習得できない状態でしたからね……」


 なお元々が筆談という形だった為にその辺何とかしてしまっているルールも実は同様である。あの顔文字は物質系種族の要同族補正鳴き声喋りだったらしい。

 話が逸れた。ともかく、生産組3人だけだった場合、自力脱出はかなり困難だ。全員器用さは十分に高いから、【料理】スキルの取得さえできれば不可能ではないだろうが、それでもまず時間がかかる。


「後は……使徒生まれ組は全員それなりに【料理】は出来るようになっていましたし、エルルは言わずもがな。ショーナさんは独り暮らしだったから一通り出来た筈です」


 ニーアさんもお菓子作りに参加してたし、元第7番隊の人達は野営をする都合上【料理】スキルを持っていたからたぶん大丈夫。召喚者プレイヤー組はログインするまでは安全が確保されているし、私が一旦島の中の「何か」にお菓子をあげて退散してもらっているから大丈夫だろう。

 研究施設は独自の結界を張ってて中の魔族の人達は無事だったし、そもそも霊獣と属性精は無事だったからルイシャンも元気だった。一応お菓子は置いてきたけど。

 うん。たぶん大丈夫だな? 抜けはないよな?

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