第1138話 39枚目:イベント終盤

 土曜日の夜のログインで、南側の大陸にはかなりしっかりとした突入口が開かれた。司令部は土地の除染をしつつその場にしっかりとした拠点を作り、南北に海岸線を辿っていく予定らしい。

 なお北側の方だが、あちらはあちらで順調なようだ。まぁ魔法の通りがいいって時点で分かってたんだけど。むしろ要救助者を巻き込まないようにする方が大変だ、との事だった。

 という事でイベント最後の日曜日、私はうちの子と一緒にこれまでの大陸にある高難易度ダンジョンを巡っていた。イベントが終わっても砲弾系の追加報酬が消えない事にかけた訳だな。後は通常の治安維持。スタンピートの阻止って意味で。


「というか、絶対ここから先も使うでしょうからね。そもそも、再現できないものではありませんし」


 しかし火薬は使わない。それが召喚者プレイヤーの不文律になってるんだよな。あのゲテモノピエロのせいで。ここまで意図していたのかどうかは不明だが、火薬が世界に広がるチャンスを潰してみせた事になる。

 そろそろ魔法&近接無効とかいう、物理的な遠距離攻撃でないと倒せない敵とかが出てきてもおかしくないからなー。選択肢が1つ、あるのが分かってるのに選べないっていうのは結構頭が痛い。


「ま、それならそれでぇ。何とかやりようはあるからねぇ」

「頼もしいですね。でも無理は出来るだけしない方向でお願いします」

「大丈夫だよぉ」


 大丈夫かなぁルディル。激務続きで感覚が麻痺してるとかじゃないといいんだけど。

 なお気の早い召喚者プレイヤーが砂漠の探索に繰り出したようだが、どうやらあの領域スキルみたいな能力はあんまり無かったようだ。無い訳ではないが、それぞれが神から貰った対策アイテムで十分行動できるようになる範囲だったらしい。

 なお大丈夫だったのは力場的な問題だけで、砂漠という地形には大苦戦していたようだ。まぁそりゃそうだな。人の足で行ける範囲はたかが知れている。


「そういえばエルル。あっちの大陸にも竜都はあったんですか?」

「あるというか、あったぞ。……御使族の島を囲むというか、挟む形でな」

「あー……」


 その形から、2つの竜都を合わせて橋梁都市とも呼ばれていたそうだ。なるほど、御使族の島を含む、大陸間移動の文字通り動線そのものだった訳か。次の大陸の竜都における守護対象は御使族と聖地だったと。

 ……それなら余計に竜族が「御使族をそのままにして」竜都を放棄した事が疑問だが、アキュアマーリさん曰く、当時の竜皇様がどうしてその判断を下したかは残っていないんだそうだ。なんかお告げでもあったか? ってレベルらしい。

 まぁそこはもう考えても仕方ない。たぶんバックストーリー的な都合だろうし。という訳で今考えるべきは、だな。


「砂漠の歩き方と、拠点の作り方及び防衛の仕方ですね。御使族がいるとされる場所から遠ざかるほど難易度は低くなるようですから、砂漠以外の突入口もさほどなく開拓されるでしょうけど」


 それに使う建材を集めるという意味でも、この高難易度ダンジョン巡りな訳だ。ほんといくらあっても足りないな。野良ダンジョンを順調に攻略させたい運営としては狙い通りなんだろうけど。

 なお御使族がいるっぽい場所に近づくほど攻略難易度は上がるが、そちらに重要な要救助者がいるのも確かなので、イベント期間が終わったら私とエルルはそちらの攻略にかかる事になるだろう。

 ……私とエルルというか、私が領域スキルで退路と運搬路を確保して、協力してくれる召喚者プレイヤーがバラバラにされた砦の残骸の運び出しであり、戦力はエルルだけなんだけど。


「ちなみにエルル。北側に進んで何か手ごたえの変化とか有りましたか?」

「進めた範囲だとそんなに無かったな」


 という事なので。

 いやー元から明らかに特殊個体だし大器晩成型の気配がしてたけど、その上に本人の努力と『勇者』補正がつくとこうなるのかー。

 進行状況的に絶対このタイミングでは出現していない超戦力に運営が頭を抱えている気もするが、運営も難易度設定がおかしいのでお互い様だな!

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