第1139話 39枚目:追加イベント

 イベント後の平日の夜は予定通り、南側の大陸西沿岸沿いの長い城みたいな砦を切り崩しにかかったが、エルルの進むペースは変わらなかった。【人化】した状態で戦いながらだと歩幅はたいして変わらないし、幅も約100mあるからな。全部切り崩すのに往復しながらだとやっぱり時間はかかる。

 まぁでも戦力相当が1人とはいえ、相当な範囲を切り崩せたのは確かなんだけど。流石エルル。ボーナス何がいい? って聞いたらすっごい長考に入ってしまったから、ニーアさんの協力のもと髪の毛を梳かさせてもらった。めっちゃ逃げられたけど。なんでだ。

 ぐったりしてるのに調子はすごく良さそう、という謎の状態になったからなー。次からは何か別の方法考えるべきか。皆喜んでくれるんだけどな?


「何ででしょうね?」

「なんでだろうね」


 ニーアさんとサーニャもこの調子なので、ぐったりされる意味が分からない。直接聞いても良かったは良かったらしいんだけど、ぐったりしてる理由は頑なに言わないんだよな。解せぬ。

 さてイベントが終わったところで今月も残り1週間となった訳だが、イベントのお知らせは届いていない。これは11月もイベントが短いパターンだな。……この調子だと相当かかるだろうから、やっぱり大陸2つ分だけあって、メインストーリーも2年かかる感じか。

 ただその代わりというべきか、定期メンテナンスのお知らせに、ちょっとしたミニイベントが行われるお知らせがくっついていた。どうやら季節イベントを復活させるようだ。その期間が月末の土日だったからね。


「空間の歪みが、召喚者の世界の影響を受けて妙な動きをしている。……なんというか、いつものですね」

「いつものっすねー」


 お知らせによると、リアル丸2日、内部時間8日に渡り、世界中に「何か」が出現するらしい。事前に神に祈って「お菓子籠」という特殊装備を手に入れておき、手作りしたり捧げものをしたりして、お菓子を入れておくことが出来る。

 その「何か」が満足するまでお菓子を与えると、何か色々な物が貰えるようだ。ただし満足できなければ、何かが起こる。その内容は分からないようだが、満足度に応じて難易度が下がるらしい。……難易度って事は戦闘か?

 専用装備だけあって「お菓子籠」にはいくらでもお菓子が入れられる。ふむ。


「金曜日は作戦をお休みにして、皆でお菓子作りですかね?」

「そうっすね。それに召喚者プレイヤーしか「お菓子籠」を使えないとは書いてないっすし」

「容量無限という事は、それこそ山のようなお菓子を用意しないとどうにもならない「何か」も出てくるんでしょうしねぇ」

「お遊びに見えるところに、ガチ攻略しておかないと後がキツくなる仕掛けをしておくのがフリアドの運営っすもんねー」

『2人とも、だいぶ慣れていらっしゃるようですわね』


 今までのこと考えたら慣れもするさ。しかし、神様に捧げものしてもお菓子が貰えるのか。……手作り品と何か違いがあったりしそうだな。両方しっかり用意しておこう。

 何、幸いというか、捧げものには困らないからな。主にエルルの活躍で、敵方のどうしようもない産廃な構造物が山のように手に入ってるから。お菓子っていうなら普通に食べても美味しいだろうし。


「神様によってお菓子の傾向も違いそうですから、残ったら食べ比べしてもいいかもしれませんね」

「あっ、いいっすねそれ」

『それならお菓子に合うお茶も用意しなければなりませんわね』


 とりあえずソフィーナさん経由で、竜都でやった元炊き出しの料理コンテストに参加した人たちに声をかけておこうかな。またなんか事が大きくなりそうだけど、これは公式のイベントだし。

 目的が違うから同じ形って訳にはいかない、つまり別の形を考える必要はあるだろうけど、イベントの準備も楽しめるんならそっちの方がいいよね。

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